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32. 社交パーティー
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今年初めての宮廷での夜会に、クラーラは、ラグンフリズと婚約者という形で初めて参加をする。
ラグンフリズは、クラーラをタウンハウスに迎えに来ていた。
「クラーラ、今日はやっと婚約者と…なって…って…!!」
ラグンフリズは、玄関ホールでクラーラを待っていて、クラーラを見てあまりの美しさに言葉を失った。
「ラグンフリズ様…?」
「何度も見ているでしょう?義兄上?」
クラーラの後ろから、ティムが呆れながら声を掛ける。ティムは、ヘンリクの場合は義兄などとこれっぽっちも認めていなかった。
対して、ラグンフリズはカントリーハウスに弟アスガーと訪ねてきたとき、アスガーと意気投合して結果兄とも認めたのだ。
アスガーは、ティムと二人になった時、ラグンフリズとクラーラが恋人になれたらいいと思っていると伝えた。初め、ティムはそれには最初ヘンリクの事もあり警戒していた。しかし、庭でラグンフリズとクラーラが花を見つめながら嬉しそうに話をしていたのを目の当たりにし、もしかしたらアスガーの言う事も一理あるのかもしれないと思った。
また、ラグンフリズからクラーラへと届いた手紙を読んでいる時の姉を見ると幸せそうだから応援しようと思ったのだ。
しかし、毎回こう、ドレス姿を見る度ラグンフリズのクラーラへの熱い視線を傍で見せられると、応援しているけれども自然と呆れてくるのだ。
「いや…そうなんだが…毎回本当に目がくらむ程綺麗なんだ。仕方ないだろう?義弟よ。」
(知らないよ…弟の俺に言うな…!)
ティムがムッとしながら、姉に言葉を掛ける。
「姉上、確かに目も眩む程綺麗です。さぁ、先に行って下さい。僕も後から両親と一緒に行きますから。」
(さっさと行きなよ…!幸せそうだからいいんだけどさ!)
夜会は、とても煌びやかだ。たくさんの人がいる為に熱気もあり、踊り疲れた人はテラスから外へ出て庭園に出る人もいる。庭園にも、足元にほんのりと灯りがあるので、夜の庭園を楽しんだり、適度に暗い為逢い引きする人もいる。
「さぁ、今日はクラーラが疲れるまで踊るからね。今まで、俺とクラーラが踊ったりエスコートしてるのにも関わらず、果敢にクラーラに誘ってきた奴に見せびらかしてやる!」
「もう!ラグンフリズ様ったら。彼らはきっと、ヘンリクと婚約を白紙にした私を揶揄おうと思って誘ってきてたのですから。」
「いや!違う男の名前を出さないでくれ!俺がクラーラを助けてやると思ったんだけど、間に合わず情けなかったんだから…。」
「え?そうだったのですか?ラグンフリズ様のお手を煩わす所だったのですか?尚更、お父様に調べてもらって良かったですわ。」
「クラーラになら、何をお願いされたって煩わしいと思わないよ!それにしてもさすが義父上だよ。手際が良かったからあんな短時間で調べ上げ、婚約を白紙に戻せたんだろう?俺も、ベントナー家のタウンハウスが売りに出されていたのまでは知っていたんだがなぁ…。」
「そんなに落ち込まないで下さいませ!さぁ、ラグンフリズ様とダンスを踊るのは楽しみだったのですから!」
そう言って、クラーラとラグンフリズはダンスホールへと向かった。
「クラーラは本当に綺麗に踊るよね。ヘンリクと踊っていたのは、一度だけ見たんだけどあいつリードが下手すぎやしないか?クラーラ、よく転ばなかったよね。もう、絶対他の奴には踊らせないけどな!」
「フフフ。ラグンフリズ様って、良い意味で印象が違いますわ。なんだか可愛らしいです。」
「な、何だって?止めてくれよ…でも、クラーラにしか見せないからいっか!」
「そうですか?私も、嫌ではありませんから、そう言われて嬉しいですわ。あぁ、本当にラグンフリズ様は上手くリードして下さるから、以前よりももっとダンスが好きになりました。」
「そう?俺、今までダンスは嫌いだったんだ。何でこんなに密着させて踊るんだって。でも、今はとても楽しいよ。クラーラが俺の手から行ったり来たりして本当に素敵だ。」
クラーラは、ヘンリクとダンスを踊った時には何度も転ばないようにするのに精一杯だったし『ゆっくり踊れるようになればいいから』なんて言われ、凹んでいた。
だが、ラグンフリズとダンスを踊ると、ティムや執事のイエスタと踊った時よりももっと踊りやすくて何度でも踊りたくなってしまう。
ただ昨年まではまだ婚約者では無かった為に、一度踊ったら交代しなければならなかったのでラグンフリズは歯痒い思いをしていたし、クラーラも空気を読まない男性陣からダンスに誘われ苦痛であった。
けれども、今年は婚約者として来ている。何曲踊っていても、誰からもはしたないと言われたりはしない。だからそれが二人共嬉しくて、息が上がるまで何曲も踊っていた。
ラグンフリズは、クラーラをタウンハウスに迎えに来ていた。
「クラーラ、今日はやっと婚約者と…なって…って…!!」
ラグンフリズは、玄関ホールでクラーラを待っていて、クラーラを見てあまりの美しさに言葉を失った。
「ラグンフリズ様…?」
「何度も見ているでしょう?義兄上?」
クラーラの後ろから、ティムが呆れながら声を掛ける。ティムは、ヘンリクの場合は義兄などとこれっぽっちも認めていなかった。
対して、ラグンフリズはカントリーハウスに弟アスガーと訪ねてきたとき、アスガーと意気投合して結果兄とも認めたのだ。
アスガーは、ティムと二人になった時、ラグンフリズとクラーラが恋人になれたらいいと思っていると伝えた。初め、ティムはそれには最初ヘンリクの事もあり警戒していた。しかし、庭でラグンフリズとクラーラが花を見つめながら嬉しそうに話をしていたのを目の当たりにし、もしかしたらアスガーの言う事も一理あるのかもしれないと思った。
また、ラグンフリズからクラーラへと届いた手紙を読んでいる時の姉を見ると幸せそうだから応援しようと思ったのだ。
しかし、毎回こう、ドレス姿を見る度ラグンフリズのクラーラへの熱い視線を傍で見せられると、応援しているけれども自然と呆れてくるのだ。
「いや…そうなんだが…毎回本当に目がくらむ程綺麗なんだ。仕方ないだろう?義弟よ。」
(知らないよ…弟の俺に言うな…!)
ティムがムッとしながら、姉に言葉を掛ける。
「姉上、確かに目も眩む程綺麗です。さぁ、先に行って下さい。僕も後から両親と一緒に行きますから。」
(さっさと行きなよ…!幸せそうだからいいんだけどさ!)
夜会は、とても煌びやかだ。たくさんの人がいる為に熱気もあり、踊り疲れた人はテラスから外へ出て庭園に出る人もいる。庭園にも、足元にほんのりと灯りがあるので、夜の庭園を楽しんだり、適度に暗い為逢い引きする人もいる。
「さぁ、今日はクラーラが疲れるまで踊るからね。今まで、俺とクラーラが踊ったりエスコートしてるのにも関わらず、果敢にクラーラに誘ってきた奴に見せびらかしてやる!」
「もう!ラグンフリズ様ったら。彼らはきっと、ヘンリクと婚約を白紙にした私を揶揄おうと思って誘ってきてたのですから。」
「いや!違う男の名前を出さないでくれ!俺がクラーラを助けてやると思ったんだけど、間に合わず情けなかったんだから…。」
「え?そうだったのですか?ラグンフリズ様のお手を煩わす所だったのですか?尚更、お父様に調べてもらって良かったですわ。」
「クラーラになら、何をお願いされたって煩わしいと思わないよ!それにしてもさすが義父上だよ。手際が良かったからあんな短時間で調べ上げ、婚約を白紙に戻せたんだろう?俺も、ベントナー家のタウンハウスが売りに出されていたのまでは知っていたんだがなぁ…。」
「そんなに落ち込まないで下さいませ!さぁ、ラグンフリズ様とダンスを踊るのは楽しみだったのですから!」
そう言って、クラーラとラグンフリズはダンスホールへと向かった。
「クラーラは本当に綺麗に踊るよね。ヘンリクと踊っていたのは、一度だけ見たんだけどあいつリードが下手すぎやしないか?クラーラ、よく転ばなかったよね。もう、絶対他の奴には踊らせないけどな!」
「フフフ。ラグンフリズ様って、良い意味で印象が違いますわ。なんだか可愛らしいです。」
「な、何だって?止めてくれよ…でも、クラーラにしか見せないからいっか!」
「そうですか?私も、嫌ではありませんから、そう言われて嬉しいですわ。あぁ、本当にラグンフリズ様は上手くリードして下さるから、以前よりももっとダンスが好きになりました。」
「そう?俺、今までダンスは嫌いだったんだ。何でこんなに密着させて踊るんだって。でも、今はとても楽しいよ。クラーラが俺の手から行ったり来たりして本当に素敵だ。」
クラーラは、ヘンリクとダンスを踊った時には何度も転ばないようにするのに精一杯だったし『ゆっくり踊れるようになればいいから』なんて言われ、凹んでいた。
だが、ラグンフリズとダンスを踊ると、ティムや執事のイエスタと踊った時よりももっと踊りやすくて何度でも踊りたくなってしまう。
ただ昨年まではまだ婚約者では無かった為に、一度踊ったら交代しなければならなかったのでラグンフリズは歯痒い思いをしていたし、クラーラも空気を読まない男性陣からダンスに誘われ苦痛であった。
けれども、今年は婚約者として来ている。何曲踊っていても、誰からもはしたないと言われたりはしない。だからそれが二人共嬉しくて、息が上がるまで何曲も踊っていた。
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