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17. 謁見 カタン視点
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次の日。
急ではあるが、前国王陛下が、国王陛下に会いに来る。
「我に会いたかったそうだな」
そう、酷く偉そうに玉座に深々と座ったアントンは、普段使わない自分の呼び方をして前国王にそう尋ねた。
「気が済んだか?」
それに対し、前国王がそう、立ったまま聞いた。
普通であったら、玉座に座っている国王陛下に対し、膝を付いて頭を下げた姿勢をとると思うのだが前国王はそんな事はしていなかった。敬う気なんてさらさらないと言っているようなもの。
後ろには、ヴァレリアに似た容姿のヴェロニカ様や、他の貴族議員達もいたけれど、誰一人頭を下げている人はいない。
「…なんだと?」
アントンは、眉をピクリと動かして案の定不機嫌そうに言った。
それを皮切りに、前国王とアントンとの言い合いがしばらく続いた。
「国王のしたい国にして何が悪い?俺が国王だ!俺に従え!お前ら、俺に頭下げろよ!不敬罪だ!!お前ら、全員牢屋にぶち込んでやる!おい、連れて行け!!」
そう言ったアントンは、横に立っていた僕達に指図した。
だけど、僕らは別に武器を持っている訳でもないし、特段強い訳でもない。だからお互いの顔を見合わせ戸惑ってしまった。
「早く!おい、地下牢にぶち込めよ!!」
アントンも、僕らが動かないからと余計大声で言った。
「控えろ!!!」
前国王が、いきなりそう言った。先ほどもアントンに対して言い合いをしていたが、それとは桁が違い、国王としての威厳を放ち、腹の底から出したその声は足の先から震え上がるほどだった。
「アントン、お前はやりすぎた。いろいろと話は上がっておる。おい、そこの三人。お前らはどうする?アントンに最後まで付くか、ここで降参するか。」
僕らは再度お互いを見合った。でも、もうこれ以上は無理だ。そう思って僕は両手を挙げ、降参の形を取った。
「おい!なんだよ、裏切るのか!?」
そう言われたけれど、別に裏切るわけじゃない。もう無理。それだけだ。
「アントンよ、お前の国づくりは子供のままごとだ。国民というのは、幅広い。片方だけ優遇していては不満が出る。」
「何言ってんだ!貴族ばかり優遇してんのはそっちだろ!?俺らキシデルから来た移民を冷遇したんだろうが!」
「戯けた事を申すな!!!なぜキシデル国の民を、モルドバコドル国の民が払った税金で助けなきゃならぬ?住む事を許可したのは私の父。その時は私はまだ十歳と学生の身であったから何を思っておったのか全ては分からぬが、これだけは分かる!〝困った人を助けたい〟その気持ちが父にはあったのだ。だから、キシデル国に一番近いあの地区に住む許可を出したのだろう。我の予想でしかないが、あそこで生きながらえるよう、種芋や種を無償で寄付した事は聞いておる。それなのに、恩を仇で返すような逆恨みをしおって!!」
「た…種芋??」
アントンが驚いている。僕も驚いた。目の前の飢えを凌ぐ為ではなく、少し先を見据えて恵んでくれていたとは。
「そうだ。あの荒れ果てた地でも、芋は育つ。なのに、分けて貰った時にすぐ食べてしまったのだろう。」
「そりゃ、今日食うもんも無きゃ、明日生きられないだろ…。」
「そうかもしれん。だが、私財を投げ、持っていた宝石や服やなんかを早々に売っていれば、それなりに食べ物がすぐ手に入れる事が出来たと思うぞ。自分達でやっていこうという心意気があったか?それもなく、国のせいにしおって。」
「……。」
確かにそうだ。僕の両親も、兄弟姉妹が移動して来てすぐ、食べ物がなくて飢えで亡くなったと言っていた。アントンのじいさんが貴族だったと言っていた。その時に、手を尽くしていればまた状況は変わったのかもしれない。
「貴族ばかりがいい思いをしている訳でもない。国づくりの為に日々切磋琢磨し知恵を絞ってくれているんだ。だから対価として報酬が出るだけだ。勘違いするな。」
「………。」
「分かったな。これで、終わりだ。」
肩をガックリと落としたアントンは、膝から崩れ落ちた。
それを、部屋の外で待機していた騎士団の偉い奴が同じく待機していた騎士団員に素早く指示をして両脇を抱え、両手を挙げたままの僕らも抵抗を特にしていなかったからか誘導され、部屋の外へと連れ出された。
急ではあるが、前国王陛下が、国王陛下に会いに来る。
「我に会いたかったそうだな」
そう、酷く偉そうに玉座に深々と座ったアントンは、普段使わない自分の呼び方をして前国王にそう尋ねた。
「気が済んだか?」
それに対し、前国王がそう、立ったまま聞いた。
普通であったら、玉座に座っている国王陛下に対し、膝を付いて頭を下げた姿勢をとると思うのだが前国王はそんな事はしていなかった。敬う気なんてさらさらないと言っているようなもの。
後ろには、ヴァレリアに似た容姿のヴェロニカ様や、他の貴族議員達もいたけれど、誰一人頭を下げている人はいない。
「…なんだと?」
アントンは、眉をピクリと動かして案の定不機嫌そうに言った。
それを皮切りに、前国王とアントンとの言い合いがしばらく続いた。
「国王のしたい国にして何が悪い?俺が国王だ!俺に従え!お前ら、俺に頭下げろよ!不敬罪だ!!お前ら、全員牢屋にぶち込んでやる!おい、連れて行け!!」
そう言ったアントンは、横に立っていた僕達に指図した。
だけど、僕らは別に武器を持っている訳でもないし、特段強い訳でもない。だからお互いの顔を見合わせ戸惑ってしまった。
「早く!おい、地下牢にぶち込めよ!!」
アントンも、僕らが動かないからと余計大声で言った。
「控えろ!!!」
前国王が、いきなりそう言った。先ほどもアントンに対して言い合いをしていたが、それとは桁が違い、国王としての威厳を放ち、腹の底から出したその声は足の先から震え上がるほどだった。
「アントン、お前はやりすぎた。いろいろと話は上がっておる。おい、そこの三人。お前らはどうする?アントンに最後まで付くか、ここで降参するか。」
僕らは再度お互いを見合った。でも、もうこれ以上は無理だ。そう思って僕は両手を挙げ、降参の形を取った。
「おい!なんだよ、裏切るのか!?」
そう言われたけれど、別に裏切るわけじゃない。もう無理。それだけだ。
「アントンよ、お前の国づくりは子供のままごとだ。国民というのは、幅広い。片方だけ優遇していては不満が出る。」
「何言ってんだ!貴族ばかり優遇してんのはそっちだろ!?俺らキシデルから来た移民を冷遇したんだろうが!」
「戯けた事を申すな!!!なぜキシデル国の民を、モルドバコドル国の民が払った税金で助けなきゃならぬ?住む事を許可したのは私の父。その時は私はまだ十歳と学生の身であったから何を思っておったのか全ては分からぬが、これだけは分かる!〝困った人を助けたい〟その気持ちが父にはあったのだ。だから、キシデル国に一番近いあの地区に住む許可を出したのだろう。我の予想でしかないが、あそこで生きながらえるよう、種芋や種を無償で寄付した事は聞いておる。それなのに、恩を仇で返すような逆恨みをしおって!!」
「た…種芋??」
アントンが驚いている。僕も驚いた。目の前の飢えを凌ぐ為ではなく、少し先を見据えて恵んでくれていたとは。
「そうだ。あの荒れ果てた地でも、芋は育つ。なのに、分けて貰った時にすぐ食べてしまったのだろう。」
「そりゃ、今日食うもんも無きゃ、明日生きられないだろ…。」
「そうかもしれん。だが、私財を投げ、持っていた宝石や服やなんかを早々に売っていれば、それなりに食べ物がすぐ手に入れる事が出来たと思うぞ。自分達でやっていこうという心意気があったか?それもなく、国のせいにしおって。」
「……。」
確かにそうだ。僕の両親も、兄弟姉妹が移動して来てすぐ、食べ物がなくて飢えで亡くなったと言っていた。アントンのじいさんが貴族だったと言っていた。その時に、手を尽くしていればまた状況は変わったのかもしれない。
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「………。」
「分かったな。これで、終わりだ。」
肩をガックリと落としたアントンは、膝から崩れ落ちた。
それを、部屋の外で待機していた騎士団の偉い奴が同じく待機していた騎士団員に素早く指示をして両脇を抱え、両手を挙げたままの僕らも抵抗を特にしていなかったからか誘導され、部屋の外へと連れ出された。
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