177 / 247
177.
しおりを挟む
そのあとは学園に登校する為、さっさと朝食を摂って侍女から渡された鞄を持って、玄関前へとカトリーヌは向かう。
「あら、おはよう。カトリーヌ」
「……」
玄関前にはすでに同じように鞄を持って馬車を待つグウェンドリンの姿があった。
カトリーヌに挨拶するものの、カトリーヌはそれを無視して丁度到着した馬車にさっさと乗り込んでしまう。
「(機嫌が悪そうね、何かあったのかしら?)」
先ほど朝食の席を共にしていなかったことから考えて、恐らく両親のどちらかに呼び出されたか、話をしに行ったかだと思われる。
が、カトリーヌが両親と話をするとなると話題は限られてくる。
「(婚約の話でも厳しく言われたのかしら)」
実際グウェンドリンの予想は当たっていて、婚約を受けざるを得ないと考えて受けると伝え、そしてそのあとの父の何気ない一言でカトリーヌはイライラしていた。
グウェンドリンとカトリーヌは同じ馬車に乗って学園に行くことが決まっていた。
護衛の負担を軽減させるためというのもあるし、限られた台数しかない馬車を学園に通学するために2台も使うというのは流石に両親もいい顔をしない。
何か急用があれば、即座に動けるように家が保有している家紋入りの馬車は1台は必ず家に待機させておきたいのだ。
それに、今日は父とシュヴァルドが領地へ戻る。
先日お祝いをいただいたため、アルファズル侯爵夫妻へと宛てた手紙をシュヴァルドが持って帰ってくれるので、預けたのは記憶に新しい。
しかし、カトリーヌと共に通学する際の馬車の中の空気は最悪で、機嫌が良いのであればカトリーヌは自分に都合が良くても楽しそうに話をしてくるが、こうも機嫌が悪いと馬車の中でグウェンドリンは静かに本を読むかカトリーヌが目に入らない方向の窓の外へ視線を投げて景色を眺めるかしかできない。
「(優良物件なのに何が気に入らないのかしら)」
グウェンドリンとしては本気でそう思うほかない。
家格も多少こちらが上とはいえ一応同格の伯爵家で、政治的な面において顔の効きやすい宰相補佐の家柄。
当人も真面目一辺倒なのが良くわかる委員長タイプの容姿で眼鏡がとても似合う、派手さはないが堅実に幸せにしてくれるだろう人だ。
現代日本においても「この人と結婚すれば堅実な人生が送れるだろう」と感じるだろう。
まあ多分、カトリーヌは容姿が気に入らないのだろうなというのもある程度見当はつく。
カトリーヌは派手なイケメンが好きなので、漫画などでエフェクト満載だったり、現実にはそういなさそうな顔の整い方をした男性が良かったのだろう。
シュヴァルドもどちらかと言えばその方面だが、彼の場合は年を取るごとに大人っぽさの方が強くなっていくので、イメージ的には静かなバーで一人酒を飲んでいる色気のある大人のような感じ。
カトリーヌの望むような華やかな恋物語の登場人物よりかは、推理小説や刑事ものなどに出てきそうな雰囲気があるため、微妙に好みから外れている。
しかし、スカルドとシュヴァルドどちらがいいかと言われれば、彼女にとっては容姿的に見ればシュヴァルドなのだろう。
「(婚約に関して厳しく言われて覚悟を決めた可能性は確かにある。
けど、この子本当にこっちから見ておかしなことばかりするからちゃんと見ていないと…)」
グンナールのような輩と知り合われても困る。
がたがたと馬車の車輪が石畳に音を立てながら進み、それから10分後に学園が見えてきた。
「(あ、女性使用人にスカルド様のことを伝えておかないと)」
先手を打って令息をあまり近寄らせないようにしていたので、スカルドだけは遠ざけなくていいと伝えることを忘れないようにしつつ、御者が学園の門の所に馬車を停めて馬車の扉を開いたのを確認して、グウェンドリンは学園に降り立った。
「あら、おはよう。カトリーヌ」
「……」
玄関前にはすでに同じように鞄を持って馬車を待つグウェンドリンの姿があった。
カトリーヌに挨拶するものの、カトリーヌはそれを無視して丁度到着した馬車にさっさと乗り込んでしまう。
「(機嫌が悪そうね、何かあったのかしら?)」
先ほど朝食の席を共にしていなかったことから考えて、恐らく両親のどちらかに呼び出されたか、話をしに行ったかだと思われる。
が、カトリーヌが両親と話をするとなると話題は限られてくる。
「(婚約の話でも厳しく言われたのかしら)」
実際グウェンドリンの予想は当たっていて、婚約を受けざるを得ないと考えて受けると伝え、そしてそのあとの父の何気ない一言でカトリーヌはイライラしていた。
グウェンドリンとカトリーヌは同じ馬車に乗って学園に行くことが決まっていた。
護衛の負担を軽減させるためというのもあるし、限られた台数しかない馬車を学園に通学するために2台も使うというのは流石に両親もいい顔をしない。
何か急用があれば、即座に動けるように家が保有している家紋入りの馬車は1台は必ず家に待機させておきたいのだ。
それに、今日は父とシュヴァルドが領地へ戻る。
先日お祝いをいただいたため、アルファズル侯爵夫妻へと宛てた手紙をシュヴァルドが持って帰ってくれるので、預けたのは記憶に新しい。
しかし、カトリーヌと共に通学する際の馬車の中の空気は最悪で、機嫌が良いのであればカトリーヌは自分に都合が良くても楽しそうに話をしてくるが、こうも機嫌が悪いと馬車の中でグウェンドリンは静かに本を読むかカトリーヌが目に入らない方向の窓の外へ視線を投げて景色を眺めるかしかできない。
「(優良物件なのに何が気に入らないのかしら)」
グウェンドリンとしては本気でそう思うほかない。
家格も多少こちらが上とはいえ一応同格の伯爵家で、政治的な面において顔の効きやすい宰相補佐の家柄。
当人も真面目一辺倒なのが良くわかる委員長タイプの容姿で眼鏡がとても似合う、派手さはないが堅実に幸せにしてくれるだろう人だ。
現代日本においても「この人と結婚すれば堅実な人生が送れるだろう」と感じるだろう。
まあ多分、カトリーヌは容姿が気に入らないのだろうなというのもある程度見当はつく。
カトリーヌは派手なイケメンが好きなので、漫画などでエフェクト満載だったり、現実にはそういなさそうな顔の整い方をした男性が良かったのだろう。
シュヴァルドもどちらかと言えばその方面だが、彼の場合は年を取るごとに大人っぽさの方が強くなっていくので、イメージ的には静かなバーで一人酒を飲んでいる色気のある大人のような感じ。
カトリーヌの望むような華やかな恋物語の登場人物よりかは、推理小説や刑事ものなどに出てきそうな雰囲気があるため、微妙に好みから外れている。
しかし、スカルドとシュヴァルドどちらがいいかと言われれば、彼女にとっては容姿的に見ればシュヴァルドなのだろう。
「(婚約に関して厳しく言われて覚悟を決めた可能性は確かにある。
けど、この子本当にこっちから見ておかしなことばかりするからちゃんと見ていないと…)」
グンナールのような輩と知り合われても困る。
がたがたと馬車の車輪が石畳に音を立てながら進み、それから10分後に学園が見えてきた。
「(あ、女性使用人にスカルド様のことを伝えておかないと)」
先手を打って令息をあまり近寄らせないようにしていたので、スカルドだけは遠ざけなくていいと伝えることを忘れないようにしつつ、御者が学園の門の所に馬車を停めて馬車の扉を開いたのを確認して、グウェンドリンは学園に降り立った。
12
お気に入りに追加
955
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
魅了が解けた世界では
暮田呉子
恋愛
【お知らせ】(2024,02,03)
レジーナ文庫様より文庫版も出していただけることになりました。
皆様のおかげです、ありがとうございます。2/9発売予定です。
【お知らせ】
『魅了が解けた世界では』がレジーナブックスより出版されました。
(詳細サイト→https://www.regina-books.com/lineup/detail/1045770/7621)
掲載していた内容を加筆、改稿し、番外編も書き下ろして掲載しています。
書籍化に伴い対象の話は引き下げました。また内容を一部変更しています。
掲載はアルファポリスのみです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
復讐の慰術師
紅蓮の焔
ファンタジー
※鬱展開あるかもしれません…(鬱展開と鬱展開ではないのラインが分からないので)
1日更新です
後、言う事があるとすれば文章が物凄く稚拙です…
それでもよければお読みください
m(__)mペコリ
「危ないっ!」
歩いていた少年はそこで振り返った
ドスンッ!
気が付くとそこは…知らない場所だった
「あ?」
言葉を話すことすら不可能だった
この少し後で気が付いた
(転生…か)
それに気付いた時、少年は目を瞑った
(今度こそ…)
そう決意し、拳を握ろうとしたが力が入らない
(身体を鍛えよう)
今度はそう決意し、天井へ目を向けた
数年後…
夜中に突然盗賊が押し寄せ、金品を盗んで少年の母親を殺すと家に火を放ち、去っていった
それから更に数年後…
『今までありがとうございました
随分と身勝手ですが妹を宜しくお願いします』
燃えた家から助け出してくれた家の人への書き置きを残してそこから立ち去った
これは幸せを壊された少年の復讐の物語…
※復讐の場面に行くまで少し掛かります。それまではほのぼのとした空気が流れるかと思いますが何卒…
多分良くある話?だと思います
題名は仮の物なので何か提案がある方は教えてくれれば嬉しいです。気に入れば変更します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる