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17. 拝謁

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 そんな衝撃の話をしていると、従僕が『お待たせいたしました。どうぞ、ご案内いたします。』と部屋の扉の外から声を掛けてきた。

「さぁ、では参りましょうか。」

 そう、キャスリンに言われたけれど、頭が付いていかない。

「え、ええ…。」

「アリーシャ様、大丈夫ですか?参りましょう。お立ち下さい。」

 私は、ロッテに支えられ、どうにか立ち上がると、歩き出した。





「さぁ、どうぞ。ここからは、一人で歩けますか、アリーシャ様?」

 謁見室に辿り着いた。

 ロッテに、そう言われて支えられていた手を離された。
ロッテは、侍女であるから謁見室へは入れない為、ここで待つのだ。

 急に手を離されて温もりが無くなった為に淋しく思ったけれど、私はこれでも王女。しっかりしないと!
目を一度瞑って、一呼吸してから私は謁見室へと入って行った。







 謁見室は、天井が非常に高く、無駄に広い部屋だった。
扉から奥へと真っ直ぐに赤い絨毯が敷いてあり、その先に金色の、背もたれがとても長い玉座が一つ、置いてある。そこにはまだ、誰も座っていない。

 ドキドキとした気持ちを抑えつつ、玉座の前に跪き、頭を下げて待っていた。



 少しして、衣擦れの音がして、国王様であるジャーヴィス様だろう人が誰か人を伴って入って来た。

「顔を上げよ。」

 思ったよりも少し低い声が、部屋中に響き渡った。

 私はゆっくりと顔を上げる。

 玉座に座る人と、その斜め後ろに控えるのは、ロバウト様だった。

 玉座に座るジャーヴィス様は、真っ黒い髪に、青い瞳をしていた。整った顔立ちで、鼻は高くて目はキリリと細長く、睨まれていると勘違いしそうな目力があった。睨まれていないと思いたい。

「遠くからはるばる、良く来たな。今日は疲れただろう、ゆっくりと休め。話は、ロバウトから聞いている。お転婆王女よ、恥をさらしてくれるなよ。タミルを付ける。後はタミルに聞け。タミル、ここへ。」

 そう、ジャーヴィス様は口角を上げながら言うと、タミルという女性を呼んだ。タミルは、見たところ三十歳代か四十歳代に見えた。

「タミル、後は頼む。ではお転婆王女、ついていけ。」

 そう言うと、タミルが私に視線を送り、部屋を出ようとするので私は慌てて付いて行こうと立ち上がった。
振り向いて、ジャーヴィス様を見ると、ロバウト様に顔を向け、ニヤニヤと笑っているように見えた。

(私、お転婆王女なんかじゃないのに!)

 そう言いたかったけれど、気に障ってもいけないから黙ってタミルの後を追った。
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