【完結】フィリアの見聞録〜どんな時でも楽しまないとね！だって私にはペンダントがあるもの〜

レクラス視点 1 孤児院で

｢おい、あいつは大丈夫なのか？｣
俺が、勝負とはいえ女に手を出してしまったせいで、あの子は倒れてしまった。
地面に倒れる直前に淡い光が彼女を包んだように見えたが、気が動転したせいで見た幻覚だったかもしれない。

｢んー、さぁ。まぁ騎士団でも、よく怪我しても、すぐ復帰する奴いるじゃん？だから、大丈夫なんじゃない？シスターも跳ねっ返りだと言っていたし。何？珍しいね。心配？｣
と、ニックがニヤニヤしながら聞いてくる。

｢いや…まぁ、思ったより力が入って、吹っ飛ばしちまったからな…それなのに、あんなに動けるのかってびびっただけだよ。｣
何だよ、俺だって心配もするさ！そりゃ、女のくせにちょこまかするから…ちょっと力の入れ加減間違えた…のか？そんなに入れてない気がするけど、後ろに吹っ飛んだもんな。まじ悪いことをした…。

ま、あれが勝負でなかったなら、花びらのようにヒラヒラとあちらこちらで舞っていたみたいでいつまでも見ていたいくらい華麗だったな。
他国では、剣舞というものもあったな。そんな感じだった。
だがなんか引っかかるんだよなぁ…。そんな事やるやつ、いるか？少なくともこの国では剣舞なんて珍しい。

｢ふーん。まぁ、どっちでもいいけどね。いやでも、彼女泣くかと思ったら笑い出すなんてね！あの子結構頭の中もぶっ飛んでるね。｣
いや本当だよ…。泣いてるかと思ったら、手合わせに感動してるんだからさ…。

｢まぁいいや。ここにいるのもなんだし、外行って、さっきの3人を見てみようぜ。｣
と、俺は言って部屋から出ようと扉へ向かう。

｢はいはい。て言うか彼女目が覚めて謝れたんだから帰ってもいいはずでは？｣
と、ニックは苦言を呈した。

｢そう硬い事言うなよ！何にも知らない奴が見習いになるより、囓ってる奴がいるのは有難いじゃん。戦力は必要だろ？もう少し見て行こう。｣
ちょっと自分でも言い訳がましい気がするけど、何かこのまますぐに帰りたくないんだよな。

｢まぁね。そうだ、あの子なんて言ったっけ。クルトか。良く見てるよね。演習の回数が増えたとか、人数が増えたとかさ。｣
と、ニックが言った。確かに。それが分かるなんてよほど気にしてないと分からないだろう。
彼女だって、彼より年上だろうに気づいてなかったみたいだしな。

｢ああ。良く見てるな。頭脳戦に向いてるかもな。だが、騎士たるもの、女性を不安にさせるのは良くないよな。｣
｢ああ、近々戦争になるかもってやつ？そうだけど、まだ騎士じゃないし。てかそれを言うなら、女性に手をあげたのは誰よ？｣
う…痛い所突くな…。


外に行くと、掛け声と共に先程の3人がおじさまに習っていた。
｢なぁ、あいつは何者なんだ？｣
｢さぁ？何？彼女と親しいから気になったー？｣
｢なんだよ、さっきから！別にフィリアの事なんて言ってないだろ！｣
｢えっ僕名前出してないけどー？｣
チッ…ニックめ！さっきからニヤニヤしやがって！


｢おっやっと騎士団の方が来ましたか。では老いぼれは帰りますよ。｣
と、そうフィリアになれなれしかったおっさんが言った。

｢えーおじちゃんもう帰るんかよ！｣
｢まぁまぁ、でもあまり引き止めれないし。｣
｢また来てね！｣
3人もそれに応えた。

｢騎士団見習いになったらもう、3人には会えないかもしれないけれど、頑張りなさいよ。｣
｢｢｢はい！ありがとうございました！！！｣｣｣
そう挨拶されると、あいつは帰って行った。

｢あいつは何者だ？｣
｢おじちゃんの事？名前は知らないよ。でもいろんなもの寄付してくれるよな！｣
｢読み書きや、剣裁きも教えてくれましたね。｣
｢まぁ、でもぶっちゃけおじちゃんは、フィリア姉ちゃんの親なんじゃねーの？｣
｢あ、それ俺も思った－！だってフィリア姉だけ結構ひいきしてるよな！｣
｢今日だって、いつの間にか来て、フィリア姉ちゃんの様子見に行ったし？｣
｢いつもフィリア姉ちゃんにはめっちゃ声掛けていくよな！｣
親か…うーん、なんかしっくり来ないな…。

｢だってよ。｣
ニックがまたもニヤニヤしながら俺に言って、肘で俺の腰を突いてくる。

｢でも普段は何してるんだろうなー。｣
｢うん、僕も気になる。｣
｢いつも森の方へ行くよな。｣

そうなのか…森に家があるのか？けど、寄付するって事はそれなりに裕福なはずだよな。だったらフィリアを引き取ればいいのにそれはしないんだよな？うーん…。