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◎二年目、五月の章

■新たな出会いは同時に新たな問題を連れてくる

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 駅のホームに無精髭ぶしょうひげを生やしながらも、幼子のように泣きじゃくりながら駄々をこねる男と、それを必死になって電車へ押しこめようとする子供たちの姿があった。

 東京にある駅では珍しくもないよく見る光景である。

 一八歳になった時点で東京迷宮とうきょうめいきゅうは強制的にアンインストールされる。この事実に例外はない。

 それを仕方がないと諦めて東京を出る者もいるが、東京での生活をずっと続けたいという者もいる。

 後者はアンインストールされても東京へ残ろうとする。しかし、現実問題として東京迷宮のプレイヤーしか東京でお金を稼ぐことができない。

 この場合、大人こそが東京で生きる術を失うという現実が待っている。

 この現実の前に一八歳になれば東京を出るしかないと気がつかされるのだ。

 それでもこの現実を受け入れることができない人間は一定数存在する。

 これについては子どもたちが一八歳になった人間を強制的に追い出すしか、いまのところ手段はなかった。

「イヤだねぇ」

 そんな光景を見てため息をつく。年齢は一五歳ほど。性別は男。つり上がった目がどことなく皮肉げに物事を見つめている。

「ああはなりたくないよなぁ」

 そうは言っても、その時になってみないとわからないというのも事実だった。

 そんな時に連絡がくる。そこには実の姉の名前が表記されている。だが、彼はそれを取りあうつもりは毛頭ないらしい。

「どうしたもんかな」

 彼は駅のホームを離れて、周辺をぶらぶらと歩くことにする。

 すると不意に足が止まる。

 足を止めたのは学校だった。校舎の中を三人の男女が入っていく。

「義務教育を放棄して東京に来てるんじゃないのかよ」

 こんなダサいことをしているのはどんな連中だろうか。彼は不思議と興味が湧いた。

 彼は興味本位に足を校舎内へ向けるのであった。
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