上 下
72 / 90

第七十一頁

しおりを挟む
 私の名前は「エリオット・ライン」。

 姫を魔王に攫われ悲しみの王国になった翌年に産まれた赤子。

 その手には、「紋章」のアザが生まれつきにあり、私の親はもしやと、教会に私を連れ司祭に見てもらった所

「ー勇者の生まれ変わりー」と告げられた。

 ―勇者―何百年に一度、魔王誕生と共に生まれてくる存在―

「魔王討伐が勇者の使命」と言われ剣術を学び、はや数年ー「勇者」は16歳になっていた。

 旅立ちの日。

 私は一人、旅に出たのだが、

「よう!」

 と、声をかけてくる細身の青年がいた。

「お前、見る所旅人だろ?俺が用心棒として付いて行ってやるよ。」

 その男に話を聞くと「盗賊のスキル」を持っていると言う。隠密行動が得意なようだ。
「俺の名前はショー、よろしくな!」

 2人で旅をしていると、「デカいハンマーを持った大男」と出くわした。

 私達は最初こそ戦いをしたが、その「大男」は、私との戦いが互角だとわかれば、仲間になるといい出した。
「俺の名はダント。どんな、魔物が出て来ても、俺のハンマーで叩き潰してやるぜ!」

 頼りになる男である。

 そして…

 一人の少女と出くわした。

 ―その少女は、気絶でもしているのだろうか、大の字で寝ていた。魔物にでも襲われてはいけない。居ても立っても居られないので、助けたのだが、直ぐに立ち去ってしまった―。

 そして、我々は最初にスライムと出くわした。
「こんな魔物は魔物とは言えねぇな。」
 と、ショーが一撃で退治する。

 私が「スライム」に手こずっているのを、ダントが、指差しながら、笑っていた。

 ようやく、「スライム」を倒した私は、深く息を吐きながら遠くに目をやる―。先程の「少女」が、軽々と弓でスライムを倒しているのを目にした。

 私は「少女」に仲間にならないか?と声をかけたら、即断で了承してくれた。

「少女」の名前は「ゆめ」と言うらしい―。
 一見、何でもないような少女なのだが、私の「勇者の証」が、少女に反応するように光を帯びている。

 その夜、我々は野宿をするために広い場所に出た。
「こんな所で野宿なんて、いけません!」
 と、ゆめは大きな建物を我らの前に現した。

「少女」は自らの事を「魔法使いの見習い」と、言っていたが、何処か怪しい・・・。見習いが、こんな大きな建物を一瞬で作れるか?もしかしたら、「大魔法使い」なのかも知れない・・・何かの理由で隠しているのかも知れない。腰の物も立派な剣を持っている。ますます怪しい・・・

 ゆめの詮索は、後にするとして、我々はフカフカの寝床に着いた。

「皆さん、起きて下さい!」
 と、ゆめが、フライパンをカンカン!と叩きながら、我々を起こす。

 そこには、今まで見たことがない料理が並べられていた。我々が普段食べている物は干し肉と硬いパン、味の薄いスープなのだが、ゆめの作る料理は王国の物よりも味が濃く、とても美味しい。ショーとダントは獣のようにむさぼり食い、「おかわり!」とせがむ程だ。

 それから数年。我々は数々の魔物を倒し、前に進む。そして「魔王がいる領土」に着いた。

「いよいよだな、エリオット!」

「ああ、ここに姫様がいるはず…必ず倒して見せる!」

「―お待ち下さい。今の我々では無理です。」
 とゆめが言う。

「何故だ!」ダントが、詰め寄る。

「今の、エリオットには、魔王を倒す為の武器がありません。そのままでは、犬死です。」

 そう言うと、ゆめの身体が光りだした。

「―この世を救う勇者よ。この武器を授けましょう。―」

 赤い髪に真紅の瞳。その美しい声の主は、見たことがない「美しさ」
 女神だと、一瞬で理解した。

 私の両手には、1本の剣が、光を帯びている。

「女神様、この剣は…。」

「その剣の名は、「聖剣エクスカリバー」と言う。その剣で、魔王を倒すのです!」

 そう言うと、「女神様」は元の「少女」に戻っていた。

「ゆめは女神様だったのか?」

「いや、女神様がゆめだったんだ!」

 と、分からない論議をしていると、ゆめが目を覚ました。一連の事をゆめに問いただすと、「知りません。私は、ただの魔法使いの見習いです。」と答えたが、「腰の物」が消えているのを見逃さなかった。

 流石に「魔王領」の魔物は強い。しかし、聖剣エクスカリバーを振るうと、あっという間に魔物の群れが消え去っていた。

「魔王城」を見上げる。何処まであるのか分からない高さ、そして大きさ―我々は、戸惑いながらも武者震いを隠せなかった。

 更に強力な「四天王」と言われる悪魔を倒し、いよいよ、魔王と対峙する―。

 魔王は様々な魔術を使い、我々を翻弄する。

 どうやら、ショーとダントがやられたようだ。

「アイギス!」とゆめの声が聞こえた―

 大きな「黒龍」は、魔王に向かい、炎のブレスを吐く!魔王の身体半分が失われた!

「エリオット!今よ!」

 ゆめの声が私の耳を貫く!

「ウオォォ!」

 私は、「聖剣エクスカリバー」を思いっきり、振り切る!

「魔王」は、灰と化した―。

 私はゆめの方を見ると「黒龍」の姿はなく、ゆめだけが、立っていた。

 魔王の灰の中から、「姫様」が姿を現す。

「姫様、よくぞご無事で・・・」

「やったな、エリオット!」

 聞き慣れた声がする・・・

 ショーとダント!死んだはずだ!・・・何故「無傷」なんだ!

 そこに、「ゆめ」の姿はなかった・・・

 王国に戻った我々は国王に「大義であった!」とお褒めの言葉を賜り、宴は三日三晩続く。我々を王族専属の兵士として、雇いいれてくれた…「伯爵」と言う地位までくれて・・・

 しかし、私は「ゆめ」と名乗っていた少女が気がかりで仕方ない。

 ショーとダントに尋ねても「ゆめ?魔法使い?俺達は最初っから、3人で旅をしてたんだぜ。」と言われるだけ・・・

 確かに、存在していたんだ・・・

 その証拠に「聖剣エクスカリバー」がある・・・
 腰に手をやると、エクスカリバーは消え、元のボロボロの剣があった・・・

―――――――――――――――――――――ーーーーーー

「ゲームクリア出来た!」

 ゆめが喜んでいる。プレイはしてないゲームの中に入っての事だが。

「「聖剣エクスカリバー」を渡す時、私、女神っぽく演技出来てたかしら?あの後、気絶した「ふり」も大変だったな~。」

「冒険が終わった後にエクスカリバーは、返して貰ったけど、まっ、あれは私の武器だから、しょうがないよね!」

「それと、魔王と四天王は消える前に私の眷属にしたし、後はゼウスに教育してもらおうっと。」



「あれ?ストーリーが変わってる?クリア後の隠しストーリーかな?」

と、パパがゲームをしながら、首をかしげていた。

勿論、私が関わったと言うのは「秘密」です。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

処理中です...