21 / 35
21. マクスウェル大国の国王視点
しおりを挟む
俺はジャーヴィス。このマクスウェル大国の国王だ。
俺が国王になったのは、戦争が終わった二年前。
正妃である俺の母が、亡くなったのが十二歳の頃だったか。そこから、母にべた惚れだった父が変わった。
それまでも周辺国よりはそこそこ大きい領土を保有していたが、父は飢えをしのぐように近隣の国へ戦争を次々と仕掛けて行った。
そして、その度にその国の王女や、すでにその国の正妃、側妃となっている女性を半ば強引に連れて来て、後宮に押し込め、女性と戯れてはまた領土を広げに出かけて行った。
だんだんと俺が大きくなると、後宮の意味も分かってくる。
だが、無駄に女性が増え、子供も増えていくと国費が圧迫する。
父は、連れて来た女性達を大切にはしていなかった。後宮の意味をなしてはいないのではないか?と思い始めていた。
帰って来てからの二週間程は、後宮に入り浸りなかなか出て来ないが、飽きてくるとまた領土を広げに国を出て行く。その留守の間は、俺が国王の仕事を代理でしていた。だから、父が勝手をするのを早く止めてくれないかと思っていた。
女性や子供もその間にだんだんと増えていくが、父は素知らぬ顔。
父は領土を広げに行っているのか新しい女性を見つけに行っているのかもはや分からなくなってきていた。
だから、俺は父に進言したのだ。そろそろ国王の座を退いて欲しいと。
父はその言葉を待っていたかのように承諾し、手筈を整えていった。
今は最北の地で余生を過ごしている。後宮にいる女性を連れて行くのかと聞いたが、意外にも全員に断られたと言っていた。
「では最後にあと一つ、ヴァイロン国を落とそう。それで、海に面した国が手に入る。海の向こうからもしもどこかの国が攻めて来た時、ヴァイロン国の武力じゃあ赤子の手を捻るように容易く墜ちてしまうだろうからな。」
父ではあるまいし、むやみに戦争を吹っかけてくる国なんてないと思うんだが。
父は最後に、その国の王女をもらってくる手筈まで整えやがった。自分の子供よりも年下だぞ。だからまぁ、かなり面倒ではあるが俺がもらい受ける事とした。父の被害者にするには可哀想だからな。
だが、嫁いでくるのは更に年下の妹だと言うではないか。
…まぁ、別に誰が俺の妻になっても大して違いはないだろうがな。
最低限の正妃の仕事さえしてくれれば誰でも。
俺は、側妃なんて持ちたくないし。父を見ていると気持ち悪くて適わない。
そんな王女が何をしたのかを含め、ロバウトに逐一報告をさせていた。すると、出迎えに行った道中、びっくりするような事を度々するから、その報告が楽しみになってきていた。
姉が病気だから自分が嫁ぐと言ったり、侍女を連れて行きたいと言ったり。
自分が毒入りかもしれない飲み物を、ロバウト達の代わりに飲んだと報告を受けた時は肝が冷えた。何事もなくて本当に良かった。
行程が遅れると知ると、馬車ではなく馬で進むと言ったり。
あとは、宿屋があっても自分はそこへは泊まらないと頑なに譲らなかったそうだな。
ロバウトに、マクスウェル大国の事についてもよく聞いていたらしい。質問攻めで困ったと書いてあったな。
たまに、俺への労いの言葉も手紙に付け加えてくれているし、面白い奴だなと思った。
部屋は、少しでも寛げるよう淡い感じにさせた。好みが違えば、好きに替えさせてもいいと思ったが存外気に入ったらしいな。
今は、まだ仕事が忙しく時間が取れないが、早く面と向かってあいつを見てみたいものだ。
もっと、俺を楽しませてくれ。
そのように心動かされるようになるとは、少し前の俺は考えもつかなかったな。
俺が国王になったのは、戦争が終わった二年前。
正妃である俺の母が、亡くなったのが十二歳の頃だったか。そこから、母にべた惚れだった父が変わった。
それまでも周辺国よりはそこそこ大きい領土を保有していたが、父は飢えをしのぐように近隣の国へ戦争を次々と仕掛けて行った。
そして、その度にその国の王女や、すでにその国の正妃、側妃となっている女性を半ば強引に連れて来て、後宮に押し込め、女性と戯れてはまた領土を広げに出かけて行った。
だんだんと俺が大きくなると、後宮の意味も分かってくる。
だが、無駄に女性が増え、子供も増えていくと国費が圧迫する。
父は、連れて来た女性達を大切にはしていなかった。後宮の意味をなしてはいないのではないか?と思い始めていた。
帰って来てからの二週間程は、後宮に入り浸りなかなか出て来ないが、飽きてくるとまた領土を広げに国を出て行く。その留守の間は、俺が国王の仕事を代理でしていた。だから、父が勝手をするのを早く止めてくれないかと思っていた。
女性や子供もその間にだんだんと増えていくが、父は素知らぬ顔。
父は領土を広げに行っているのか新しい女性を見つけに行っているのかもはや分からなくなってきていた。
だから、俺は父に進言したのだ。そろそろ国王の座を退いて欲しいと。
父はその言葉を待っていたかのように承諾し、手筈を整えていった。
今は最北の地で余生を過ごしている。後宮にいる女性を連れて行くのかと聞いたが、意外にも全員に断られたと言っていた。
「では最後にあと一つ、ヴァイロン国を落とそう。それで、海に面した国が手に入る。海の向こうからもしもどこかの国が攻めて来た時、ヴァイロン国の武力じゃあ赤子の手を捻るように容易く墜ちてしまうだろうからな。」
父ではあるまいし、むやみに戦争を吹っかけてくる国なんてないと思うんだが。
父は最後に、その国の王女をもらってくる手筈まで整えやがった。自分の子供よりも年下だぞ。だからまぁ、かなり面倒ではあるが俺がもらい受ける事とした。父の被害者にするには可哀想だからな。
だが、嫁いでくるのは更に年下の妹だと言うではないか。
…まぁ、別に誰が俺の妻になっても大して違いはないだろうがな。
最低限の正妃の仕事さえしてくれれば誰でも。
俺は、側妃なんて持ちたくないし。父を見ていると気持ち悪くて適わない。
そんな王女が何をしたのかを含め、ロバウトに逐一報告をさせていた。すると、出迎えに行った道中、びっくりするような事を度々するから、その報告が楽しみになってきていた。
姉が病気だから自分が嫁ぐと言ったり、侍女を連れて行きたいと言ったり。
自分が毒入りかもしれない飲み物を、ロバウト達の代わりに飲んだと報告を受けた時は肝が冷えた。何事もなくて本当に良かった。
行程が遅れると知ると、馬車ではなく馬で進むと言ったり。
あとは、宿屋があっても自分はそこへは泊まらないと頑なに譲らなかったそうだな。
ロバウトに、マクスウェル大国の事についてもよく聞いていたらしい。質問攻めで困ったと書いてあったな。
たまに、俺への労いの言葉も手紙に付け加えてくれているし、面白い奴だなと思った。
部屋は、少しでも寛げるよう淡い感じにさせた。好みが違えば、好きに替えさせてもいいと思ったが存外気に入ったらしいな。
今は、まだ仕事が忙しく時間が取れないが、早く面と向かってあいつを見てみたいものだ。
もっと、俺を楽しませてくれ。
そのように心動かされるようになるとは、少し前の俺は考えもつかなかったな。
23
お気に入りに追加
1,947
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
泥を啜って咲く花の如く
ひづき
恋愛
王命にて妻を迎えることになった辺境伯、ライナス・ブライドラー。
強面の彼の元に嫁いできたのは釣書の人物ではなく、その異母姉のヨハンナだった。
どこか心の壊れているヨハンナ。
そんなヨハンナを利用しようとする者たちは次々にライナスの前に現れて自滅していく。
ライナスにできるのは、ほんの少しの復讐だけ。
※恋愛要素は薄い
※R15は保険(残酷な表現を含むため)
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
婚約者の浮気現場を目撃したら、魔力が暴走した結果……
四馬㋟
恋愛
保有する膨大な魔力を制御できず、他者を傷つけまいと孤立する公爵家令嬢のエメリン。ある時、婚約者が自分以外の女性と抱き合う光景を目撃してしまい、ショックのあまり魔力を暴走させてしまう。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる