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12. 休息日とズィールと
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その日は、休息日となってしまったので、私は昨夜、お酒を持ってきてくれた人達の集落へロッテとキャスリンで向かった。
昨日の失態を謝る為に。だって皆を疑ってしまったのだ。そんな悪いことするはずないのに。
『お転婆だと思っていたアリーシャ様が、王女様だと改めて気付かされました。大国へ行っても、どうぞ息災で。』
そう笑いながら行ってくれた集落の長には、心を救われたわ。
だから、『昨日は美味しいとか良く分からなかったの。そのお酒、私がもう少しお酒が飲めるようになったら飲ませてね。』と返した。
次の日。
野菜スープの良い匂いで目が覚めた。今日はもう皆、体調がいいのかしら。
起き上がり、様子を見に行って、何なら手伝おうかしらと思って簡易テントを出ると、ロッテが手伝っていた。
「ロッテ、私も…」
「さぁ、アリーシャ様!座ってお待ち下さいね。もう出来上がりますよ。」
「じゃあ配るわ。」
「いいえ、座っていて下さいね!」
「…はーい。」
ロッテは、私が手伝おうとしたのにさせてくれないわ。でも、ほかの騎士達も一緒に作っているから大丈夫なのね。そう思って敷物に座って待っていた。
「今日は、昨日の行程を進みます。よろしくお願いします。」
と、ロバウト様に言われたので、聞いてみた。
「一日到着が遅くなるという事ですよね。いいのですか?」
「ええ。手紙を飛ばしているので、大丈夫ですよ。食料も無くなればそれで連絡して届けてもらえます。」
「手紙?」
「はい。一日に一度、ズィールという鳥を飛ばして報告しています。脚に手紙を括りつけて。」
(へぇ!面白いわ!)
「すごいです!…てことは、あの…私が酔っぱらった事も?」
「はい、逐一。ジャーヴィス様は心配なさってましたよ。」
「そう…。」
(…やだわ。なんだか、失態みたいじゃないの。)
「もしよければ、何か書かれますか?」
「えっ?」
「ジャーヴィス様に。届きますよ。」
(んー…やだわ、何も思い浮かばないわ。)
「考えてみます。まとまったら、お願いしますね。あ…そうだわ。ジャーヴィス様は、お姉様でなくて私になってしまった事、怒っておりますか?」
「いいえ。怒ったりはしておりませんよ。安心なさって下さい。」
(よかったわ…。)
「では、今はそれを。『ご心配掛けてすみません。無理をなさいませんようお体にお気を付け下さい』と。」
「ほう…!承知いたしました。」
「はぁ。やっと出発ですね!昨日みたいに休んでいては体が鈍ってしまいます!」
出発の準備をする傍ら、キャスリンが私の隣で体を動かしながらそう愚痴っていた。
「え?休息も大事ではないの?」
「それはそうです。けれど、騎士という者は元々鍛えておりますから短時間の休息で十分ですのに、自分の限界も分からない馬鹿共のせいで一日も行程がズレたのです!」
よっぽど、騎士達が醜態をさらしていたのが嫌だったのかしら。
「先ほど、行程がズレても連絡しているから問題ないとロバウト様は言っていたわ。」
「まぁ、王宮は問題はないでしょうね。それに、ロバウトも二日酔いだったもの。あいつは自分を悪くは言わないでしょうね。でも、私達の食料が問題です!追加で食料を支給してもらえますが、理由が情けなくて!」
(なるほどね…。)
「鍛えているって、どんな風に?」
「私達は、様々な事を想定し、それに対応出来るよう訓練の種類は様々です。手近なものですと、王都の周りを走ったりとかですかね。」
「なるほど…様々な…。でも、キャスリンは男性と同じようにずっと歩いたりもしてるし辛くないの?」
「私にとって騎士とは、誇らしく尊敬できる存在ですから、鍛える事も辛くはありませんよ。うちの家系は代々騎士なのです。今日の行程もずっと走って行く事だって出来ますよ。あぁ、そうしたいくらい!」
今すぐ駆け出しそうな格好をして、キャスリンは言った。
「すごいのね!本当にそうしたら、大変?」
「え?走って行くのがですか?実際には無理です。いえ、私達が走って行く事は余裕ですが、アリーシャ様がおりますから。馬車を抜かす事は出来ません。」
(なるほどねぇ…。)
昨日の失態を謝る為に。だって皆を疑ってしまったのだ。そんな悪いことするはずないのに。
『お転婆だと思っていたアリーシャ様が、王女様だと改めて気付かされました。大国へ行っても、どうぞ息災で。』
そう笑いながら行ってくれた集落の長には、心を救われたわ。
だから、『昨日は美味しいとか良く分からなかったの。そのお酒、私がもう少しお酒が飲めるようになったら飲ませてね。』と返した。
次の日。
野菜スープの良い匂いで目が覚めた。今日はもう皆、体調がいいのかしら。
起き上がり、様子を見に行って、何なら手伝おうかしらと思って簡易テントを出ると、ロッテが手伝っていた。
「ロッテ、私も…」
「さぁ、アリーシャ様!座ってお待ち下さいね。もう出来上がりますよ。」
「じゃあ配るわ。」
「いいえ、座っていて下さいね!」
「…はーい。」
ロッテは、私が手伝おうとしたのにさせてくれないわ。でも、ほかの騎士達も一緒に作っているから大丈夫なのね。そう思って敷物に座って待っていた。
「今日は、昨日の行程を進みます。よろしくお願いします。」
と、ロバウト様に言われたので、聞いてみた。
「一日到着が遅くなるという事ですよね。いいのですか?」
「ええ。手紙を飛ばしているので、大丈夫ですよ。食料も無くなればそれで連絡して届けてもらえます。」
「手紙?」
「はい。一日に一度、ズィールという鳥を飛ばして報告しています。脚に手紙を括りつけて。」
(へぇ!面白いわ!)
「すごいです!…てことは、あの…私が酔っぱらった事も?」
「はい、逐一。ジャーヴィス様は心配なさってましたよ。」
「そう…。」
(…やだわ。なんだか、失態みたいじゃないの。)
「もしよければ、何か書かれますか?」
「えっ?」
「ジャーヴィス様に。届きますよ。」
(んー…やだわ、何も思い浮かばないわ。)
「考えてみます。まとまったら、お願いしますね。あ…そうだわ。ジャーヴィス様は、お姉様でなくて私になってしまった事、怒っておりますか?」
「いいえ。怒ったりはしておりませんよ。安心なさって下さい。」
(よかったわ…。)
「では、今はそれを。『ご心配掛けてすみません。無理をなさいませんようお体にお気を付け下さい』と。」
「ほう…!承知いたしました。」
「はぁ。やっと出発ですね!昨日みたいに休んでいては体が鈍ってしまいます!」
出発の準備をする傍ら、キャスリンが私の隣で体を動かしながらそう愚痴っていた。
「え?休息も大事ではないの?」
「それはそうです。けれど、騎士という者は元々鍛えておりますから短時間の休息で十分ですのに、自分の限界も分からない馬鹿共のせいで一日も行程がズレたのです!」
よっぽど、騎士達が醜態をさらしていたのが嫌だったのかしら。
「先ほど、行程がズレても連絡しているから問題ないとロバウト様は言っていたわ。」
「まぁ、王宮は問題はないでしょうね。それに、ロバウトも二日酔いだったもの。あいつは自分を悪くは言わないでしょうね。でも、私達の食料が問題です!追加で食料を支給してもらえますが、理由が情けなくて!」
(なるほどね…。)
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「なるほど…様々な…。でも、キャスリンは男性と同じようにずっと歩いたりもしてるし辛くないの?」
「私にとって騎士とは、誇らしく尊敬できる存在ですから、鍛える事も辛くはありませんよ。うちの家系は代々騎士なのです。今日の行程もずっと走って行く事だって出来ますよ。あぁ、そうしたいくらい!」
今すぐ駆け出しそうな格好をして、キャスリンは言った。
「すごいのね!本当にそうしたら、大変?」
「え?走って行くのがですか?実際には無理です。いえ、私達が走って行く事は余裕ですが、アリーシャ様がおりますから。馬車を抜かす事は出来ません。」
(なるほどねぇ…。)
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