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11. 領地に到着するとそこは
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領地に近づくにつれ、レナータは少し顔を強張らせ始める。
今まではレオシュがいて話していたので、気が紛れてもいた。が、やはり皆にどれだけ父が強いから安心しろと言われても、不安な気持ちを捨てきれずにいたのだ。
口数も少なくなってきたレナータに、レオシュは、言葉を添える。
「辺境伯にお会いした事はまだ無いが、そのイヤリングから感じる魔力と、同じ魔力が感じられる。だから、大丈夫だよ。」
レオシュがレナータの方を向き、優しい表情で言ってくれた為、レナータは温かい気持ちになる。
(あぁ、レオシュは私に寄り添ってくれるのね。私の気持ちが読めるのかしら?)
ほんわかと温かい胸の高鳴りに気づかないふりをして、レナータは進んだ。
☆★
屋敷へ帰ると、誰も居なかった。
レナータはそこの厩にレナータの愛馬とレオシュが乗ってきた馬を連れて行き
、逸る気持ちを抑え、水と飼い葉を準備して二頭の前へと置いた。
「ごめんね、お疲れ様。ゆっくり休んでね。」
と声を掛けて厩を離れた。
この先の避難場所へとレナータはレオシュを案内する。
もしも何かがあった時、戦えない人はここに入って、時をやり過ごすのだ。ここはかなり昔に造られた為に古く、天然の洞窟に手を加えた形となっている。
備蓄もしてあるし、中はゆったりと過ごせるように広い造りとなっているのだった。
「ここに、居ると思うのだけど…。」
「……あぁ。誰か数人、気配がするな。一人、レナータのイヤリングと同じ気配が僅かにする。ここは避難場所といったな?伯爵夫人かもしれんな。」
「お母様?そうね、お母様-!!」
レナータはそれを聞くと大きな声で叫んだ。
「おいおい…魔獣がいないとも限らないだろう?大声はよした方がいい。気配を辿るから…こっちだ。」
レオシュは、レナータの持ち物であるイヤリングと同じ気配を感じ、それは伯爵が愛する夫人へと魔力を込めたのではないかと推察し、レナータへと安心させるようにそう言って案内をしだした。
奥へと進んだ先に、分かれ道があり、それを何度か進んだ先に明かりが見えて来た。
「あ!み、みんな…?」
「レナータ様!」
「レナータ様だ!!」
そこは広くなった空間で、天井も高くなっていた。天井高い部分はちょうど割れ目があり、外の空気と繋がっている。その為、火を使って料理をしている人達が振り向き、レナータへと声を掛けた。
「お帰りなさいませ、レナータ様。」
「みんな…!大丈夫?お母様は?」
こういう時は、シモナは率先して働いている為、母親の姿が見えないので聞くと、更に奥の外へと繋がる場所の近くで、怪我人を診ているとの事だったのでレナータはそちらへ行く。
床に板を敷いて布も敷いて、その上に数人男性が横になっていた。
そこに、付き添って包帯を巻いたり、体を拭いたりしている女性が何人かいた。
「お母様!」
「レナータ?」
レナータは、その中に母の姿を見つけるとすぐに近くへと駆け寄った。
「あぁ、レナータ。お疲れ様。よく頑張ったわね。あなたのおかげで、応援が早く来てくれました。被害も最小限に抑えられましたよ。」
「ううん。私が行かなくても、魔術師団の人達は優秀だから、ここの異変を感じ取ったらしくて、私が行った時にはもう出立の準備をされていたの。」
「そう?でも、レナータが行ったからこそ、魔術師団の人達は一大事だと分かってくれたのでしょう?レナータ、お疲れ様!それで…その後ろの人はどなた?」
シモナは、レナータの後ろに立っている軍服姿の黒髪の背の高い男性が気になった。レナータを守るように傍に立っていたからだ。
「あ、彼は…」
「お初にお目に掛かります。レオシュ=ベトナジークと申します。レナータ嬢は、本当に頑張ってここバルツァル領の危機を伝えてくれました。おかげで、うちの魔術師団団長や、他の団員達の気迫も違った事と思います。」
「あら、そお?それは良かったわ。レオシュ様。ゆっくりしていってね。さ、レナータ。今は怪我人の手当てをしているの。ここは手が足りているから、外を見てきてくれる?」
「分かりました。お父様は?警備団のは?」
「それも含めて、自分の目で確かめて来なさい。あっちから出られるわ。」
「分かりました。……皆、生きていてくれてありがとう!お疲れ様!」
レナータは、横になり看護を受けている人達へとそう労い、そこを離れた。
彼らは皆、レナータと鍛錬を共にしてきた仲間だからだ。それを聞いた警備団の男達は、涙を流す者もいたのだった。
今まではレオシュがいて話していたので、気が紛れてもいた。が、やはり皆にどれだけ父が強いから安心しろと言われても、不安な気持ちを捨てきれずにいたのだ。
口数も少なくなってきたレナータに、レオシュは、言葉を添える。
「辺境伯にお会いした事はまだ無いが、そのイヤリングから感じる魔力と、同じ魔力が感じられる。だから、大丈夫だよ。」
レオシュがレナータの方を向き、優しい表情で言ってくれた為、レナータは温かい気持ちになる。
(あぁ、レオシュは私に寄り添ってくれるのね。私の気持ちが読めるのかしら?)
ほんわかと温かい胸の高鳴りに気づかないふりをして、レナータは進んだ。
☆★
屋敷へ帰ると、誰も居なかった。
レナータはそこの厩にレナータの愛馬とレオシュが乗ってきた馬を連れて行き
、逸る気持ちを抑え、水と飼い葉を準備して二頭の前へと置いた。
「ごめんね、お疲れ様。ゆっくり休んでね。」
と声を掛けて厩を離れた。
この先の避難場所へとレナータはレオシュを案内する。
もしも何かがあった時、戦えない人はここに入って、時をやり過ごすのだ。ここはかなり昔に造られた為に古く、天然の洞窟に手を加えた形となっている。
備蓄もしてあるし、中はゆったりと過ごせるように広い造りとなっているのだった。
「ここに、居ると思うのだけど…。」
「……あぁ。誰か数人、気配がするな。一人、レナータのイヤリングと同じ気配が僅かにする。ここは避難場所といったな?伯爵夫人かもしれんな。」
「お母様?そうね、お母様-!!」
レナータはそれを聞くと大きな声で叫んだ。
「おいおい…魔獣がいないとも限らないだろう?大声はよした方がいい。気配を辿るから…こっちだ。」
レオシュは、レナータの持ち物であるイヤリングと同じ気配を感じ、それは伯爵が愛する夫人へと魔力を込めたのではないかと推察し、レナータへと安心させるようにそう言って案内をしだした。
奥へと進んだ先に、分かれ道があり、それを何度か進んだ先に明かりが見えて来た。
「あ!み、みんな…?」
「レナータ様!」
「レナータ様だ!!」
そこは広くなった空間で、天井も高くなっていた。天井高い部分はちょうど割れ目があり、外の空気と繋がっている。その為、火を使って料理をしている人達が振り向き、レナータへと声を掛けた。
「お帰りなさいませ、レナータ様。」
「みんな…!大丈夫?お母様は?」
こういう時は、シモナは率先して働いている為、母親の姿が見えないので聞くと、更に奥の外へと繋がる場所の近くで、怪我人を診ているとの事だったのでレナータはそちらへ行く。
床に板を敷いて布も敷いて、その上に数人男性が横になっていた。
そこに、付き添って包帯を巻いたり、体を拭いたりしている女性が何人かいた。
「お母様!」
「レナータ?」
レナータは、その中に母の姿を見つけるとすぐに近くへと駆け寄った。
「あぁ、レナータ。お疲れ様。よく頑張ったわね。あなたのおかげで、応援が早く来てくれました。被害も最小限に抑えられましたよ。」
「ううん。私が行かなくても、魔術師団の人達は優秀だから、ここの異変を感じ取ったらしくて、私が行った時にはもう出立の準備をされていたの。」
「そう?でも、レナータが行ったからこそ、魔術師団の人達は一大事だと分かってくれたのでしょう?レナータ、お疲れ様!それで…その後ろの人はどなた?」
シモナは、レナータの後ろに立っている軍服姿の黒髪の背の高い男性が気になった。レナータを守るように傍に立っていたからだ。
「あ、彼は…」
「お初にお目に掛かります。レオシュ=ベトナジークと申します。レナータ嬢は、本当に頑張ってここバルツァル領の危機を伝えてくれました。おかげで、うちの魔術師団団長や、他の団員達の気迫も違った事と思います。」
「あら、そお?それは良かったわ。レオシュ様。ゆっくりしていってね。さ、レナータ。今は怪我人の手当てをしているの。ここは手が足りているから、外を見てきてくれる?」
「分かりました。お父様は?警備団のは?」
「それも含めて、自分の目で確かめて来なさい。あっちから出られるわ。」
「分かりました。……皆、生きていてくれてありがとう!お疲れ様!」
レナータは、横になり看護を受けている人達へとそう労い、そこを離れた。
彼らは皆、レナータと鍛錬を共にしてきた仲間だからだ。それを聞いた警備団の男達は、涙を流す者もいたのだった。
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