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18. 傍にいたら芽生えた気持ち

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 リュシーは、それから一週間。

 なぜがウスターシュと共に毎日行動をしていた。
三日ほど経った頃に聞いてみると、

「俺はね、実は特別任務隊所属なんだよ。国中を回って逸材素晴らしい魔力を持った人を捜したり、国王からの任務で、レスキュン領の〝危ない森〟へ行って、必要な素材を獲りに行ったりね。そして、ほら。今回リュシー嬢を仲間に出来たし。
今は特に任務もないし、ゆっくりしてるってわけ。リュシー嬢がここでの生活に慣れてもらえるようになって欲しいってのもあるけどね。」

 と、返答された。

(特別任務隊…!なんだかすごい名前だわ!)

「あ、ちなみに、リュシー嬢は特殊任務隊所属だからね。」

(特殊任務!?)

「似たような名前だろう?本当、適当だよなぁ、陛下って!」


 だんだんと、リュシーはウスターシュとの仲も縮まってきたような気がしていた。時折、ウスターシュの話し方が以前よりも気易くなっている時があるのだ。


「リュシー嬢。なんだか、君といると温かい気持ちになるんだ。リュシー嬢の動物への温かい気持ちが、きっと俺にも流れ込んでくるんだろうな。」


 ウスターシュは、他人が持つ魔力を感じる事が出来る。それ故なのかウスターシュ自身分かってはいないが、リュシーの傍にいると、なんだかとても温かい気持ちになるとここ数日感じていたのだ。
それが、魔力のせいなのか単に、心の中で芽生えた気持ちのせいなのか、ウスターシュには区別がついていない。


(温かい気持ち…ほんわかしたような、じんわりと心温まるような気持ちなら、私もウスターシュ様と一緒にいて感じているわ。)

 リュシーも、ウスターシュから言われた時に同じような気持ちだと思った。





 その日、昼食を摂ったあと、ウスターシュがさも残念そうにリュシーへ言った。

「リュシー嬢、俺はこれから陛下に呼ばれているんだ。済まない、一緒に居られない。部屋にいるかい?」

「そうなのですね。ええ、部屋にいます。気が向いたら出掛けるかもしれないですけれど。」

「え?いや、一人では出ないでくれ!まだリュシーには護衛を付けていないんだ。」

「護衛ですか?必要ないですよ、王宮の中ですし。」

「ダメだよ。特殊な魔力を持っているんだから、立派な誘拐案件になりうるんだ!いい?部屋でゆっくり過ごしていてくれ。終わったら行くから。」

「フフフ。分かりました。ではいってらっしゃいませ。」

「ああ…」

 リュシーの部屋の前まで一緒に来たウスターシュ。
 リュシーに向けて、ウスターシュがとても眩しい笑顔を向けたので思わず見惚れてしまう。

(最近…なんだろう。ウスターシュ様、とても爽やかな温かい笑顔を向けてくれるのよね。会った当初から優しい言葉は掛けてくれていたけれど、ウスターシュ様といると、なんだろう…温かいな。)



 部屋に戻ったリュシーだが、この王宮へ来て初めて長く一人の時間が取れ、なんだか酷く淋しく思った。

(今までもレスキュン領でずっと一人だったわ。だから、なにも変わらないはずなのに…王宮へ来て、ほぼずっと一緒に過ごしていたからなのかしら。なんだろう…)

 リュシーは心に穴がぽっかりと空いたような、なんだか今まで抱いた事のない気持ちが湧き上がってきたのが不思議だと感じた。そわそわとするような、そんな気持ちだ。



 リュシーは窓辺へ行き、外を眺める。
 下を見ると、エルキュールが、あの大型犬と一緒に駆け回っているのが見えた。芝生に座り込み、エルキュール様の顔を舐め回している大型犬。

(少し前の私には、考えられない生活だわ。)

 人前では、動物との会話を見せる事はしていなかったリュシー。それが、今、少しずつではあるが人や動物との役に立っている事を実感してきている。まだまだ、自信を持つ事は出来ないけれどそれでも、少しずつここへ来てよかったと思えていた。


(ウスターシュ様が誘って下さったおかげよね。)


 コンコンコンコン

 ふと、扉を叩く音がしたのでウスターシュかと思ったリュシーは、誰かも確かめずにどうぞ、と促した。

「失礼します。」

 入って来たのはウスターシュではなく、エタンだったので、リュシーは、あら?と思った。

(やだわ…ウスターシュ様だと思うなんて。こんなに早く国王陛下との面会が終わるわけないのに。)

「気に入るかは分かりませんが、異国の動物が出てくる物語本をお持ちしました。ウスターシュが、暇を持て余しているといけないというものですから。」

「え?私に?」

「もちろんその為にお持ちしました。どうぞ。では、僕はこれで。あ、ちなみに、ウスターシュの本だから、奴に読んだ感想を言うととても喜ぶと思うよ。」

「まぁ…!」

 そう言うとすぐにエタンは部屋を去った。

(ウスターシュ様がわざわざ…?でも嬉しいかも。早速、読んでみましょう!)

 リュシーは早速、テーブルの上に置かれた一番上の本を手に取った。
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