23 / 34
レクラス視点 8 フィリア
しおりを挟む
フィリアが旧アルフェンス国の王女だったとは…。
初めて会ったときから懐かしい感じがしたんだ。母上の祖国もアルフェンス国だったから、通ずるものがあったのかもしれない。
母上は、旧アルフェンス国王の妹だったからな。皆が生きていれば、家族ぐるみで会っていたかもしれない…。
母上が遠い昔、アルフェンス国が滅ぼされた時、王女の行方をひっそりと探していた。それが、教会の孤児院にいたなんて。生きていてよかったけれど、母上は『せめて姪である王女だけでも生きていてくれたら…』と言っていた。会わせてやりたかったな…。
フィリアの力になってやりたい。そう思うのは、どんな気持ちからなのか。自分でも、はっきりしない。
だが国境近くで爆発音がした時も気が気じゃなくて無意識の内にフィリアの元へ走り出していた。
俺はどうしたらいいんだろう。今まで、血は繋がらなくとも義兄上が国王になって、その手助けが出来ればと思っていた。
…でも、違う未来があるのかもしれない。
フィリアがもし、国を建て直すのなら、俺も傍にいてはだめだろうか。
ニックもいてくれたら心強いが、そこまで望んではいけないだろうな。
フィリアに、明日また会いに行こう。
…だがこれで、最後になるかもしれないな。
明後日は即位式。
義兄上を見たいが、国境近くで備えておかねばならない。騎士団の第四部隊と第五部隊が国境警備に行くが、第三部隊の俺もきっと駆り出されるかもしれない。
戦争さえ起きなければ、フィリアの元にずっといられるのにな。
☆★☆★☆★
ニックと共に教会に着くと、洗濯物を干しているフィリアを見つけた。
「フィリア!」
「あら!また来てくれたの?でもせっかくだけどもう騎士団に入れそうな子はいないわよ。」
と、フィリアに言われてしまった。
「はは!フィリアちゃん。こいつは君に会いに来たんだよ。」
「え!?そうだったの?レクラスさんなんでまた…。」
「すぐに来れなくてごめん。立て込んでたんだ。フィリアは、アルフェンス国をどうしたい?ユリエルについていくの?」
「んー…迷ってるの。でも実感はないけれど、王族の私が生きている事が心の支えになっているのなら、力になってあげたいとは思うわ。」
そうだろうな。フィリアは、いつだって自分より人のために動いていた。
「ここをいつ去るとか決めているのか?」
「そんな…分からない。」
「フィリア。あなたは十分ここで頑張ってくれました。」
そう声がしたのでフィリアが後ろを振り返ると、シスターが立っていた。
「あなたがここに来たときの事を今でも覚えていますよ。ユリエル様が涙ながらに語ってくれ、あなたが立派な大人になるまでここに置いて欲しいと。旅立ちが今なら、行くべきです。今まで、ありがとうフィリア。ここは本当のあなたの居場所ではありません。求められるべき所に帰りなさい。」
シスターはそう言って、フィリアを抱き締めた。
「シスター!だけど!私がいなくて大丈夫なんですか?」
「あら。私は本当は料理が上手なのよ。最近やってないから腕が鈍ってるかもしれないけれど。メルサも良くやってくれるわ。他の子もいるし全然大丈夫よ。いってらっしゃい。」
そう言われ、目に涙を溜めていたフィリアは吹っ切れた様子だ。
「明日、ユリエルおじさまが来る予定なの。そこで話すわ。」
初めて会ったときから懐かしい感じがしたんだ。母上の祖国もアルフェンス国だったから、通ずるものがあったのかもしれない。
母上は、旧アルフェンス国王の妹だったからな。皆が生きていれば、家族ぐるみで会っていたかもしれない…。
母上が遠い昔、アルフェンス国が滅ぼされた時、王女の行方をひっそりと探していた。それが、教会の孤児院にいたなんて。生きていてよかったけれど、母上は『せめて姪である王女だけでも生きていてくれたら…』と言っていた。会わせてやりたかったな…。
フィリアの力になってやりたい。そう思うのは、どんな気持ちからなのか。自分でも、はっきりしない。
だが国境近くで爆発音がした時も気が気じゃなくて無意識の内にフィリアの元へ走り出していた。
俺はどうしたらいいんだろう。今まで、血は繋がらなくとも義兄上が国王になって、その手助けが出来ればと思っていた。
…でも、違う未来があるのかもしれない。
フィリアがもし、国を建て直すのなら、俺も傍にいてはだめだろうか。
ニックもいてくれたら心強いが、そこまで望んではいけないだろうな。
フィリアに、明日また会いに行こう。
…だがこれで、最後になるかもしれないな。
明後日は即位式。
義兄上を見たいが、国境近くで備えておかねばならない。騎士団の第四部隊と第五部隊が国境警備に行くが、第三部隊の俺もきっと駆り出されるかもしれない。
戦争さえ起きなければ、フィリアの元にずっといられるのにな。
☆★☆★☆★
ニックと共に教会に着くと、洗濯物を干しているフィリアを見つけた。
「フィリア!」
「あら!また来てくれたの?でもせっかくだけどもう騎士団に入れそうな子はいないわよ。」
と、フィリアに言われてしまった。
「はは!フィリアちゃん。こいつは君に会いに来たんだよ。」
「え!?そうだったの?レクラスさんなんでまた…。」
「すぐに来れなくてごめん。立て込んでたんだ。フィリアは、アルフェンス国をどうしたい?ユリエルについていくの?」
「んー…迷ってるの。でも実感はないけれど、王族の私が生きている事が心の支えになっているのなら、力になってあげたいとは思うわ。」
そうだろうな。フィリアは、いつだって自分より人のために動いていた。
「ここをいつ去るとか決めているのか?」
「そんな…分からない。」
「フィリア。あなたは十分ここで頑張ってくれました。」
そう声がしたのでフィリアが後ろを振り返ると、シスターが立っていた。
「あなたがここに来たときの事を今でも覚えていますよ。ユリエル様が涙ながらに語ってくれ、あなたが立派な大人になるまでここに置いて欲しいと。旅立ちが今なら、行くべきです。今まで、ありがとうフィリア。ここは本当のあなたの居場所ではありません。求められるべき所に帰りなさい。」
シスターはそう言って、フィリアを抱き締めた。
「シスター!だけど!私がいなくて大丈夫なんですか?」
「あら。私は本当は料理が上手なのよ。最近やってないから腕が鈍ってるかもしれないけれど。メルサも良くやってくれるわ。他の子もいるし全然大丈夫よ。いってらっしゃい。」
そう言われ、目に涙を溜めていたフィリアは吹っ切れた様子だ。
「明日、ユリエルおじさまが来る予定なの。そこで話すわ。」
10
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪
鼻血の親分
恋愛
罪を着せられ島流しされたアニエスは、幼馴染で初恋の相手である島の領主、ジェラール王子とすれ違いの日々を過ごす。しかし思ったよりも緩い監視と特別待遇、そしてあたたかい島民に囲まれて、囚人島でも自由気ままに生きていく。
王都よりよっぽどいいっ!
アニエスはそう感じていた。…が、やがて運命が動き出す。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

亡国の公女の恋
小ろく
恋愛
「俺は姫様ただひとりに忠誠を誓った僕です。どんなことがあっても命にかえてもお守りします」
戦争によって国を失った公女スヴェトラーナは、兵士のルカと共に隣国へ亡命の旅に出る。
たった数日間の旅で芽生えた愛にすべてを捧げようとするスヴェトラーナ。
愛を信じて貫こうとする公女と孤独で自尊心の低い兵士の恋のお話。

【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!
佐倉穂波
ファンタジー
ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。
学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。
三話完結。
ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。
2023.10.15 プリシラ視点投稿。

【完結】光の魔法って、最弱じゃなくて最強だったのですね!生きている価値があって良かった。
まりぃべる
恋愛
クロベルン家は、辺境の地。裏には〝闇の森〟があり、そこから来る魔力を纏った〝闇の獣〟から領地を護っている。
ミーティア=クロベルンは、魔力はそこそこあるのに、一般的な魔法はなぜか使えなかった。しかし珍しい光魔法だけは使えた。それでも、皆が使える魔法が使えないので自分は落ちこぼれと思っていた。
でも、そこで…。

孤児院経営の魔導士
ライカ
ファンタジー
長く続いた人間と魔族との戦争…………
その原因となったきっかけは等の昔に消え、誰もが疲弊していた
そんな時、人間の王と魔族の王はお互いに武器を捨て、和平を結び、戦争に終止符を打った
そして戦争を止める為、助力した一人の魔導士は世界が安定すれば、表舞台から姿を消した
その数年後、ある噂が立った
魔族、人間、種族を問わず、孤児を保護し、安心と安全を約束した孤児院の噂を…………
これはその孤児院を舞台とした物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる