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9. 青い髪の女
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シャーロテとクラーラは学院に馬車で通学している為、寮の事は分からない。
が、少し時期が遅れて学院に入学して来た青い髪の女子生徒が、寮でも話題になっている。
その寮はたいていはタウンハウスを所有していない貴族や、商家の子や庶民が入寮する。寮は男子寮と女子寮に別れていて、間に娯楽室があり消灯時間までは誰でも利用出来る。
その女子生徒も寮から通っているのだが、皆がよく使う娯楽室ではなく男子寮の裏庭でよく複数の男子生徒と一緒にいるのだ。
シャーロテも昨日、婚約者がいる女子生徒に、その青い髪の女子生徒の事を聞かされた。自分の婚約者が、青い髪の女子生徒に話しかけられて鼻を伸ばしている、と。
「あの子が…」
「シャーロテ、どうなさったの?」
「いえね、あちらにあの澄み切った青空のような髪色の子がいるでしょう?」
シャーロテがそう言ったので、クラーラもそちらを見やると、なぜか男の子達に囲まれている女子の制服が見えた。隙間から辛うじて青色の髪が見えるから、その子の事だろうとクラーラは思った。
「あの囲まれている方?」
「そう。あの子、隣のクラスに最近私達よりも時期が遅れて入学してきたらしくて。大きなくりくりとした瞳と、あの目立つような髪色で、男の子達が釘付けなのだそうよ。」
隣のクラスに入学の時期から二カ月ほどずれて通い始めた彼女は、男子生徒がこぞって手を差し伸べてしまうほど可愛いと噂だ。容姿だけではなく、どうやら『私、皆さんより入学が少し遅かったから勝手がわからないの。教えて下さいます?』と片っ端から男子生徒に話し掛けているそうだ。お陰で、女子生徒はいい顔をしていない。
しかも、婚約者がいる男子生徒にも話し掛けている。基本的に、婚約者がいる異性には少し距離を置いて話すのが礼儀だ。なのに彼女は、お構いなしに自身の腕を相手の腕に絡めて話し掛ける。話し掛けられた生徒も、鼻の下を伸ばして対応しているらしくそれが余計に女子生徒の気に触るのだ。
「名前、マルグレーテ=ラスムセンというのですって。最近男爵家に養子に入ったらしいわ。」
シャーロテは、昨日聞いた情報をクラーラに教えた。シャーロテがあまりにも顔を歪めていうものだから、嫌な目に遭ったのかと思ってクラーラは聞いてみた。
「知らなかったわ。最近養子に入ったの?シャーロテも、その…嫌な目に遭ったの?」
「え?私は特に。クラスメイトが話してくれたのよ。でも、クラーラは婚約者がいるでしょう?だから気をつけないとダメよ?私にはまだ婚約者はいないから、変わった事しているわとしか思わないけれど。婚約者に近づかれたら、嫌でしょう?何かあったら、言ってちょうだいね。力になるわ。」
そう言ったシャーロテに、クラーラは心強く感じた。
「シャーロテ、そう言ってくれてありがとう。でも、彼に限ってはきっと無いわ。私に、優しい言葉をくれるのよ。」
「…そう。私、あの男は嫌いよ。何だか鼻につくのよね。でも、クラーラが幸せならそれでいいの。だけど、男なんてみんなコロッと騙されるんだから、気をつけなさい。」
「ふふふ、気遣ってくれてありがとう。でも、コロッと騙されるなんて…」
「だって、いつもあの子男子生徒に囲まれているっていうのよ?騙される男子が多いって事でしょ?ま、そうじゃない誠実な人もいるとは思うけれどね。」
「そう言う人が結婚相手だといいわね。」
「あら、私は、自分の生活が脅かされなければどうでもいいけれどね。」
「シャーロテ…。」
「ごめんなさい、なんか私の話は暗くなるわね。さ、遅刻するといけないわ、行きましょ!」
シャーロテは気分を変えるようにつとめて明るく言って、クラーラの手を引っ張り、教室へと向かった。
が、少し時期が遅れて学院に入学して来た青い髪の女子生徒が、寮でも話題になっている。
その寮はたいていはタウンハウスを所有していない貴族や、商家の子や庶民が入寮する。寮は男子寮と女子寮に別れていて、間に娯楽室があり消灯時間までは誰でも利用出来る。
その女子生徒も寮から通っているのだが、皆がよく使う娯楽室ではなく男子寮の裏庭でよく複数の男子生徒と一緒にいるのだ。
シャーロテも昨日、婚約者がいる女子生徒に、その青い髪の女子生徒の事を聞かされた。自分の婚約者が、青い髪の女子生徒に話しかけられて鼻を伸ばしている、と。
「あの子が…」
「シャーロテ、どうなさったの?」
「いえね、あちらにあの澄み切った青空のような髪色の子がいるでしょう?」
シャーロテがそう言ったので、クラーラもそちらを見やると、なぜか男の子達に囲まれている女子の制服が見えた。隙間から辛うじて青色の髪が見えるから、その子の事だろうとクラーラは思った。
「あの囲まれている方?」
「そう。あの子、隣のクラスに最近私達よりも時期が遅れて入学してきたらしくて。大きなくりくりとした瞳と、あの目立つような髪色で、男の子達が釘付けなのだそうよ。」
隣のクラスに入学の時期から二カ月ほどずれて通い始めた彼女は、男子生徒がこぞって手を差し伸べてしまうほど可愛いと噂だ。容姿だけではなく、どうやら『私、皆さんより入学が少し遅かったから勝手がわからないの。教えて下さいます?』と片っ端から男子生徒に話し掛けているそうだ。お陰で、女子生徒はいい顔をしていない。
しかも、婚約者がいる男子生徒にも話し掛けている。基本的に、婚約者がいる異性には少し距離を置いて話すのが礼儀だ。なのに彼女は、お構いなしに自身の腕を相手の腕に絡めて話し掛ける。話し掛けられた生徒も、鼻の下を伸ばして対応しているらしくそれが余計に女子生徒の気に触るのだ。
「名前、マルグレーテ=ラスムセンというのですって。最近男爵家に養子に入ったらしいわ。」
シャーロテは、昨日聞いた情報をクラーラに教えた。シャーロテがあまりにも顔を歪めていうものだから、嫌な目に遭ったのかと思ってクラーラは聞いてみた。
「知らなかったわ。最近養子に入ったの?シャーロテも、その…嫌な目に遭ったの?」
「え?私は特に。クラスメイトが話してくれたのよ。でも、クラーラは婚約者がいるでしょう?だから気をつけないとダメよ?私にはまだ婚約者はいないから、変わった事しているわとしか思わないけれど。婚約者に近づかれたら、嫌でしょう?何かあったら、言ってちょうだいね。力になるわ。」
そう言ったシャーロテに、クラーラは心強く感じた。
「シャーロテ、そう言ってくれてありがとう。でも、彼に限ってはきっと無いわ。私に、優しい言葉をくれるのよ。」
「…そう。私、あの男は嫌いよ。何だか鼻につくのよね。でも、クラーラが幸せならそれでいいの。だけど、男なんてみんなコロッと騙されるんだから、気をつけなさい。」
「ふふふ、気遣ってくれてありがとう。でも、コロッと騙されるなんて…」
「だって、いつもあの子男子生徒に囲まれているっていうのよ?騙される男子が多いって事でしょ?ま、そうじゃない誠実な人もいるとは思うけれどね。」
「そう言う人が結婚相手だといいわね。」
「あら、私は、自分の生活が脅かされなければどうでもいいけれどね。」
「シャーロテ…。」
「ごめんなさい、なんか私の話は暗くなるわね。さ、遅刻するといけないわ、行きましょ!」
シャーロテは気分を変えるようにつとめて明るく言って、クラーラの手を引っ張り、教室へと向かった。
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