二人の転生伯爵令嬢の比較

紅禰

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「お゛ぁああ…!あのバカ息子何をやらかしているんだ!!」

使いの者が持ってきた際の言葉と現在最も目をつけられたくない伯爵家筆頭のヴォーダン家当主からの直々のお手紙に頭を抱えて振り回したくなるような衝動を、ぶさいくな猫のひどい鳴き声の様な呻き声を上げている、やらかしてしまった令息を息子に持つ家の当主は、とにかくタウンハウスへと急ぎ伝令を送るために執事に声を荒げた。

「即座に伝令を飛ばせ!タウンハウスであのバカ息子を絶対に外に出すなと私の名前ですべての使用人に伝えよ!
正式にヴォーダン伯爵家とブラギ伯爵家に謝罪した後、あのバカ息子は1週間謹慎させる!
それまでは私と妻が到着するまでは絶対に学園だろうと外に出すな!」

顔色が良くないものの、すぐさま自分たちがやるべきことを考え出して、そのうえでバカ息子に何が必要なのかを伝令にも伝えるように仕向け、とにかく息子を外に出さないようにする。

現在視察の真っ最中である長男にも伝令を飛ばして帰ってきてもらい、それと入れ替わりで当主夫妻がタウンハウスへ行くのだ。

入学してから1か月、領地に戻って実際はどうなのか手紙に書ききれない部分を報告しようとした夫人が「帰宅したのが間違いだった」とつぶやきながら失神。

それでも息子が帰ってきたら何とか起きてもらわなければならないので、今はとにかく休ませておけと指示して、当主は恐る恐る手紙を開封する。

そして、その中に書かれていることに、こちらも疲労困憊で失神したくなるほどの圧を感じたのであった。

書かれているのはとにかく、「王家が手をまわし、当家の長女が所有している事業に対しての関連も含めたうえで考えられた婚約をぶち壊す気か」ということだ。

「ただ、今回はそちらの息子が当家のカトリーヌの婚約状況を全く把握していなかったことを鑑み、厳重注意にのみ留めることを王家とブラギ伯爵家にも打診している」ということも書かれているので、多少許そうとしているということはよくわかる。

が、王家からの厳重注意ともなると、胃が痛くなるのは当然で。

おまけにそんな不名誉じみた厳重注意などこの伯爵家はこれまで一切されたことが無いのも相まって、怒りと悲しみと情けなさの三重奏をモロに喰らい、当主は一周回って真顔と死んだ魚の様な目をするほかなかった。

そしてこの真顔と死んだ魚のような目は当主を発端に、妻、そして使用人たちにも伝搬し、視察に出ていた長男がびくっと肩を揺らす羽目になる。
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