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メフィス側妃視点
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私、メフィス。38歳。
ラッセルブラウン国へ来て、6歳年上のダンティス国王陛下に自分を売り込み、側妃にまでなった。
生まれはバルグェン国のとある農村。幼い頃はとても貧しかった。だから私は、生きるために貪欲だったの。
もともと、バルグェン国は国王がしっかりとした政策をこなしていないので、国自体貧しかった。自分の国を潤す為に改革をすればいいものを、それをするのは面倒だからと国王は、他の国から奪い取ろうと考えた。
周辺国の豊かな国を次々と滅ぼしていった。
だが、例えば穀物が良く取れる東隣の国を滅ぼし属国にしても、税を高くしてしぼり取れるだけ取ろうとするからどんどん国民は貧しくなっていってしまう。
干ばつの時や、不作の年などの対策など全くしない国王だった。
だから幼い頃は必死になってどうすれば次の日も生きていられるかを考えていた。
そのうち両親や村人のほとんどが流行病で亡くなると、村を離れてどうにか生活をしていこうとした。
身体の出ている所は出る女性らしい体つきになってきていたので、年頃になると生活はいくらかし易くなった。言葉は悪いが、男性に媚を売って、施しを受けていたのだ。
しかし、15歳になるとある男に捕まった。自分と同じ髪色で同じ瞳の男。境遇も似ていた。
その男は、私よりも年が3つ程年上だった。そしてなぜか私を盲目的に傾倒し、付きまとってきた。
初めは冷たくあしらっていたが面倒になり、逃げるように、その村を去った。自らの身体を見せながら踊る踊り子をしながら村や町を点々とするようになったのだ。
しかし、どんなに逃げてもついてくる。何度も顔を合わせるうちなんとなく情も沸いてくるようになった。絆されて何度も肌を重ねた事もあった。
だが彼は残念ながら地位もお金もない。だから言ってやった。
『私はもっと満たされたいの。キラキラした物で私を着飾ったらもっと素敵だと思わない?』
それを聞いて、一念発起し彼は宝石の取引をするようになった。
バルグェン国の国王を、宝石が採れる山を手に入れたらさらに裕福になれると誑かし、アルフェンス国を滅ぼさせた。
だが、坑夫まで滅んだのかいなかった。仕方がないから彼が自ら山に入ってくると言ってしばらく会わない日が続いた。彼は幾度となく掘ってみたが、知識がなく経験もないため全く宝石がみつからないと嘆いていた。滅ぼした意味がないと悔しがっていた。
その後も彼は宝石が取れる地域がないか探し回ってくれた。海を渡ったかなり遠くの方まで行ったらしい。
だけどその間に私は、ラッセルブラウン国の国王陛下に目星を付け側妃となった。だって貧しい生活は二度とごめんだもの。
十数年振りに彼は宝石商と称して私に会いに来た。その際、真珠や宝石やガラスを数点持ってきて、毒葉まで見せてくれた。
毒葉は、煎じて飲めば神経が痺れる物だという。なぜ彼がこれを持ってきたのかは不明だが、多分私を好きな奴の事だ。国王陛下を殺して、帰ってこいとでも言いたかったのだと思った。
私は宝石も興味を持ったが、それよりも毒葉に自分でも驚くほどに興味を持った。
…そして近くにいた若い侍女に元気が出る薬だと言わせ、葉をすり潰すように命じた。すり潰した粉の半分は、サルビア正妃の食事に混ぜた。毒見をしてから、正妃に出されるわずかな時間を見計らって自ら入れた。そして毒見をした侍女が疑われ処刑された。
ーーそれが、5年前。
残りの半分も、かわいい息子の邪魔となる正妃の息子レクラスに飲ませようとしたが、自分の母親が亡くなるとすぐに騎士団に入団してしまいチャンスが無くなってしまった。
未だに取ってある。いつかあるチャンスの為に。
また、あの男が会いに来た。バルグェン国が戦争をするから一緒に来ないか?と言いに。
私は迷った。なぜ彼はここまで私にこだわるのだろう。
ダンティス国王陛下は、私と共にした一夜以外一緒に寝てくれなかった。そう、愛してもらえてないのだ。
対して彼は未だに私を求めてくる。心の底で、彼だけは私をずっと愛してくれていると安心している自分がいる。
マナクルも、小さかった時はとても可愛かった。だが、大きくなり仕事もある為一緒にいられない。私を必要ともしてくれない。
マナクルの為にと憎きサルビア正妃を毒殺したのに…。
なんだか虚しさが押し寄せてきた。そしてなぜか、もういいかとさえ思えた。
私を求めてくれる人の方へ行こうかと…。
…いや、考えてみたら、サルビア正妃は見ているとイラついたからだわ。私を見下したような目で、けれど達観したような言葉を言ってきて。彼女は国王陛下に何度も抱かれた様子だったし。これじゃただの嫉妬ね。自分の為に殺したようなものね。
戦争になれば、サルビア正妃の息子は騎士団に入っているので前線に出てくるだろう。その最中に何かあっても、戦争で亡くなるのは良くあることだわ。
それはいいわね。
だけど戦争になって、もしバルグェン国に負けでもしたら、私は妃だもの。あの国にどうかされるのはゴメンだわ。
やっぱりその前に逃げた方がいいかしらね。
ラッセルブラウン国へ来て、6歳年上のダンティス国王陛下に自分を売り込み、側妃にまでなった。
生まれはバルグェン国のとある農村。幼い頃はとても貧しかった。だから私は、生きるために貪欲だったの。
もともと、バルグェン国は国王がしっかりとした政策をこなしていないので、国自体貧しかった。自分の国を潤す為に改革をすればいいものを、それをするのは面倒だからと国王は、他の国から奪い取ろうと考えた。
周辺国の豊かな国を次々と滅ぼしていった。
だが、例えば穀物が良く取れる東隣の国を滅ぼし属国にしても、税を高くしてしぼり取れるだけ取ろうとするからどんどん国民は貧しくなっていってしまう。
干ばつの時や、不作の年などの対策など全くしない国王だった。
だから幼い頃は必死になってどうすれば次の日も生きていられるかを考えていた。
そのうち両親や村人のほとんどが流行病で亡くなると、村を離れてどうにか生活をしていこうとした。
身体の出ている所は出る女性らしい体つきになってきていたので、年頃になると生活はいくらかし易くなった。言葉は悪いが、男性に媚を売って、施しを受けていたのだ。
しかし、15歳になるとある男に捕まった。自分と同じ髪色で同じ瞳の男。境遇も似ていた。
その男は、私よりも年が3つ程年上だった。そしてなぜか私を盲目的に傾倒し、付きまとってきた。
初めは冷たくあしらっていたが面倒になり、逃げるように、その村を去った。自らの身体を見せながら踊る踊り子をしながら村や町を点々とするようになったのだ。
しかし、どんなに逃げてもついてくる。何度も顔を合わせるうちなんとなく情も沸いてくるようになった。絆されて何度も肌を重ねた事もあった。
だが彼は残念ながら地位もお金もない。だから言ってやった。
『私はもっと満たされたいの。キラキラした物で私を着飾ったらもっと素敵だと思わない?』
それを聞いて、一念発起し彼は宝石の取引をするようになった。
バルグェン国の国王を、宝石が採れる山を手に入れたらさらに裕福になれると誑かし、アルフェンス国を滅ぼさせた。
だが、坑夫まで滅んだのかいなかった。仕方がないから彼が自ら山に入ってくると言ってしばらく会わない日が続いた。彼は幾度となく掘ってみたが、知識がなく経験もないため全く宝石がみつからないと嘆いていた。滅ぼした意味がないと悔しがっていた。
その後も彼は宝石が取れる地域がないか探し回ってくれた。海を渡ったかなり遠くの方まで行ったらしい。
だけどその間に私は、ラッセルブラウン国の国王陛下に目星を付け側妃となった。だって貧しい生活は二度とごめんだもの。
十数年振りに彼は宝石商と称して私に会いに来た。その際、真珠や宝石やガラスを数点持ってきて、毒葉まで見せてくれた。
毒葉は、煎じて飲めば神経が痺れる物だという。なぜ彼がこれを持ってきたのかは不明だが、多分私を好きな奴の事だ。国王陛下を殺して、帰ってこいとでも言いたかったのだと思った。
私は宝石も興味を持ったが、それよりも毒葉に自分でも驚くほどに興味を持った。
…そして近くにいた若い侍女に元気が出る薬だと言わせ、葉をすり潰すように命じた。すり潰した粉の半分は、サルビア正妃の食事に混ぜた。毒見をしてから、正妃に出されるわずかな時間を見計らって自ら入れた。そして毒見をした侍女が疑われ処刑された。
ーーそれが、5年前。
残りの半分も、かわいい息子の邪魔となる正妃の息子レクラスに飲ませようとしたが、自分の母親が亡くなるとすぐに騎士団に入団してしまいチャンスが無くなってしまった。
未だに取ってある。いつかあるチャンスの為に。
また、あの男が会いに来た。バルグェン国が戦争をするから一緒に来ないか?と言いに。
私は迷った。なぜ彼はここまで私にこだわるのだろう。
ダンティス国王陛下は、私と共にした一夜以外一緒に寝てくれなかった。そう、愛してもらえてないのだ。
対して彼は未だに私を求めてくる。心の底で、彼だけは私をずっと愛してくれていると安心している自分がいる。
マナクルも、小さかった時はとても可愛かった。だが、大きくなり仕事もある為一緒にいられない。私を必要ともしてくれない。
マナクルの為にと憎きサルビア正妃を毒殺したのに…。
なんだか虚しさが押し寄せてきた。そしてなぜか、もういいかとさえ思えた。
私を求めてくれる人の方へ行こうかと…。
…いや、考えてみたら、サルビア正妃は見ているとイラついたからだわ。私を見下したような目で、けれど達観したような言葉を言ってきて。彼女は国王陛下に何度も抱かれた様子だったし。これじゃただの嫉妬ね。自分の為に殺したようなものね。
戦争になれば、サルビア正妃の息子は騎士団に入っているので前線に出てくるだろう。その最中に何かあっても、戦争で亡くなるのは良くあることだわ。
それはいいわね。
だけど戦争になって、もしバルグェン国に負けでもしたら、私は妃だもの。あの国にどうかされるのはゴメンだわ。
やっぱりその前に逃げた方がいいかしらね。
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