【完結】フィリアの見聞録〜どんな時でも楽しまないとね!だって私にはペンダントがあるもの〜

まりぃべる

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レクラス視点 6 父上

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三日後の朝、父上にどうにか謁見が叶った。

「忙しいのに済みません。」
父上だが国王陛下でもあるため、腰を折り挨拶をした。

「何を言う。会うのは久しいな。どうだ。騎士団で元気にやっているか?そろそろ王宮に戻ってくるか?」
「いえ。王宮よりは騎士団のが気質に合っております。」
「ははは。そうか。して、どうした?」
「はい。あの、前々から思っていたのですが…義母をなぜ放置しているのですか?」
「フッ…。それをお前に今言えと?」
「はい。それによっては…あの…。」
「そうか…。まさか何か分かったのか?レクラス、私が生涯愛したのはサルビア只一人だ。だがな、メフィスと一晩一緒に過ごしたのも事実だ。…若気の至りだな。」
父上はそう話し、最後は苦笑した。そして息をする間もなく、続けた。

「それで、結局何が言いたい?」
「はい。ええと…大変言いづらいのですが…人払いをお願いしたいのですが。」
私がそう言うと、父上は、
「トーマス以外は下がれ。トーマスは私と共に在る。そうだな?」
と、父上は言い、側近であるトーマスを見つめた。

「はい。」
父上の斜め後ろに控えていたトーマスは、父上を見て答え、その後俺の方を見て頷いた。

「分かりました。ではまず、母上の亡くなった時の事ですが、義母がどうやら毒葉をすり潰したものを食事に入れたと思われます。」
「うむ。証拠は?」
「元気になる薬だと騙され、実際は毒葉をすり潰すことを命じられた侍女が、次の日辞めさせられたそうで。その日はちょうど母上が崩御なされた日と同日だそうです。その者は、今俺の知る所に居ります。」
「なるほど。状況は辻褄が合うな。」

「それから、毒葉をすり潰した粉は、義母の部屋の棚にあると思われます。掃除をその部分だけ禁止されているそうです。」
「うむ…。」
父上、考えこんでいるな。まぁ、まだ毒葉を見つけた訳ではないからな…。

「それから、この集音貝を聞いて頂きたいのです。父上が、母上だけを愛されていると聞いて、これを安心して聞いて頂けます。」
と、俺は懐から集音貝を2つ、取り出した。


聞いてもらった後、父上の顔を見ると、側近のトーマスと目配せしていた。

と、扉を叩く音が聞こえ、
「お話中失礼致します。私はニックと申します。重大なお話故、入室の許可を頂けないでしょうか。」
ニックだ。しかし重大ってどんな…?

「よい。入って参れ。」
「ありがとう存じます。」

「ニック、どうした?」
私の隣に跪いたニックに聞いた。

ニックは、俺の方を一度見て頷き、懐から小瓶を出した。そして、父上に向けて見せた。

「こちらの小瓶は、側妃様の部屋にあったものです。触れてはならないと禁止されていた場所から持ち出したので、罪は全て私にあります。」
そう言って、ニックは父上をじっと見つめていた。

俺は慌てて、
「いや!父上!私が持ってこいと命じましたので、罪があるとしたら私が背負います!」
と父上に言った。

すると父上は俺に手のひらを向けて、
「いや。それはよい。つまり、レクラスの話に繋がっておるという事か?」
と尋ねた。

「そうだと思います。」
俺はそう言った。今、この段階で持ってくるとは、中身がきっと毒葉をすり潰したものであると推察される。

「うむ…だがそれが毒葉だと証明は出来んな。何せ、試すということは、間違えば亡くなるという事だからな。…いや、メフィスに試すか?」
父上がとんでもない事を言い出した。

「それがようございます。今日の晩餐にでもお持ちしましょうか?元気になる薬だと申します。」
「そうだな。そうしよう。」
そうきたか…。物騒でかなり驚きだが、上手くいくといいな。集音貝の方はどうするつもりだろう。けど、任せるとするか。


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