【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!

まりぃべる

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5. お供

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「到着されました!」


 そう言われたので、私も使用人達との挨拶は切り上げ、慌てて準備をする。一行は今頃応接室に通されているだろう。

 本来であれば、国王に会うのだから謁見室に通すべきではあるが、相手は大国の使者。それに加えて、夫となるべき国王が来るわけではないにしろ、親族となるのだから応接室に通すと言っていた。




「はぁ。緊張するわ。」

そう言って立ち上がると、部屋に慌ててロッテが入ってきた。そして、跪き、私を見上げていった。

「あぁ、間に合いました。アリーシャ様、私もどうぞ連れて行って下さいませ。」

 息を切らせ、私を見つめ、胸の辺りで両手を組んでいる。それは、小国ではあるけれど公式の際の、王族を敬う仕草であり、王族に忠誠を誓う仕草だった。
いつも、母親のように優しく、厳しく、温かく接してくれていた私の世話をしているロッテとは違う、真剣な眼差し。


 私は、苦慮した。


 ヴァイロン国からの持ち込みは一切禁止だと言われていた。身一つで嫁ぐのだと。

 私は明日からもここで暮らすと思っていたのに急に、長年一緒にいたロッテとも離れ、一人で大国に行くのは確かに心細かった。

 ロッテは、きっとヴァイロン国にいても肩身の狭い思いをするだろう。真相はどうであれ、息子が、王女を連れて逃亡したとされるのだ。


「………ロッテ。それは、思い付きではなく、よくよく考えて決められたのですね?」

 私は、いつも話すような親しい間柄での言葉遣いではなく、公式の立場ある者としての言葉遣いで言った。

「!…はい。私はアリーシャ様がお生まれになってから今まで、ずっとお側に仕えさせて頂きました。本来であれば、我が息子が、エドナ様を連れ去った罪で罰を受ける身でした。先ほど、国王陛下の御前にてこの命を捧げると奏上いたしました所、それならばアリーシャ様と共にマクスウェル大国へ行けと言って頂きました。アリーシャ様、無理を承知で申し上げます。私をお連れになって下さい。何かございました際には盾になります故。」

 きっと、私の意図を汲み取ってくれたのね。ロッテも、いつもの言葉遣いでは無く、丁寧にしてくれたわ。

「では、ロッテ。あなたに命じます。私と共に、マクスウェル大国へ向かいなさい。…なれど、私と共に生きる事。盾になる事は断じて許しません。」

「…はい。ありがとう存じます…。」

 ロッテは、胸の辺りで組んだ手に頭を当て、涙を流している。
そんなロッテに、私は近づき、同じ目線になるように跪いた。

「ねぇ、ロッテ。二度と戻れないのよ…だから、挨拶はいいの?」

 ロッテの夫、ジィルはこの国での形ばかりの騎士団長だった。
だが、二年前マクスウェル大国が国境に押し寄せて来たときに、先手必勝とばかりに、相手を撃とうとし逆に返り討ちにあい、儚く散った。
なので、何も持ち出せないにしても、墓前に挨拶はと思ったのだ。

「はい。どこにいてもきっと見守ってくれているでしょう。だから、いいのです。」

 そう言ったので、私は頷き、共に応接室へと、向かった。
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