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10. 婚約者への気持ち
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「痛っ!!おい!誰だ!?僕を誰だと思っている!?怪我をしたらどうしてくれるんだ!!」
学院に通い始めて三ヶ月ほどが経った。
ヘンリクから、たまには街にデートに行こうと誘われ、クラーラは馬車で寮へ向かった。
最近出来た、デニッシュの店へと案内してくれるのだと。
宮都の端に学院はあるのでそこで馬車は待たせ、そこから中心街へとヘンリクとクラーラが歩いていた時、路地から走って来た濃い茶髪の男の子がヘンリクにぶつかってよろけ、横向きに倒れてしまったのだ。
クラーラは、ヘンリクのその発言に驚きつつも、その男の子が倒れた時に頭を打たなくてよかったと思って、その子に近寄って声を掛けた。その子の年齢は、クラーラの二歳下の弟と同じくらいだろうかと思ったから余計に手を差し伸べたのだ。
「大丈夫?頭を打たなくてよかったわ。立てる?」
「うん…。」
そう言って、クラーラは、男の子が立ち上がるのを手助けする。
ヘンリクはそれを見て、クラーラの腕を引っ張った。
「クラーラ、なんて君は心が清らかなんだ!こんな庶民にまで気を配るなんて本当に優しい心の持ち主だね。でも、庶民に手を貸すなんて止めなよ。ほら、行こう!」
ヘンリクに後ろへと更にグイっと引っ張られ、クラーラは躓きそうになるが何とか耐え、立ち上がった男の子にハンカチを手渡した。膝までのズボンが薄汚れ、少しだけ破けてしまっていた。肘までの長さのシャツも汚れ、肘から血が出て怪我をしていたのだ。
「ごめんなさい。行かなくては。これで、止血をして?あ、水で洗ってからよ?お大事にしてね。」
少し早足で歩いていたヘンリクに、痛い、と言えばスッと立ち止まってクラーラを振り返った。
「あぁ、また僕は早足になってしまっていたかい?ごめんよ。クラーラは僕より背が低いから足の長さも違うのに。え?腕?痛かった?済まない…大丈夫だろうか。」
と言ってヘンリクは今まで握っていたクラーラの腕をさすり始めた。
クラーラは、婚約者はいつも自分に優しく接してくれていたから他の人にも優しい性格だと今までは思っていたのだが、街にいる小さな子供に怒鳴っていたから酷く驚いていた。まだ、自分の身長の半分ほどの背の高さの子どもだったのに。それに、ヘンリクも妹と弟がいると言っていた。自分の弟や妹と同じくらいではないのか。そんな子に、恫喝するように接するなんてと驚いたのだ。
そして、今まではヘンリクにエスコートされていてもそれが普通だと思って何も感じていなかったのだが、今、腕をさすられているその手をなぜだか離して欲しいと思ってしまった。
クラーラは、初めての宮廷のガーデンパーティーの時は、家族と離れて婚約者と居なくてはいけないと緊張していたからヘンリクにエスコートされた時にドキドキしたのだと今、なぜだか唐突に思ってしまった。
しかし、今からは婚約者とせっかくの宮都でのデート。それが分かった所で何も変わらないし、彼もきっと驚き苛立っていただけなのだわ、と思う事にして、デートを楽しもうとヘンリクがさすっている腕をやんわりと離し、行きましょうと促した。
学院に通い始めて三ヶ月ほどが経った。
ヘンリクから、たまには街にデートに行こうと誘われ、クラーラは馬車で寮へ向かった。
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「うん…。」
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「クラーラ、なんて君は心が清らかなんだ!こんな庶民にまで気を配るなんて本当に優しい心の持ち主だね。でも、庶民に手を貸すなんて止めなよ。ほら、行こう!」
ヘンリクに後ろへと更にグイっと引っ張られ、クラーラは躓きそうになるが何とか耐え、立ち上がった男の子にハンカチを手渡した。膝までのズボンが薄汚れ、少しだけ破けてしまっていた。肘までの長さのシャツも汚れ、肘から血が出て怪我をしていたのだ。
「ごめんなさい。行かなくては。これで、止血をして?あ、水で洗ってからよ?お大事にしてね。」
少し早足で歩いていたヘンリクに、痛い、と言えばスッと立ち止まってクラーラを振り返った。
「あぁ、また僕は早足になってしまっていたかい?ごめんよ。クラーラは僕より背が低いから足の長さも違うのに。え?腕?痛かった?済まない…大丈夫だろうか。」
と言ってヘンリクは今まで握っていたクラーラの腕をさすり始めた。
クラーラは、婚約者はいつも自分に優しく接してくれていたから他の人にも優しい性格だと今までは思っていたのだが、街にいる小さな子供に怒鳴っていたから酷く驚いていた。まだ、自分の身長の半分ほどの背の高さの子どもだったのに。それに、ヘンリクも妹と弟がいると言っていた。自分の弟や妹と同じくらいではないのか。そんな子に、恫喝するように接するなんてと驚いたのだ。
そして、今まではヘンリクにエスコートされていてもそれが普通だと思って何も感じていなかったのだが、今、腕をさすられているその手をなぜだか離して欲しいと思ってしまった。
クラーラは、初めての宮廷のガーデンパーティーの時は、家族と離れて婚約者と居なくてはいけないと緊張していたからヘンリクにエスコートされた時にドキドキしたのだと今、なぜだか唐突に思ってしまった。
しかし、今からは婚約者とせっかくの宮都でのデート。それが分かった所で何も変わらないし、彼もきっと驚き苛立っていただけなのだわ、と思う事にして、デートを楽しもうとヘンリクがさすっている腕をやんわりと離し、行きましょうと促した。
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