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◎二年目、六月の章

■バスタオルで前を隠してワイシャツを羽織った真鈴の姿に久遠は驚いていた

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「シャワーありがと。助かったよ」

 久遠は真鈴の姿を見て完全に固まる。

 真鈴は考えた挙げ句にバスタオルで体を巻いてワイシャツを羽織ることにした。

 当然ながら下着など履いていない。

「君の服、やっぱりどれも合わなかったよ」

「そ、そうですか……」

 久遠にとっては落胆している場合ですらなかったようだ。

 呆然と立ち尽くしている姿は何とも滑稽だった。おかしくて吹きだしそうになるのを必死で抑える。

「君はこれからどうするの?」

「とりあえず僕もシャワーを浴びてきますよ。しっかり濡れましたからね」

 久遠は嘆息するとシャワー室へとぼとぼ歩いていく。

「いてら~」

 手をにぎにぎして久遠を見送ると真鈴は家内の探索をはじめた。

 真鈴はすでに決めていることが一つある。

 それは久遠を手篭めにしてここに居着いてやろうということだ。少年のくせにお金の使い方が派手すぎるのが鼻についた。

 ここは年長者による教育的指導が必要だと思ったのだ。

「そんなに広くないんだ」

 お風呂場のほうはいまさら行く必要がないとして、他に確認できた部屋は寝室とリビングくらいのものだった。

 なので探検は早々に終えた。

「それでも前にいたところよりは全然広い」

 真鈴はこんな風に独りごちた。

 リビングにあるソファに座る。お腹が空いたとふと窓の外を見ると、すでに真っ暗になっていた。

 実は久遠と出会ったときにはすでに夕方になっていたということだろう。

 要するに一日中、アテもなく街中をぶらぶらしていたということだ。

 自由が欲しくてクランを抜けてやったというのに、いざそうなってみるとやることがないというのだから、自分の滑稽こっけいさに自嘲じちようしてしまう。

 自分はここにいていいのだろうか?

 あの久遠という少年は自分をどう思っているのだろうかと急に不安になる。

 先ほどの手篭てごめにしてやろうという強気はどこへ行ったのか。

 自分はたしかにここにいるというのに存在に疑問を持ってしまう。

 自分は何者か? 何のためにここにいるのか?

 ただ一つ言えることはある。

「お腹空いたぁ……」
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