【完結】フィリアの見聞録〜どんな時でも楽しまないとね！だって私にはペンダントがあるもの〜

実践 (途中からレクラス視点に変わります)

さぁ、見ててご覧なさい！

私は、木の枝を持った。
初めは胸の前で構えるが少し前に進んだ時に、右手側に水平にし、またゆっくり前方に腕を回して今度は逆の左手側に水平にする。ゆっくり横に移動しながら、枝を優雅に動かす。

｢なんだそれは？｣
と、笑いながらレクラスさんは私の目を見つめて言う。

｢やー！｣

頭上に枝を持ってきた時に、一歩前に飛ぶように掛け声を出してレクラスさんへ向かった。
レクラスさんは、見事に横に避けた。

｢危なー！｣
と、笑いながらレクラスさんが言った。

もう！あとちょっとだったのに！

数回繰り返すと、レクラスさんも焦れてきたのか、
｢そろそろ終わりにするか。｣
と言った。
私は、ちょっとムッとして、もう一度飛ぶように向かった。

すると、レクラスさんの枝が私の胸とお腹の間あたりに水平に当たった…気がする。

カランカラン。ドサッ。

｢フィリア姉！｣
｢おい！フィリア姉ちゃん｣
｢大丈夫か！？｣ 

｢あ…やべっ！おい！｣

｢おい！フィリア姉は一応女だぞ！｣
｢そうだよ！フィリア姉ちゃんに何かあったらどうするんですか！｣
｢責任取ってくださいよ！｣

｢すまん！おい、フィリアの部屋はあるか？連れて行く！｣





ーーーーレクラス視点ーーーー

｢大丈夫か？おい…。｣
｢やってしまいましたね。女性相手に。あなたらしくもない。｣
｢いや…まぁ…。やり過ぎた。｣
｢頭を打ったかもしれませんよ。｣

ガチャ。
｢あ、シスター！すみません…やらかしました…。｣
と俺は、フィリアを寝かしたベッドの隣で腰掛けていたが席を立って腰を曲げ謝った。

｢いえ、フィリアが言ったのでしょう…けれど、起こった事は、戻りません。頭を上げて下さい。いつ目覚めるか分かりません。やがて昼になりますから今日はもうお帰り下さい。｣
と、シスターは言った。怒っているのだろうか。

｢すみません。もしよければ、フィリアが目覚めるまでいてはいけませんか？｣
俺は、シスターの目を見ていった。

｢レクラス…。｣
｢…一言謝りたい。ニック、いいだろ？このまま帰れない。｣
｢…だそうです。すみません、シスター。お願いします。｣
と、ニックも言ってくれた。

｢こちらは、いいのですよ。むしろ、騎士様方に申し訳無くて…。フィリアはあの通り跳ねっ返りですから。では食事の準備、してきますね。少し遅くなりますが、お許し下さい。｣
と言って、シスターは部屋を出て行く。

｢すみません！ありがとうございます。｣
｢すみません！｣
俺は、見えないだろうがシスターに向かってお辞儀をした。


｢ん…。｣
少しすると、フィリアが身じろぎした。
｢フィリア？｣
そう言うと、フィリアは少しして閉じていた目をゆっくりと開けた。

｢フィリア！良かった…！すまなかった。痛かっただろう。申し訳ない！｣
と俺は言って、椅子の上で頭を下げた。

｢私…｣
と、フィリアは掠れた声で逡巡しているようだ。
｢フィリアちゃん、大丈夫？僕はニック。倒れる前の事覚えてる？｣
とニックが言った。

すると、フィリアは両手で顔を覆った。なんだか腕が震えているようだ。

…泣いているのか？そうだよな。痛かったよな。俺は女を吹っ飛ばしたんだよな。この部屋に連れて来るとき横向きに抱えてきたが、存外軽かった。あの、枝を持って踊るように舞っていてキレイで魅入りそうだった。あれは確かに美しい女だった。

｢泣いてるのか？ごめんな。どっか痛いか？｣


ーーーーレクラス視点終わりーーーー