【完結】フィリアの見聞録〜どんな時でも楽しまないとね!だって私にはペンダントがあるもの〜

まりぃべる

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レクラス視点 4 義母の事

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あと、3週間ほどで父上から義兄上に権力が譲られる。そして義兄上は20歳で国王となる。


メフィス側妃は、あれから隣国バルグェン国の宝石商を部屋に入れてないみたいだ。だが油断は禁物なので、あまり気は進まないが、集音貝を側妃の部屋に忍ばせる事にした。
手間ではあるが毎朝回収して、ニックに確認してもらっている。

集音貝とは、特殊な貝殻だ。貝が開いている間音を集めて保存しておく事が出来る。そんなに広い場所は無理だが部屋一つ位なら容易い。
二枚の貝を閉じるとそれまで開いていた間の音がしまわれ、開ければ何度でも聞ける。
一度使ってしまうと上書きは出来ないが、集音貝が採れる海の水で洗えばまた復活して保存できるという優れ物。

使い方としたら、海の中で全体をよく洗い、貝殻の外側が海水に触れている状態で2枚合わせて閉じる。貝殻の内側は海水面から出して、閉じるという事だ。そうする事で、海水が殻の内側に入らない。そして音を保存したい時に貝殻を開く。保存が終わったら貝殻を閉じる。という感じだ。

集音貝はこの国の南の、海に面した砂浜で採れる。たくさん貝殻を取って来させたから、毎日確認している。
本当は私生活がダダ漏れになるからこれを使うのは嫌なんだが、この際仕方ない。

バルグェン国が行動を起こすとしたら、義兄上が即位式の日だろうからだ。


今も忙しいが即位したらもっと忙しくなる。今度は、国王になった義兄上の妻を誰にするかが議題に上がるだろう。
側妃があんなきな臭い人物だから、義兄上はまだ婚約者もいない。その女性に何かあっても困るから。義兄上はそういう所、本当に優しい。
候補はいるだろうが、まだ選ばないだろう。




「レクラス!」
そう言って、俺の第三騎士団長室の扉を開けて入ってきたニック。こいつは、学生の頃同じクラスでもあったから、気安い仲だ。公の場以外では家族のように接しているが、どうしたのかそうとう焦っているな。

「どうかしたか?」
俺は、机の上の書類に目を通しながら聞いた。

「ヤバいのが出たよ。今聞くか?どうする?」
そう言って、集音貝を持ってきた。

そう言われると聞きたくなる。だが、書類は山積みだ。
「夜まで待てないか?」
「わかった。」
「それまでよろしく頼むよ。」
と俺は言って、絶対に無くすなよ、という視線を送った。



夜になり、ニックは俺の部屋へ来た。ニックが俺の部屋に来るのはいつもの事。だから怪しまれる事はまず無いだろう。

「これ、証拠にならないかなー。」
早速、ニックは懐から布に包んだ集音貝を出して言った。

「聞かせてくれ。もう待ちくたびれたよ。」

ーーーーー
『あと3週間足らずね。』
『どうされました?』
『ふふふ。なんでもないのよ。ただ、楽しい事が起こるの。』
『それは楽しみですね。あ!即位式ですか?楽しみですよね。』
『は?…ああ。そんなのももうすぐだったわね。でもそれはもういいのよ。…あなた実家はどこの出?』
『私は伯爵家ですが、次女ですので、家には帰れません。なのでこちらで一生生活出来ればと思っています。』
『あら、そうなの。残念ね。もう実家には帰れないのねぇ。でも、ここに骨を埋めるのは止めた方が良いわよ。というか、もうすぐ戦争が始まるのよ。だから、この国はどうなるのかしらね。ふふふふ…。』
『戦争!?メ、メフィス様ご冗談を…。』
『さあ?どうかしらね。戦争が始まったら、怖いからここには居ない方がいいものねぇ。私も実家はもうないけれど、戦争が始まったら恐ろしいからここから逃げるわね。ふふふ…。』
『この王宮内は普段と変わらないので全く知りませんでした。メフィス様はよくご存じですね。』
『ええ、まぁね。だから、あなたもその時はどこかへお逃げなさい。』
『教えて頂きありがとうございます。…出来ました。この髪型でよろしいですか?』
『ええ。ありがとう。』
ーーーーー


「これだけか?」
聞いて、戦争の話をなぜしたのかは不明だが、もっと具体的に話してくれていたら良かったのに。

「…やっぱ、これだけじゃ弱い?」
「戦争って言葉を出すのは、何か知っているのかと思うが、具体的な話が出てきていないからな。しらばっくれられたらそれまでだな。」
「確かにな…。」
「ま、でもこれも十分証拠として取っておこう。ありがとう。」
そういって、俺はニックから集音貝をもらい、机の引き出しから出したオークの葉に乗せ、再びしまった。
この葉は、手のひらより少し大きく、ここに乗せたものはなぜか見えなくなる。だから大事な物を隠しておくのにちょうどいいのだ。

「は-。即位式まであと少し。それまでに一掃させたいな。」
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