二人の転生伯爵令嬢の比較

157.

他の貴族家の面々も残っている姿が見えるし、使用人たちもそれぞれきちんと応対してお茶を出している姿を見ると毎年恒例のものなのかもしれない。

実際、グウェンドリンとカトリーヌが着席した後もすぐにお茶が運ばれてきたのを見ると、ベテランだと思われる使用人程非常に慣れている。

それを見ると、入学式の後のガイダンスが終わった後家族で軽く話して帰宅するというのが恒例となっているのだろうと考えられる。

「二人とも、入学おめでとう。そしてガイダンスもお疲れ様」

「「ありがとうございます、お父様」」

「じゃあ、この後のことについて話しましょうか」

「何か予定があるんですか？お母さま」

カトリーヌが意気揚々と聞き出そうとする。

何かお祝いでもしてもらえるのだろうという考えからイケメンと会うことなく終わってしまった入学式で落ち込んだ気分が上昇しているらしい。

表情がかなり明るくなっている。

「ああ、シュヴァルドくんもこちらに来ているから、一緒に食事でもと思ってね。
後はカトリーヌの婚約者候補の彼も誘ったところぜひという返事が来た」

「まあ、そうなんですか」

その言葉を聞いて、グウェンドリンはシュヴァルドが来てくれていることに喜びを感じるとともに、カトリーヌの婚約者候補の彼もいるということに驚きを隠せないでいた。

実際、グウェンドリンだけでなくカトリーヌの方も例の彼とは初めて顔を合わせることになるので、その驚きがあった。

どうあがいても会おうとしないカトリーヌもお祝いの席ということであれば断り切れないので、この場で強制的に顔合わせをさせようとする両親の魂胆でもあるだろう。

「でも嬉しいです。シュヴァルドに制服姿を見せると言っていたのに、まだ見せられていなかったので」

「そういえばそんな話をしていたと言っていたな」

「はい、お父様。制服で参加してもよろしいですか？」

「もちろん、きちんと見てもらいなさい」

嬉しそうに話を進めている姉グウェンドリンとは違い、カトリーヌは笑顔のまま固まっていた。

まさかここで自身の婚約者候補がやってくるとは思わなかったのだろう。

会うことも無く、直接関係するようなことを最低限にしておけば婚約解消も楽にできそうという考えでなるべく会いたくなかったカトリーヌにとってはショックな出来事でもあった。

「実はお店はもう予約してあるのよ」

「そうなんですか？」

「ええ。あ、そうだ。グウェンドリンは明日アルファズル侯爵ご夫妻にお手紙を認めておいてね。
今日お祝いが届いたのよ」

「まあ、それは！わかりました、帰ってすぐにお手紙を書いておきます」

和やかにどんどん進む話にカトリーヌは取り残されていた。

ちなみにカトリーヌの方に婚約者候補の家からのお祝いはない。

まだ候補者と言うこともあるし、何よりも誠実さを示してくれない候補の女性に出すものはないと判断されたということでもあった。