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救急搬送
手術業務~やっぱりトラブル~
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「見たままやればいい」
技師長から言われるが、梨花は困惑した。
「見たままにできる自信がありません」
「これくらい簡単だ。血液ガスを計って異常があれば報告するだけだ」
「……簡単な業務に聞こえません」
梨花は半泣きになりそうであった。
責任重大である。
技師長は呆れたように溜め息を吐いた。
「もっと大変な業務の方が多いのに」
「すみません」
「謝る事はない。血液が余っているからこっそり練習しよう」
注射器を手渡される。
梨花は震える手で受け取った。
「が、頑張ります」
「肩の力を抜け。緊張しすぎてもうまくいかない」
梨花は深呼吸をした。
ほんの少し、震えが収まった。
「やります」
「その穴に血液を入れてみて」
梨花は頷いた。大粒の唾を飲み込む。
注射器は小さい。ほんの少し注射桿を押すだけで血が出てくるだろう。
光輝君のお母さんの血。大事に扱わないと。
梨花はいったん目を閉じて、再び深呼吸をする。
両手の震えを気力で押さえつけながら、四角い平板の穴に注射筒を押し当てる。
ほんの少しだけ力をこめた、つもりだった。
穴から血が大量にあふれていた。
明らかに血液を出しすぎたのだ。
「すすすす、すみません」
梨花の全身から血の気が引く。
心臓のバクバクも嫌な汗も止まらない。
「すみません、すみません」
梨花は壊れた人形のように謝っていた。
頭の中は完全にバグっていた。
「まあ、まずは落ち着け」
技師長がガーゼを貸してくれる。
梨花は何度も頭を下げて血を拭きとった。技師長が消毒をやっていた。
異変を察知したのだろう。
「大丈夫か?」
院長から声を掛けられた。
梨花の心臓は飛び出そうになった。
「すすすす、すみません!」
スライディング土下座をかましたい気分であった。
その場にいる全員の視線が痛い。
「手術中は静かにするように」
「はいいいいい、すみませんんん」
院長に言われて何度も頭を下げる。
「梨花さん、血液ガスの機械の使い方を覚えてほしい」
技師長に操作方法を説明された。
しかし、バグった頭ではうまく覚えられない。
「こ、このボタンを押すのですね」
「それは履歴ボタンで、今は使わない」
その後もボタンを何度か押し間違えた。
なんとか血液ガスの値をプリントする事ができた頃には、手術は無事に終わっていた。
技師長から言われるが、梨花は困惑した。
「見たままにできる自信がありません」
「これくらい簡単だ。血液ガスを計って異常があれば報告するだけだ」
「……簡単な業務に聞こえません」
梨花は半泣きになりそうであった。
責任重大である。
技師長は呆れたように溜め息を吐いた。
「もっと大変な業務の方が多いのに」
「すみません」
「謝る事はない。血液が余っているからこっそり練習しよう」
注射器を手渡される。
梨花は震える手で受け取った。
「が、頑張ります」
「肩の力を抜け。緊張しすぎてもうまくいかない」
梨花は深呼吸をした。
ほんの少し、震えが収まった。
「やります」
「その穴に血液を入れてみて」
梨花は頷いた。大粒の唾を飲み込む。
注射器は小さい。ほんの少し注射桿を押すだけで血が出てくるだろう。
光輝君のお母さんの血。大事に扱わないと。
梨花はいったん目を閉じて、再び深呼吸をする。
両手の震えを気力で押さえつけながら、四角い平板の穴に注射筒を押し当てる。
ほんの少しだけ力をこめた、つもりだった。
穴から血が大量にあふれていた。
明らかに血液を出しすぎたのだ。
「すすすす、すみません」
梨花の全身から血の気が引く。
心臓のバクバクも嫌な汗も止まらない。
「すみません、すみません」
梨花は壊れた人形のように謝っていた。
頭の中は完全にバグっていた。
「まあ、まずは落ち着け」
技師長がガーゼを貸してくれる。
梨花は何度も頭を下げて血を拭きとった。技師長が消毒をやっていた。
異変を察知したのだろう。
「大丈夫か?」
院長から声を掛けられた。
梨花の心臓は飛び出そうになった。
「すすすす、すみません!」
スライディング土下座をかましたい気分であった。
その場にいる全員の視線が痛い。
「手術中は静かにするように」
「はいいいいい、すみませんんん」
院長に言われて何度も頭を下げる。
「梨花さん、血液ガスの機械の使い方を覚えてほしい」
技師長に操作方法を説明された。
しかし、バグった頭ではうまく覚えられない。
「こ、このボタンを押すのですね」
「それは履歴ボタンで、今は使わない」
その後もボタンを何度か押し間違えた。
なんとか血液ガスの値をプリントする事ができた頃には、手術は無事に終わっていた。
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