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◎二年目、四月の章

■久遠と里奈は深夜に誓う

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 深夜の二時に里奈はは不意に目が覚めた。隣には由芽が可愛らしい寝息を立てている。

 ちなみにお互い服は着ている。そこまで乱れた関係などではないのだと里奈ははっきりと主張する。

 さて目が覚めた里奈は布団に入り直す気にもならず、由芽を起こさないようにそっと布団から出る。

 それから向かった先は談話室だ。特に何があると思ったわけではない。何となくだった。

「古輪くん?」

 部屋の端のソファーに久遠の姿があった。空中パネルを開いて何か作業中のようだ。

「起きてたのかい?」

 久遠が頭をあげて、里奈に視線を向ける。それに気をよくしてしまった里奈は言葉を発しないまま久遠の隣――それも肩と肩が密着した状態で座る。

「私のこともう少しくらい意識すべきじゃない?」

 そんなことをされても顔色一つ変えない久遠に不満をぶつける。里奈と同じことを由芽がやれば違う反応をしたはずだからだ。

「君と知り合ったのはたしかに一年前で、話をしたのもここ最近だけどさ」

 久遠は作業する手を止めて、里奈に顔を向ける。自分でやったこととはいえ、お互いの顔の距離はきわめて近い。

「君とははじめてって感じはしない。君から受ける理不尽も、こうしているのもごく自然なことだって受け入れられる。何ていうか魂の部分で繋がっているっていうか……」

 それ以上はうまく言えないと久遠は言う。

 里奈はどうかというと何故か顔のあたりに火照りを感じていた。あまりにも恥ずかしくてこの場をすぐに立ち去りたくなる。

「バカ!」

 里奈は思わず久遠を突き飛ばす。久遠はというと何が起こったのかわからないとばかり目を丸くしている。

「よくもまあ恥ずかしい言葉を堂々と言えるわね」

 里奈は立ち上がる。もうさっさと寝ると決めたからだ。

「それとあんたとのしてあげるわ。感謝しなさい」

「ありがとう、片岡さん」

「と、いうわけで私のことを苗字で呼ぶのは禁止。名前で呼ぶこと。いいわね久遠」

 名前で呼ばれた久遠は目を丸くしている。不意打ちはうまくいったようだ。

「わかったよ里奈さん」

「さんづけもダメ。頼りにしてるんだからね相棒さん」

 里奈は目一杯めいっぱいのいま自分ができる笑顔を作ったつもりだった。

 後に久遠はこの笑みを悪魔の微笑みと語ったらしい。
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