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ベン、クルト、モルクが旅立って数日、メルサの様子がおかしい。

さっきからずっと、ため息を付いている。
「ハー」
「ねぇ、メルサ。体調悪いの?ため息ばかりついてるわよ。」
私は気になって聞いた。

「えっ!?」
メルサは私の方を向くと、顔が見る間に赤くなってそっぽを向いた。

「なんでもないです!」
そう言って、洗濯物を急いで干そうとする。

「あ!メルサも淋しいんでしょ。賑やかな3人がいなくなっちゃったものね。でもきっと大丈夫よ!元気にやっているわ。」
「…。」
そう、明るめに声をかけたのにメルサは無言になり、何やら考え込んでいるようだ。
こう、黙り込んだ時は無理に話し掛けてはダメね。そう思って私も残りの洗濯物を干す。
と、メルサが呟き出した。

「モルクがね…、一人前になってくるから、それまで待ってろって。離れたくなかったって言われたの。」
「えっ!?」
私は、思わず聞き返してしまう。それって…。

「メルサはモルクが好きなの?」

「…分からないんです。でも、旅立つ朝に言われてから、ずっと考えちゃって…。」
「そうなのね。私もまだ誰にもそんな事言われた事ないから分からないけれど、誠実な気持ちを言われたら、自分の気持ちはどうなのかって考えるわよね。たくさん考えればいいのよ。それで、クルトがいなくて淋しい、会いたいと思ったらそれは好きっていうことよ、きっと。はぁ。ステキねぇ!」
「フィリア姉さま…!」
メルサは顔を赤くして、唇を尖らしている。

「こんにちは-!」
「すみませーん!」
あら?メルサと話していると、玄関の辺りから男性の声がした。

「メルサ。ここをお願い。私、出てくるわ。」
「はい、姉さま。お気をつけて。」


「どちら様ですかー?」
私が尋ねた。

「あ!…すみません。こちらを手伝うように言われて来ました。」
「ピアスを確認して下さい。入ってもよろしいでしょうか?」
大きな体の黒髪の男性と、背が私とそう変わらない黒髪の男性がそこに立っていた。

「あなたたちがおじさまが言っていた方?すみません、お願いします。あ、シスターに挨拶してもらってもいいですか?こちらです。」
そう言って、私はシスターの元へ案内した。



彼らは、大きな体の人はベイスン、背が私と変わらない人はツブァルクだと教えてくれた。
シスターに挨拶したあとは、10歳に満たない子達でもできるように、畑仕事のやり方などを指導してくれた。
あと、屋根が壊れかけている場所も直してくれた。

「では、そろそろ帰ります。」
「明日も来ますね。」
「お仕事などは大丈夫なのですか?こちらとしてはものすごく助かりますけれど…。」
「ええ。大丈夫ですよ!」
「大丈夫ですから気にしないで下さい。」

ドドーン!

と、平原の奥から、ものすごい音がした。まるで、耳がつんざくような。

「きゃ!」
私は咄嗟に耳を押さえ、目を瞑った。

「なんだ!?」
「国境の方か?」
彼らは、音のした方を向き、成り行きを確認している。だが、ここからでは何も見えない。
しばらくたっても変化はなかったので、
「えっと、今日はありがとうございました。森の方へお帰りでしたら、音とは反対の方角ですので危なくないでしょうから、早く帰られた方がよろしいかと。」
と私はそう言うと、2人は顔を見合わせて、
「いえ…もう少ししたら帰りますから。見送りは大丈夫ですよ。あ、洗濯物一緒にしまいましょう。」
とベイスンが言った。
「え?でも…」
帰ろうとしていた人達にさせるなんてと、迷って言った。

でも、
「大丈夫です。早くしまった方がいいですよね。手伝いますから。」
と、2人はさっさと洗濯物が干してある方へ行く。

「あんな大きな音、なんだったのかしら…。」
そう呟いて、洗濯物をしまうのを急いだ。



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