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魔王国編
0065 ムッタ・ゴランの弟子入り志願②
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「帰って貰いなさい。」と言い残し、親父は居間を出て行った。
「何故だ、何故ダメなんだー!」棟梁が叫ぶ!
「俺、まだ頼みもしてないんだぞ!なのに何で先に断るんだ!ええ⁉」
「だから、親父は頑固だって言っただろう!」
「頑固にも程があるぞ!俺も頑固だがアイツは俺よりも偏屈じゃないか!あのくそジジイ!」
「棟梁の方が年上だろう!何百年生きてんだよ!」
「まぁまぁ、お茶でも飲んで下さいな。」と母がなだめる。
「クッソ・・・」お茶を啜る。
「ん?このお茶、美味いですな!」
「まぁ~解ります?このお茶は玉露って言うんですよ!」
「魔王様の城で飲んだお茶と同じ味がする。」
「まぁ~、マオウさんってお友達がいるのですね!」
「はい、何年も昔に教えてもらって、そこからは自己流で作ったとか・・・。」
「あら~、そのマオウさんは大分、苦労されたのでしょうね。」
「と、申しますと?」
「このお茶は、当然葉っぱは手摘みだけど、手揉みやら、乾燥やら絶妙のタイミングや力加減で作るんですのよ。素人には出来ない、職人の腕ですわね。」
「しかし、他の方もお茶は作るのでしょう?」
「ええ、でも、お茶を飲むと、腕の良し悪しが分かりますわ。」
「そうなんですか・・・。」棟梁はじっと茶を眺めている。
「ところで、あの紙は何ですか?」額縁に入れた賞状を指さす。
「あれは、総理大臣からの表彰状ですわ!それに、あちらは人間国宝の賞状ですの。」
「ヒョウショウジョウ?って何ですか?」
「それはですね~・・・」
「母さん、それは俺から説明するよ。」
「これは、あなたはこの国で一番優れた鍛冶職人ですって国から・・いや世界に刀匠っていないから、この世界で一番優れた職人ですって意味だ。それと人間国宝っていうのは、その腕を認めて、あなた自体が国宝ですって言われた名誉ある証なんだよ。」
「それを、あの頑固ジジイが?」
「あのね、あの人もスゴイ努力をしたんだと思うのよね~お茶と一緒ね。」と母親が棟梁をなだめる。
「よく鉄は熱いうちに打てって言われてるけど、それは違う。その鉄に合った温度というのがあるんだ。それを見極めるのが刀匠だって、何回も言ってたわ。」
「俺は、ただ鉄を焼いて、叩いて作ってたけどなぁ~。」棟梁が首を傾げる。
「それは、同じ鉄だったかね?」と声が聞こえる。親父が立っていた。
「いいか、鉄が入った砂を焼いて溶かすだろ?」
「は、はい。」
「毎日、同じ季節か?毎日同じ天気か?」
「いえ、違います。」
「じゃあ、採って来た砂鉄を保管する時に保管する場所は同じじゃないだろ?室温も場所によって変わってくる。わかるか?」
「はい、解ります。」棟梁も真剣に聞いているのだろう、自然と正座をしている。
「そうやって、鉄の「声」を聞くんだ!ただやみくもに打っていたら、いい鉄もただの鉄くずになってしまう。それでは鉄がかわいそうだろう!」
「はい。」
「君はどうして、私の弟子になりたいと思った?」
「それは、俺が作った世界一の防具を細い刀一本で真っ二つにしたからです!」
「その時、君はどう思った?」
「ただただ悔しい思いと、こんなにスゴイ武器があるんだと言う発見と、俺の傲慢さです。」
「・・・・・」
「・・・・・」
柱時計の音だけが居間に響く・・・。
「俺は、厳しいぞ?」と親父は言った。
「え?」棟梁は不思議そうな顔をしている。
「途中で逃げ出すのは許さんからな。」
「そ、それじゃあ・・・。」
「ああ、弟子入りを認めてやる!」
「ありがとうございます。師匠・・。」
「明日からは、朝は早いからな!母さん、晩御飯にしようじゃないか!」
こうして、棟梁改めムッタ・ゴランは親父の弟子入りを果たした。
その十数年後、異世界に帰って来たムッタさんは、工房に「三ツ矢」と日本語で書かれた看板を持ち帰り、異世界一の鍛冶職人になるのです。
「何故だ、何故ダメなんだー!」棟梁が叫ぶ!
「俺、まだ頼みもしてないんだぞ!なのに何で先に断るんだ!ええ⁉」
「だから、親父は頑固だって言っただろう!」
「頑固にも程があるぞ!俺も頑固だがアイツは俺よりも偏屈じゃないか!あのくそジジイ!」
「棟梁の方が年上だろう!何百年生きてんだよ!」
「まぁまぁ、お茶でも飲んで下さいな。」と母がなだめる。
「クッソ・・・」お茶を啜る。
「ん?このお茶、美味いですな!」
「まぁ~解ります?このお茶は玉露って言うんですよ!」
「魔王様の城で飲んだお茶と同じ味がする。」
「まぁ~、マオウさんってお友達がいるのですね!」
「はい、何年も昔に教えてもらって、そこからは自己流で作ったとか・・・。」
「あら~、そのマオウさんは大分、苦労されたのでしょうね。」
「と、申しますと?」
「このお茶は、当然葉っぱは手摘みだけど、手揉みやら、乾燥やら絶妙のタイミングや力加減で作るんですのよ。素人には出来ない、職人の腕ですわね。」
「しかし、他の方もお茶は作るのでしょう?」
「ええ、でも、お茶を飲むと、腕の良し悪しが分かりますわ。」
「そうなんですか・・・。」棟梁はじっと茶を眺めている。
「ところで、あの紙は何ですか?」額縁に入れた賞状を指さす。
「あれは、総理大臣からの表彰状ですわ!それに、あちらは人間国宝の賞状ですの。」
「ヒョウショウジョウ?って何ですか?」
「それはですね~・・・」
「母さん、それは俺から説明するよ。」
「これは、あなたはこの国で一番優れた鍛冶職人ですって国から・・いや世界に刀匠っていないから、この世界で一番優れた職人ですって意味だ。それと人間国宝っていうのは、その腕を認めて、あなた自体が国宝ですって言われた名誉ある証なんだよ。」
「それを、あの頑固ジジイが?」
「あのね、あの人もスゴイ努力をしたんだと思うのよね~お茶と一緒ね。」と母親が棟梁をなだめる。
「よく鉄は熱いうちに打てって言われてるけど、それは違う。その鉄に合った温度というのがあるんだ。それを見極めるのが刀匠だって、何回も言ってたわ。」
「俺は、ただ鉄を焼いて、叩いて作ってたけどなぁ~。」棟梁が首を傾げる。
「それは、同じ鉄だったかね?」と声が聞こえる。親父が立っていた。
「いいか、鉄が入った砂を焼いて溶かすだろ?」
「は、はい。」
「毎日、同じ季節か?毎日同じ天気か?」
「いえ、違います。」
「じゃあ、採って来た砂鉄を保管する時に保管する場所は同じじゃないだろ?室温も場所によって変わってくる。わかるか?」
「はい、解ります。」棟梁も真剣に聞いているのだろう、自然と正座をしている。
「そうやって、鉄の「声」を聞くんだ!ただやみくもに打っていたら、いい鉄もただの鉄くずになってしまう。それでは鉄がかわいそうだろう!」
「はい。」
「君はどうして、私の弟子になりたいと思った?」
「それは、俺が作った世界一の防具を細い刀一本で真っ二つにしたからです!」
「その時、君はどう思った?」
「ただただ悔しい思いと、こんなにスゴイ武器があるんだと言う発見と、俺の傲慢さです。」
「・・・・・」
「・・・・・」
柱時計の音だけが居間に響く・・・。
「俺は、厳しいぞ?」と親父は言った。
「え?」棟梁は不思議そうな顔をしている。
「途中で逃げ出すのは許さんからな。」
「そ、それじゃあ・・・。」
「ああ、弟子入りを認めてやる!」
「ありがとうございます。師匠・・。」
「明日からは、朝は早いからな!母さん、晩御飯にしようじゃないか!」
こうして、棟梁改めムッタ・ゴランは親父の弟子入りを果たした。
その十数年後、異世界に帰って来たムッタさんは、工房に「三ツ矢」と日本語で書かれた看板を持ち帰り、異世界一の鍛冶職人になるのです。
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