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18. 案内
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タミルは、扉の外にいたロッテにも視線を送り、廊下を進んで行く。
キャスリンもロッテの隣で控えていたので、共に付いてきた。
タミルは、本棟の奥に案内してくれた。
謁見室から進む廊下は、時折曲がって、時には上り坂や下り坂を進んでいくので、本当に迷いそうだった。しばらくは一人で出歩けないな、そう思い、後で案内図を欲しいとお願いしたい位だった。実際には、悪用されてもいけないのでくれはしないだろうけれど。
「こちらでございます。」
その部屋は、広くもなく、かと言ってものすごく狭いわけでもない、ちょうど良い大きさの部屋だった。
部屋に入ってすぐは小部屋があり、そこがロッテの部屋なのだとか。
中央には天蓋が付いた人が三人ほど寝ころべそうなベッド、正面には背丈ほどの大きな窓、その横にはスツールと化粧台、奥には衣装部屋に、反対側にはお風呂場へと続くのだという。
タミルがそう、案内してくれた。
壁紙は淡い色に、細かい花が散りばめられたように描かれていた。
カーテンも同じような淡い色合いで、とても落ち着いた雰囲気だ。
「素敵…!」
私は思わず呟くと、『それはようございました。ジャーヴィス様が自ら、指示なさいました。』と、タミルが言った。
「え?」
「はるばる来て下さった方に、せめて心が落ち着かれますようにと、ご準備されていましたよ。」
「…。」
本当に?思わず疑ってしまうほど、先ほどは揶揄された気がしたもの。お転婆王女だなんて。
「分かりにくい方ですが、他人にはお優しい方なのです。」
「そうなのですね。」
あまりにも、自分の事のように嬉しそうにタミルが言ったから、そう言葉を返した。
タミルは、私の専属の侍女だと紹介された。けれど、ロッテもいるので当面はロッテにいろいろと教えつつ、普段この部屋にいる時などはロッテと居させてくれるらしい。
明日からは、私に教師を付けてくれるみたいで、午前中は大国史と言ってマクスウェル大国の歴史を学ぶのだとか。午後は自由にしていいと言われた。けれど、一人で出歩かない事、と何度も言われたわ。
そんなに階段を使っていないのにいつの間にか上ってきたこの部屋の窓の景色は、眺めがとてもよかった。それを見ているだけでも、時間が過ぎていくようだった。
すぐ下には、花壇があり、庭園が少しつくられていた。その向こうの、王宮の正門を出た辺りには王都が広がっている。街並みや、行き交う人が遠くに見えた。
いつか、その王都にも行けるようになるといいなと思いながら、タミルの話を聞いていた。
キャスリンもロッテの隣で控えていたので、共に付いてきた。
タミルは、本棟の奥に案内してくれた。
謁見室から進む廊下は、時折曲がって、時には上り坂や下り坂を進んでいくので、本当に迷いそうだった。しばらくは一人で出歩けないな、そう思い、後で案内図を欲しいとお願いしたい位だった。実際には、悪用されてもいけないのでくれはしないだろうけれど。
「こちらでございます。」
その部屋は、広くもなく、かと言ってものすごく狭いわけでもない、ちょうど良い大きさの部屋だった。
部屋に入ってすぐは小部屋があり、そこがロッテの部屋なのだとか。
中央には天蓋が付いた人が三人ほど寝ころべそうなベッド、正面には背丈ほどの大きな窓、その横にはスツールと化粧台、奥には衣装部屋に、反対側にはお風呂場へと続くのだという。
タミルがそう、案内してくれた。
壁紙は淡い色に、細かい花が散りばめられたように描かれていた。
カーテンも同じような淡い色合いで、とても落ち着いた雰囲気だ。
「素敵…!」
私は思わず呟くと、『それはようございました。ジャーヴィス様が自ら、指示なさいました。』と、タミルが言った。
「え?」
「はるばる来て下さった方に、せめて心が落ち着かれますようにと、ご準備されていましたよ。」
「…。」
本当に?思わず疑ってしまうほど、先ほどは揶揄された気がしたもの。お転婆王女だなんて。
「分かりにくい方ですが、他人にはお優しい方なのです。」
「そうなのですね。」
あまりにも、自分の事のように嬉しそうにタミルが言ったから、そう言葉を返した。
タミルは、私の専属の侍女だと紹介された。けれど、ロッテもいるので当面はロッテにいろいろと教えつつ、普段この部屋にいる時などはロッテと居させてくれるらしい。
明日からは、私に教師を付けてくれるみたいで、午前中は大国史と言ってマクスウェル大国の歴史を学ぶのだとか。午後は自由にしていいと言われた。けれど、一人で出歩かない事、と何度も言われたわ。
そんなに階段を使っていないのにいつの間にか上ってきたこの部屋の窓の景色は、眺めがとてもよかった。それを見ているだけでも、時間が過ぎていくようだった。
すぐ下には、花壇があり、庭園が少しつくられていた。その向こうの、王宮の正門を出た辺りには王都が広がっている。街並みや、行き交う人が遠くに見えた。
いつか、その王都にも行けるようになるといいなと思いながら、タミルの話を聞いていた。
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