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8. 出発…したいのですが……
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「あーー!おい、お前!!」
そう言って指を差して来たのは、昨日会った三人だった。
「お前、ここに用事があったのか!?俺が直々に案内すると言ったのによ!!」
そう言われ、真ん中の人物が誰なのか分かった途端に顔を顰めていたレナータは、その人物に向かって言った。
「あら、誰かと思ったら昨日お会いした口の悪いお方ね。おあいにく様!あなたに案内されなくても、自分でたどり着けましたわ!ではごきげんよう!」
レナータは、面倒だとさっさと出発したくて早々に切り上げようとして、通り過ぎようとした。
が。
その、口の悪いお方が、レナータの腕を引っ張り、尚も話し掛けてきた。
「おい!俺が話しているのに、勝手に切り上げるな!!これから、王宮に行くから、お前も来い。……いて!!」
バチッ!
「きゃ!……あなた、本当に非常識ね!勝手に女性の腕を引っ張っていいと思っているの!?」
レナータは、いきなり青あざが出来るほどギュッと握られ痛いと叫んだが、すぐに手が離れた。
同時に、グイと引き寄せられた。引き寄せたのはレオシュで、自身が前に立ちレナータを守るように立った。レナータからはレオシュの背中しか見えず顔が見えなかったが、レオシュはマルツェルを物凄い殺気を放って睨みながらも冷静に話し出した。
「マルツェル様。またどこかへお出掛けになられていたのですか?急ぎますので失礼致します。」
「あ?おい!なんで、レオシュが一緒にいるんだ!?お前か!今俺に何かしただろう!不敬罪だ!おい、お前ら!見ただろう?俺の手がこう、バチってよ!」
「え…と、見ましたが、確かにそちらの女性の手に勝手に触れたのはマルツェル様ですし。なぁ、ヨルマ?」
「そうだよな、ヤロ。マルツェル様にも非がございますね。」
「なんだお前ら!俺の味方だろう!?おい、さっさと牢にぶち込めよ!!」
「マルツェル様、私の言葉をお聞きになっていないのですか?急ぎます、と言いました。これ以上私に何か言うのでしたら、職務妨害として、あなた様を牢に入れる事も出来ますよ?私は、魔術師だという事をお忘れなきよう。」
そうレオシュが冷たく低い声で言うと、マルツェルの両隣にいたヤロとヨルマはさっと顔色を青くしてすぐに頭を下げた。
「レオシュ副師団長様、失礼致しました。」
「レオシュ副師団長様、申し訳ありませんでした。」
「「さぁ、マルツェル様、帰りましょう。」」
「はぁ!?おい!俺を誰だと心得る!?お前より地位は上なんだぞ!?…おい、何で引っ張るんだよ!?」
「レオシュ様、申し訳ありません!言い聞かせますので。」
「レオシュ様、本当に申し訳ありません!失礼致しました!!」
そう言って二人は、マルツェルの両腕をがっしりと掴み、引き摺って中へと入って行った。
「はぁ…しかし、レナータはマルツェル様と顔見知りだったんだな。」
「レオシュ様、ありがとうございます。顔見知りというか、昨日、バルツァル領の近くの平原で三人が言い争いをしているのを見掛けたのです。」
「ん?そんな所へ…?何をしに行ったんだろうな、マルツェル様は。」
「さぁ…?私も、気になりましたが分かりません。だって、何も無い場所だわ。近くには、バルツァル領があるだけだもの。ねぇ、それにしてもあの方って…。」
「あぁ…あんなんでも一応、国王陛下のご子息だよ。王太子のカシュパル様より三歳下の、十七歳だ。侍従の二人が可哀想なほど手を焼いているみたいだな。……思わぬ時間を食った。さぁ、行こうか。レナータについて行くから、好きに走るといい。」
「本当?ついてこれるの?ふふふ。あ!ねぇレオシュってばさっき、あの口の悪いお方に、魔力を使って下さったの?」
「あぁ、あれは君のイヤリングだろうね。使いたかったが、さすがに陛下のご子息には手は出せないからな。しかし良くやってくれた!」
「そっか、イヤリングが…。ふふ。」
二人は、楽しく会話しながらバルツァル領へと向かった。
そう言って指を差して来たのは、昨日会った三人だった。
「お前、ここに用事があったのか!?俺が直々に案内すると言ったのによ!!」
そう言われ、真ん中の人物が誰なのか分かった途端に顔を顰めていたレナータは、その人物に向かって言った。
「あら、誰かと思ったら昨日お会いした口の悪いお方ね。おあいにく様!あなたに案内されなくても、自分でたどり着けましたわ!ではごきげんよう!」
レナータは、面倒だとさっさと出発したくて早々に切り上げようとして、通り過ぎようとした。
が。
その、口の悪いお方が、レナータの腕を引っ張り、尚も話し掛けてきた。
「おい!俺が話しているのに、勝手に切り上げるな!!これから、王宮に行くから、お前も来い。……いて!!」
バチッ!
「きゃ!……あなた、本当に非常識ね!勝手に女性の腕を引っ張っていいと思っているの!?」
レナータは、いきなり青あざが出来るほどギュッと握られ痛いと叫んだが、すぐに手が離れた。
同時に、グイと引き寄せられた。引き寄せたのはレオシュで、自身が前に立ちレナータを守るように立った。レナータからはレオシュの背中しか見えず顔が見えなかったが、レオシュはマルツェルを物凄い殺気を放って睨みながらも冷静に話し出した。
「マルツェル様。またどこかへお出掛けになられていたのですか?急ぎますので失礼致します。」
「あ?おい!なんで、レオシュが一緒にいるんだ!?お前か!今俺に何かしただろう!不敬罪だ!おい、お前ら!見ただろう?俺の手がこう、バチってよ!」
「え…と、見ましたが、確かにそちらの女性の手に勝手に触れたのはマルツェル様ですし。なぁ、ヨルマ?」
「そうだよな、ヤロ。マルツェル様にも非がございますね。」
「なんだお前ら!俺の味方だろう!?おい、さっさと牢にぶち込めよ!!」
「マルツェル様、私の言葉をお聞きになっていないのですか?急ぎます、と言いました。これ以上私に何か言うのでしたら、職務妨害として、あなた様を牢に入れる事も出来ますよ?私は、魔術師だという事をお忘れなきよう。」
そうレオシュが冷たく低い声で言うと、マルツェルの両隣にいたヤロとヨルマはさっと顔色を青くしてすぐに頭を下げた。
「レオシュ副師団長様、失礼致しました。」
「レオシュ副師団長様、申し訳ありませんでした。」
「「さぁ、マルツェル様、帰りましょう。」」
「はぁ!?おい!俺を誰だと心得る!?お前より地位は上なんだぞ!?…おい、何で引っ張るんだよ!?」
「レオシュ様、申し訳ありません!言い聞かせますので。」
「レオシュ様、本当に申し訳ありません!失礼致しました!!」
そう言って二人は、マルツェルの両腕をがっしりと掴み、引き摺って中へと入って行った。
「はぁ…しかし、レナータはマルツェル様と顔見知りだったんだな。」
「レオシュ様、ありがとうございます。顔見知りというか、昨日、バルツァル領の近くの平原で三人が言い争いをしているのを見掛けたのです。」
「ん?そんな所へ…?何をしに行ったんだろうな、マルツェル様は。」
「さぁ…?私も、気になりましたが分かりません。だって、何も無い場所だわ。近くには、バルツァル領があるだけだもの。ねぇ、それにしてもあの方って…。」
「あぁ…あんなんでも一応、国王陛下のご子息だよ。王太子のカシュパル様より三歳下の、十七歳だ。侍従の二人が可哀想なほど手を焼いているみたいだな。……思わぬ時間を食った。さぁ、行こうか。レナータについて行くから、好きに走るといい。」
「本当?ついてこれるの?ふふふ。あ!ねぇレオシュってばさっき、あの口の悪いお方に、魔力を使って下さったの?」
「あぁ、あれは君のイヤリングだろうね。使いたかったが、さすがに陛下のご子息には手は出せないからな。しかし良くやってくれた!」
「そっか、イヤリングが…。ふふ。」
二人は、楽しく会話しながらバルツァル領へと向かった。
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