【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!

まりぃべる

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13. 折りたたみの馬車

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「な、なんだって!?」

 ロバウト様は、いつもの人当たりの良い笑顔を崩し、話し方も冷静さを失って私に言った。

「ですから、昨日は皆様休息がしっかり出来たのでしょう?今日は、走って行きましょう!そうしたら、昨日の分と今日進む分を取り返せますか?」

「何を言っているのですか!馬車があるではないですか。我々の馬車は、走っていくには耐えられませんよ!」

「でも、この馬車は、折りたたみができるのでしょう?」


 この馬車は、山道などの細い道を通る場合、馬車の横幅では通れない道もある。その時の為に馬車の御者が乗る部分と、箱の部分が、蝶番で折りたたんだり、木の板に凹凸があってはめ込んだりして取り外しが出来るようになっていた。


「確かに出来ますが…。」

「取り外した物も含めて、持って走るのは大変?」

「私達には、簡単ですよね?」

 キャスリンは他の騎士達に向かって言ってくれた。
あの後、プリプリと怒っていたキャスリンに提案してみたのだ。そうしたら、喜々として賛成してくれた。


「まぁ…容易であるが、そうしたらアリーシャ様は…。」

 騎士団長のゴルゴットも副騎士団長のガンベストも、皆困惑しているわね。でも、私もずっと馬車で座っていて飽きてしまったもの。少し位、いいわよね?…ロッテは最後まで反対していたけれど。


「ゴルゴット、あなたは体躯が大きいから二人乗りでもしっかり抱えられるわよね。出来る?」

「二人乗りですか?はい、それは。救助活動も視野に入れて訓練しておりますから。馬も耐えられますよ。アリーシャ様をお乗せしますか?けれど、馬車の方が乗り心地はいいと思いますよ。」

「そう、素晴らしいわ。ありがとう。でも私じゃなくて、ロッテを乗せてくれるかしら?私は…誰か馬を借りてもいいかしら?」

「え?」
「は?」
「なに?」


 皆、訝しげに私を見ているわ。私、そんなに変な事を言っているかしら。だんだん不安になってきたわ。

 でも私が、馬に乗ろうとして後続に付く予定だった人を見たら、戸惑いながらも私に手綱を差し出してくれた。

「ありがとう。では出発しましょうか。いい?ガンベスト、付いてきて下さる?」

「え?ええ…ですが…。」

「あ、そうね。馬車を外すのに時間が掛かるわね。では先にそれをしてからのがいいわよね。お願いしますね。」

「では本当によろしいのですね?終わるまで、お待ちください。」

「ええ。お手数掛けるけれどお願いしますね。」




ーーーー

「では、準備出来ました。」

「ありがとう。皆も、無理言ってごめんなさいね。」

「そんな事ないですよ、ねぇ皆?私達は騎士だもの。荷物を持って走るなんて朝飯前よね!」

「キャスリンはホント、騎士を美化し過ぎだよな」

 騎士の誰かが、ボソリと言った。

「だれ!?聞こえてるわよ!」

 キャスリンが後ろを振り返り、言った。

「まぁまぁ。キャスリンもそう食ってかからない。さぁ、では行きましょうか。」

「はい!」

 ゴルゴットがそう言ったので、私は勢い良く返事をして、馬を走らせ始めた。
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