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王都動乱編
0069 司祭ゼノン・カレラ
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「困った・・・。」苦虫を噛んだ表情を見せているのは王国司祭のゼノンである。
彼の悩みは最近、神の加護を感じなくなって来ている事にあった。
本来は、加齢と共に神力が衰えて来るものだが、衰えるにはゼノンは若すぎる・・・。国王に言う訳にもいかない。何といっても王国司祭と言う肩書がゼノンの本音を遮るのだ。
「このまま、放って置くわけにも行かないな。」とゼノンは一人教会でつぶやいていた。こんな時に頼れる人物と言えば女神クリス・サリーナ様に直接召喚されたあのお方、ただ一人しかいない・・・。勇者オウカの顔が脳裏に浮かぶ。
「近いうちに会いに行こう・・・。」
ー***-
「オウカ様、出来上がりましたぞ!」そう言って来るのはドワーフのタクミである。
「おお~、やっとか!待ってたんだよな~ありがとう!」
オウカは出来上がった物にかけられた布を手に持ち
「どんな防具なのかなぁ~」とワクワクしている。
「オウカ様、それは・・・」ドワーフの声も聞かずに布をとる!
そこにあったのは「女神クリス・サリーナの像」。
「俺、こんなの注文してたっけ?」
「これは、女神さま直々に言われたことですので、最優先に作り上げました。いや~苦労致しました!」
「確かにサリーナはそんなことを言ってたけどさ~」それにしても再現度高!ドワーフは彫刻も出来るのか。と、それはそれで感心する。
「これからは、俺達の防具を最優先に作ってね。」
「実は、ベル商会様からも女神像の注文が入っておりまして・・・。」
「ベルさんか~、お世話になってるもんな~仕方ない、これを持っていくか。」
「この像はこの屋敷には置かないのですか?」
「え?」そうだった。この世界においてはサリーナへの信仰は絶対だった・・・。
「じゃあ、ベルさんの分も作ってあげて。」
「オウカ様、国王に進呈はしないのですか?」
「あ~国王にもあげなきゃいけないよね!うん、それも作っておいて。」
「畏まりました。」
・・・いつになったら、防具が出来上がるんだろう。このままじゃ、傭兵団の皆はジギルの攻撃やローズの攻撃で・・あっ、ドラゴン族やラミア族の二人も指南役にしたんだった。死んでしまうかもしれないな・・・。
ー***-
「桜花さん、ちょっといい?」と玲子が声を掛けてきた。
玲子は、「レストランミツヤ」の運営に大忙しなのだが、最近はポトフとアランも使えるようになり、自由な時間も増えて来たらしい。
「どうしたの?レストランに何かあった?」
「ううん、そうじゃなくって別の相談よ。」
「別の相談?何か考え付いたの?」
実は玲子は日本にいた時は「企画・運営部」にいたキャリアウーマン。こういう新しいことを考えるのは仕事柄なんだろう。
「今の傭兵団の人数はどれぐらいいるの?」
「ん~、正確には数えてないけど、300人はいるんじゃないかな?」
「私たちが膨大な資産を持っている間に私設傭兵団を作ろうかと思ってるの。」
「ああ。前に言ってたね。私設傭兵団?何をする団体なんだっけ?」
「日本で言う警察組織ね。」
「でも、王国には傭兵がいるから、間に合ってるんじゃないか?」
「王国の傭兵の目が届かない所に限って配置するってどう?面白くない?」
「確かに・・・。他の貴族の領地や村の警護・・・ん?待てよ。」
「それって、冒険者ギルドの仕事だよね。」
「そうね。だからギルドも取り込もうって思ってるのよ。」
「一度、王様に話してもらえないかしら?」
「わかったよ。でもあまり期待しないでくれよな。話がデカすぎる。」
「あら、全国トップの営業マンなんでしょ?」
「痛い所を突くなぁ~、わかったよ。」
そんなことを話していると、執事のセバスがやって来た。
「オウカ様、お客様です。」
「誰が来たの?ベルさん?」
「いえ、ゼノン・カレラ司祭です。」
彼の悩みは最近、神の加護を感じなくなって来ている事にあった。
本来は、加齢と共に神力が衰えて来るものだが、衰えるにはゼノンは若すぎる・・・。国王に言う訳にもいかない。何といっても王国司祭と言う肩書がゼノンの本音を遮るのだ。
「このまま、放って置くわけにも行かないな。」とゼノンは一人教会でつぶやいていた。こんな時に頼れる人物と言えば女神クリス・サリーナ様に直接召喚されたあのお方、ただ一人しかいない・・・。勇者オウカの顔が脳裏に浮かぶ。
「近いうちに会いに行こう・・・。」
ー***-
「オウカ様、出来上がりましたぞ!」そう言って来るのはドワーフのタクミである。
「おお~、やっとか!待ってたんだよな~ありがとう!」
オウカは出来上がった物にかけられた布を手に持ち
「どんな防具なのかなぁ~」とワクワクしている。
「オウカ様、それは・・・」ドワーフの声も聞かずに布をとる!
そこにあったのは「女神クリス・サリーナの像」。
「俺、こんなの注文してたっけ?」
「これは、女神さま直々に言われたことですので、最優先に作り上げました。いや~苦労致しました!」
「確かにサリーナはそんなことを言ってたけどさ~」それにしても再現度高!ドワーフは彫刻も出来るのか。と、それはそれで感心する。
「これからは、俺達の防具を最優先に作ってね。」
「実は、ベル商会様からも女神像の注文が入っておりまして・・・。」
「ベルさんか~、お世話になってるもんな~仕方ない、これを持っていくか。」
「この像はこの屋敷には置かないのですか?」
「え?」そうだった。この世界においてはサリーナへの信仰は絶対だった・・・。
「じゃあ、ベルさんの分も作ってあげて。」
「オウカ様、国王に進呈はしないのですか?」
「あ~国王にもあげなきゃいけないよね!うん、それも作っておいて。」
「畏まりました。」
・・・いつになったら、防具が出来上がるんだろう。このままじゃ、傭兵団の皆はジギルの攻撃やローズの攻撃で・・あっ、ドラゴン族やラミア族の二人も指南役にしたんだった。死んでしまうかもしれないな・・・。
ー***-
「桜花さん、ちょっといい?」と玲子が声を掛けてきた。
玲子は、「レストランミツヤ」の運営に大忙しなのだが、最近はポトフとアランも使えるようになり、自由な時間も増えて来たらしい。
「どうしたの?レストランに何かあった?」
「ううん、そうじゃなくって別の相談よ。」
「別の相談?何か考え付いたの?」
実は玲子は日本にいた時は「企画・運営部」にいたキャリアウーマン。こういう新しいことを考えるのは仕事柄なんだろう。
「今の傭兵団の人数はどれぐらいいるの?」
「ん~、正確には数えてないけど、300人はいるんじゃないかな?」
「私たちが膨大な資産を持っている間に私設傭兵団を作ろうかと思ってるの。」
「ああ。前に言ってたね。私設傭兵団?何をする団体なんだっけ?」
「日本で言う警察組織ね。」
「でも、王国には傭兵がいるから、間に合ってるんじゃないか?」
「王国の傭兵の目が届かない所に限って配置するってどう?面白くない?」
「確かに・・・。他の貴族の領地や村の警護・・・ん?待てよ。」
「それって、冒険者ギルドの仕事だよね。」
「そうね。だからギルドも取り込もうって思ってるのよ。」
「一度、王様に話してもらえないかしら?」
「わかったよ。でもあまり期待しないでくれよな。話がデカすぎる。」
「あら、全国トップの営業マンなんでしょ?」
「痛い所を突くなぁ~、わかったよ。」
そんなことを話していると、執事のセバスがやって来た。
「オウカ様、お客様です。」
「誰が来たの?ベルさん?」
「いえ、ゼノン・カレラ司祭です。」
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