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16. フォントリアー侯爵家
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ラグンフリズの家族がいるフォントリアー侯爵領は、西側が海に面していて、東側が険しい山々が連なっている。
それを越えると、隣はマグヌッセン領で、このニュークビンアース国で使っていない人などいないのではないかと思うほど有名な、さまざまな大きさの透き通るような海の青さのような陶器を作っている領地だ。
ラグンフリズの父はモウリッツと言う。
彼は海運業を営んでいて、近隣諸国にさまざまな物を輸出入して利益を得ている。
モウリッツも学院では優秀な成績を収め、同級のフグレイク国王陛下から宮廷で働いて欲しいとも言われていたが、侯爵領主としての仕事もだが家業の海運業に精を出さなければと、その誘いを断り経営を続けている。
その代わり、近隣諸国から届いた珍しい物や情報も宮廷に届けており、外から王家や、この国を支えているのだ。フォントリアー領主のおかげで、この国は他国の物が手に入り、また他国へと物を運んでもらえる。
ラグンフリズは、父親から次期侯爵として幼い頃より英才教育を受けていた。海運業は、外国との付き合いなので勉強も多岐に渡る。
モウリッツは侯爵であるが自らも買い付けに行っており、ラグンフリズは幼い頃より一緒にその船に乗り他国へもついて行っていた。その為、海を越えた先にはさまざまな人がいて、いろんな考え方を持っている人がいるんだと実感して学んでいた。
他国に行った際、仕事の邪魔にならないようにと港近くの空いた場所で一人でボールで遊んでいた。
すると、その土地の子供達も少しずつ寄ってきて、いつの間にか一緒になって遊んでいた。スポーツや遊びに国境はないのだと、ラグンフリズは身をもって感じていた。
ラグンフリズには、二歳下の弟アスガーがいる。生まれた頃より体が弱く、何かあればすぐに熱を出していた。
その為、ラグンフリズのように船に乗って異国へ行った事は一度も無く、いつも領地の屋敷にいた。
ラグンフリズや他の者が屋敷から出掛けるのを、いつも部屋の窓から羨ましそうに見ていた。
そんなアスガーが、体が大きくなってくると熱を出す頻度も減ってきて、今度は医者に『体力をつけなさい』と言われ始めた。だが無理をするとすぐに熱が出てしまう為、領地をゆっくり歩く事から始めた。
だんだんと体力が付いてきて、自信がついてきたのだろう。アスガーは『宮都へ行きたい』と言い出した。
宮都へは、険しい山を越えないといけない。
馬車が通る道は迂回をしなければならなず、日数が掛かる。その代わり馬だと細い道にも入って行ける為日数は短くて済む。
どのような行程にしようか医師とも幾度となく相談し、アスガーの気持ちも考慮し馬に乗る練習をする事になった。
そしてどうにかお忍びではあるが宮都へ行けるようになった日。
宮都で、道に迷い不安になって少し走って護衛を探していた時、男の人にぶつかった。ーーーヘンリクだ。
ぶつかった奴は大層不遜で、曲がりなりにも好きになれる奴ではなかったと、探し回っていた従僕や護衛に息巻いていた。
その代わり、一緒にいた女性は可哀想な程奴に腕を引っ張られていたと悲しそうに言った。
「ハンカチを手渡してくれた手、ふるえていたんだ。きっと、奴の事が怖かったんだよ!」
よくよく聞けば、同じクラスのクラーラ=マグヌッセンかもしれないとラグンフリズは、頭によぎった。
今年の社交の始まりのガーデンパーティーやその後の集まりでも、確かに、連れの奴に振り回されていたな、と思い出した。そして、彼女は奴になかなか離してもらえず、絶えず作り笑いをしていたのを不憫だと覚えていたのだ。
それに、弟があんなにも感情を剥き出しにするのは珍しいと思った。何事も諦めたような顔つきであったから、弟に声を掛けた。
「そんなに気になったのか。」
「うん。そりゃ、僕だって貴族の紳士だだからね。女性に優しく、って僕だって教わっているのに。あぁ、あんな女性が兄さんの彼女だったらなぁ!怪我をした僕にとても優しく声を掛けてくれたんだから!」
(彼女!?いきなり何を言い出すのかと思えば…!)
ラグンフリズは珍しく動揺した。
常日頃から侯爵家の人間として、次期侯爵家当主として。そして、海運業のトップとして表情を顔に見せないよう叩き込まれていたのにだ。
ラグンフリズは、莫大な財を成しているフォントリアー侯爵令息でしかも、顔も整っている為、幼い頃より女性にチヤホヤとされ、中には迫ってくる強引な女性もいた。
その為というか、まだ侯爵家を切り盛りする妻となる婚約者はいまだ決まっていない。他国からも打診はあるが、ラグンフリズが首を縦に振らなかったのだ。父であるモウリッツもまだまだ現役な為、ラグンフリズの好きにしろと言われていた。
(確かに、彼女は魅力的な女性だとは思う。だが、もう婚約者がいるのだ。確か、ヘンリク=ベントナー。…ベントナー?あれ?まてよ…。)
ヘンリクとはクラスが隣の為、直接話をする機会はあまりなかった。社交の場でも、ヘンリクとはタイプが違った為、付き合いが無かった。
それにベントナーという家名を思い出した所で、そういえば最近何かでその名前を見かけたなと思い出し、どこだったかと考え始めた。
それを越えると、隣はマグヌッセン領で、このニュークビンアース国で使っていない人などいないのではないかと思うほど有名な、さまざまな大きさの透き通るような海の青さのような陶器を作っている領地だ。
ラグンフリズの父はモウリッツと言う。
彼は海運業を営んでいて、近隣諸国にさまざまな物を輸出入して利益を得ている。
モウリッツも学院では優秀な成績を収め、同級のフグレイク国王陛下から宮廷で働いて欲しいとも言われていたが、侯爵領主としての仕事もだが家業の海運業に精を出さなければと、その誘いを断り経営を続けている。
その代わり、近隣諸国から届いた珍しい物や情報も宮廷に届けており、外から王家や、この国を支えているのだ。フォントリアー領主のおかげで、この国は他国の物が手に入り、また他国へと物を運んでもらえる。
ラグンフリズは、父親から次期侯爵として幼い頃より英才教育を受けていた。海運業は、外国との付き合いなので勉強も多岐に渡る。
モウリッツは侯爵であるが自らも買い付けに行っており、ラグンフリズは幼い頃より一緒にその船に乗り他国へもついて行っていた。その為、海を越えた先にはさまざまな人がいて、いろんな考え方を持っている人がいるんだと実感して学んでいた。
他国に行った際、仕事の邪魔にならないようにと港近くの空いた場所で一人でボールで遊んでいた。
すると、その土地の子供達も少しずつ寄ってきて、いつの間にか一緒になって遊んでいた。スポーツや遊びに国境はないのだと、ラグンフリズは身をもって感じていた。
ラグンフリズには、二歳下の弟アスガーがいる。生まれた頃より体が弱く、何かあればすぐに熱を出していた。
その為、ラグンフリズのように船に乗って異国へ行った事は一度も無く、いつも領地の屋敷にいた。
ラグンフリズや他の者が屋敷から出掛けるのを、いつも部屋の窓から羨ましそうに見ていた。
そんなアスガーが、体が大きくなってくると熱を出す頻度も減ってきて、今度は医者に『体力をつけなさい』と言われ始めた。だが無理をするとすぐに熱が出てしまう為、領地をゆっくり歩く事から始めた。
だんだんと体力が付いてきて、自信がついてきたのだろう。アスガーは『宮都へ行きたい』と言い出した。
宮都へは、険しい山を越えないといけない。
馬車が通る道は迂回をしなければならなず、日数が掛かる。その代わり馬だと細い道にも入って行ける為日数は短くて済む。
どのような行程にしようか医師とも幾度となく相談し、アスガーの気持ちも考慮し馬に乗る練習をする事になった。
そしてどうにかお忍びではあるが宮都へ行けるようになった日。
宮都で、道に迷い不安になって少し走って護衛を探していた時、男の人にぶつかった。ーーーヘンリクだ。
ぶつかった奴は大層不遜で、曲がりなりにも好きになれる奴ではなかったと、探し回っていた従僕や護衛に息巻いていた。
その代わり、一緒にいた女性は可哀想な程奴に腕を引っ張られていたと悲しそうに言った。
「ハンカチを手渡してくれた手、ふるえていたんだ。きっと、奴の事が怖かったんだよ!」
よくよく聞けば、同じクラスのクラーラ=マグヌッセンかもしれないとラグンフリズは、頭によぎった。
今年の社交の始まりのガーデンパーティーやその後の集まりでも、確かに、連れの奴に振り回されていたな、と思い出した。そして、彼女は奴になかなか離してもらえず、絶えず作り笑いをしていたのを不憫だと覚えていたのだ。
それに、弟があんなにも感情を剥き出しにするのは珍しいと思った。何事も諦めたような顔つきであったから、弟に声を掛けた。
「そんなに気になったのか。」
「うん。そりゃ、僕だって貴族の紳士だだからね。女性に優しく、って僕だって教わっているのに。あぁ、あんな女性が兄さんの彼女だったらなぁ!怪我をした僕にとても優しく声を掛けてくれたんだから!」
(彼女!?いきなり何を言い出すのかと思えば…!)
ラグンフリズは珍しく動揺した。
常日頃から侯爵家の人間として、次期侯爵家当主として。そして、海運業のトップとして表情を顔に見せないよう叩き込まれていたのにだ。
ラグンフリズは、莫大な財を成しているフォントリアー侯爵令息でしかも、顔も整っている為、幼い頃より女性にチヤホヤとされ、中には迫ってくる強引な女性もいた。
その為というか、まだ侯爵家を切り盛りする妻となる婚約者はいまだ決まっていない。他国からも打診はあるが、ラグンフリズが首を縦に振らなかったのだ。父であるモウリッツもまだまだ現役な為、ラグンフリズの好きにしろと言われていた。
(確かに、彼女は魅力的な女性だとは思う。だが、もう婚約者がいるのだ。確か、ヘンリク=ベントナー。…ベントナー?あれ?まてよ…。)
ヘンリクとはクラスが隣の為、直接話をする機会はあまりなかった。社交の場でも、ヘンリクとはタイプが違った為、付き合いが無かった。
それにベントナーという家名を思い出した所で、そういえば最近何かでその名前を見かけたなと思い出し、どこだったかと考え始めた。
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