【完結】領地の窮地に飛び出した辺境伯令嬢は、魔力はありませんが、やる気は最大限です!

まりぃべる

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5. まずは、食事をいただきます

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 レナータは、レオシュに連れられて魔術師団管轄の建物へと入って行く。


 入り口には、軍服を着た若い二人が立っていて門番だ。

「あ!レオシュ副師団長!お疲れ様です!」

「副師団長!お疲れ様です!」

(ふ、副師団長だったの!?)

 レナータは、そんなすごい人だったのかと慌てて手を繋いでくれているレオシュの顔を仰ぎ見る。

「あぁ、お疲れ。こちらはお客様だからな。今日はここに泊まるから。よろしく頼むよ。」

「「は!」」

 門番の若い二人はレオシュへと敬礼したので、余計にレナータは驚き呟く。

「レオシュ様は、副師団長だったのですね。そんな偉いお方に…ご迷惑お掛けして…。」

「え?あ、そうだね、まだ俺、自分の自己紹介がまだだったね。まずは君をヤーヒム師団長の元へと連れて行くのが先だと思って。じゃあ食事を取りがてら、いいかな?」

 レオシュはそう言って、一階の食堂へと連れて行く。ここは、所属している者がいつでも食べられるように、四六時中開いている。

「済まない、食事を二人分頼む!」

 そうカウンターへと声を掛けたレオシュは、奥まったテーブルに腰掛ける。途中に、水をコップに入れて二つ分取っていた。

「俺は、レオシュ。レオシュ=ベトナジーク。二十二歳だ。ベトナジーク侯爵家の次男ではあるが、家にはもう何年も帰っていない。家は、兄が継ぐ予定であるから、俺はここで自由にやっているよ。」

 と、そうにこやかにレナータへと話した。

「侯爵家の…!」

「あぁ、だからって君も辺境伯のお嬢様だろう?だから、普通に接して欲しい。」

 レナータはそう言われたが、十六歳のレナータからすれば二十二歳は充分に大人の男性であり、ましてや身分が侯爵家と聞き、少し緊張してしまう。

「じゃあそうだなぁ…レナータって呼んでいい?」

「はい。もちろん。」

「良かった!じゃあ俺の事もレオシュって呼んでくれる?」

「はい、レオシュ様。」

「そうじゃなくて、レオシュと。」

「え!?む、無理です!だって、そんな!」

 レナータはそういきなり言われたので、慌てて否定する。が、レオシュは、尚も言った。

「うーん…レナータ。俺の所属する魔術師団は実力主義でね。年齢が下でも、実力さえあれば出世してしまうんだ。だから、俺は二十二という年齢で魔術師団副師団長の肩書きをいただいているよ。そんな俺でも、レナータのが勝っているのがあると思うんだ。なんだと思う?」

「え?そんなの…無いでしょう?」

「あるよ。やる気と、根性かな?令嬢であるのに、バルツァル領からここまで馬で走ってくるのは大変だったと思う。それに、門番にもくってかかっていた。あれには感服するよ。」

「そんな…!ひどいわ!だって、私必死だったのよ。それを…」

「いや、茶化してなんかないよ!尊敬すらしている。俺の知る令嬢は、屋敷の安全な場所でぬくぬくとしている者ばかりだったからね。レナータの必死さは、俺の心を打ったんだよ。領地の事を想う気持ちは、俺よりも勝っている。だから、俺はレナータに負けているんだ。」

「そんなの…。」

「だからさ、俺のささやかな願いをどうか聞いてくれないだろうか?」

「…はい。」

 そこまで言われてしまい、レナータは頷いた。

「やった!じゃあ試しにレオシュと呼んでみて?」

「試し!?…れ、レオシュ…?」

「ありがとう!いいな……やば…!」

 レオシュは少し顔を赤らめながらも端正な顔を緩めて喜んだ。

 レナータも、その顔を見てなんだか気さくで素敵な人だなと思い始めた。


 話している内に、食事が運ばれてきた。

「普段は自分で取りに行くんだけどね、人が少ない時は持ってきてくれるんだ。」

 そう言ったレオシュは、早速食べようと言ってくれる。
鴨肉のローストと、赤キャベツが添えられていて、ハーブの香りがとても良かった。

「良い香り…!」

「ああ。しかも旨いよ。おかわりも出来るからな。」

 そう言われたレナータは食事も摂らずに走って来た為、美味しい味も相まって言われたようにおかわりを二度もしたのだった。
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