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◎二年目、六月の章

■圭都は久遠から真鈴のことを聞いた

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 圭都は久遠から夕食を食べながら真鈴のことを聞いていた。

「……真鈴さん、東京を出たんだ」

「少し前にね」

 クランを出ると聞いたときも寂しくなったが、もう東京にいないと思うと込みあげてくるものがある。

「大丈夫かい?」

 久遠が心配そうに訊ねてくる。

「いつかこうなるんだって、わかってたけどね」

 やはり辛いものは辛い。

「はじめて出会ったときの真鈴さんは何ていうか無気力な感じだったけど、私といるときは明るく振る舞ってくれてた」

 本当に姉のような存在だった。他の人にはともかく自分にはよくしてくれた印象だった。

「ビデオメッセージを預かってる。あとで送るよ」

「ん。送り先をあとで教える」

 圭都は続けて話をする。

「外は暗くなってるけど、どうするの?」

 つまり帰るつもりがあるのかという問いである。

「あまり夜出かけるのに抵抗ないんだ」

 これには圭都が目を丸くする。東京の夜をあまり怖がらない人を見たのははじめてだ。

「やっぱり泊まっていきなよ。お金とるつもりもないし」

「いや、そういう話じゃないんだ」

 久遠は判断に困っているようだ。

「いまさらでしょ」

 何に困ってるのかは何となくわかってしまい、これだからと圭都は呆れる。

「……わかったよ」

「やっぱりお金取ろうか」

 久遠は鳩が豆鉄砲食らったような顔をになる。

「冗談だよ。この時間の来客はまれなんだ」

 お金を取るにしてもということだった。それに久遠は来客の部類にあたる。

 しかしだ。チラリと久遠の顔を見る。特筆する事があるように思えない少年だ。

 共通点として十一期生な事くらいか。

 明日、乃々子に何を言われるだろうか。

「食べ終わったらお風呂に行っておいでよ」

「ありがとう」

 久遠はモゴモゴとした返事をするのだった。
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