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寄り道
しおりを挟む「行きたかった場所って……ここ?」
「うん、そう。俊輔も来る?」
「や、いや、俺はいいっ……外で待ってる」
「そっかぁ……残念」
「えっ……?」
ポカンとした表情の俊輔を置いて入ったのは、ランジェリーショップ。普段から使ってるお気に入りのお店だ。
「あら、ナノハ! 久しぶりね」
「あ、レティカさん!」
この店のオーナーで、知る人ぞ知る恋のキューピット、レティカさん。金髪碧眼の絶世の美女で、胸とお尻がボンって突き出てるのに、ウエストはわたしくらい細い。羨ましい……非常に妬ましい!
ちなみに、シェアメイトの暸にレティカさんを紹介したのはわたし。暸と明花里が両思いなのは端から見てバレバレなのに、あまりにも明花里が自分の気持ちに鈍感だから、恋心に自覚のあった暸の方をけしかけた。ただいま絶賛明花里へのアプローチ方法を考え中とのこと。
「それで? 今日は何をご所望かしら?」
やば、レティカさんに見惚れてる場合じゃなかった……。
上品な笑みを浮かべるレティカさんに近づいて、そっと耳打ちする。
「あら……ちなみにお相手は?」
「……俊輔です」
「まぁ!」
外で待ってる俊輔は、レティカさんが恋のキューピットでこのランジェリーショップのオーナーってことは知ってるけど、この店の裏の顔は知らない。
可愛い店内と商品の豊富さ、レティカさんの人柄に惹かれて何度もお店に足を運んでいるうちに、わたしは常連客としてお店の秘密を教えてもらっていた。
「あれだけ興味ないって素気無くしてたのにねぇ?」
「そ、それはっ……」
「ふふっ、いいのよ。恋はいつ芽吹くかわからないからこそおもしろんですもの」
そう言ったレティカさんが怪しく微笑む。
この邪(よこしま)で禍々しい気持ちが恋? ただの肉欲な気がするけど……。
「恋、なんですかねぇ……?」
「ええ、それはもう情熱的な花が咲くでしょうね……」
常連客しか入れない隠し扉へ案内されながら、わたしはほんの少しの戸惑いと頭が痺れるような興奮に包まれていた。
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