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47. ピオトル兄様の結婚式
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翌日、私達は各々馬車で王立神殿へと向かいました。
お父様はお一人でずいぶんと朝早くから。
ダミアン兄様とウツィア様はお二人で仲睦まじく。
どうやら、ウツィア様も婚約者として、フォルヒデン領に来て二カ月ほど前から泊まりながら学んでいると言われておりました。
公爵家の令嬢ですから、それなりに勉強はされていると思いますので、こちらで何を学ばれているのでしょうか。きっと、領民と触れ合ったりされているのかもしれませんね。
それにしても、ダミアン兄様、なぜ全く教えて下さらなかったのかしら。そう言った類の話は私には恥ずかしいのかしら。
私達も、ダミアン兄様達に少し遅れて行きました。
お父様は、王立神殿の中で特別にご用意されたとされる席に座られるのだそう。
ダミアン兄様は、当初行かないつもりだったらしいのですが『何を言っていらっしゃるの?私との仲を、アリツィアに見せつけなくてどうするのです!』とウツィア様に言われたらしく、ダミアン兄様はなんと、公爵家の席に座られるのだそう。
ウツィア様はダミアン兄様に嫁いで来られるそうなのですが、〝今はまだ婚約者〟らしいので、ウツィア様のお連れ様としてダミアン兄様と一緒に公爵家の席につくのだとか。
王立神殿は広いとはいえ外国に嫁いでしまった私達が座る席はありませんから、以前もそうしようかと思っておりましたけれど外で見るしかありません。
王立神殿の外も、街道である石畳を間に挟んで長い行列が出来ていました。立ち見席、というわけです。行列の外側には騎士団もいて、何かあったときの為に備えています。
馬車から降りて、王立神殿へと向かうその行列を見ながら歩きます。
お父様から言われて前日から席取りをしてくれている従僕達の場所を探していると、どうにか見つけました。
「あ、あそこですわね。」
「なるほど。これは凄い…。」
私達のように、貴族でも王立神殿で席がない人達も外にいるし、庶民も見に来ている。とはいえ、同じように肩を並べて見るには階級が違い過ぎるからと 、王宮へと続く街道は庶民が見られるそう。
対してこちらの王立神殿側は、貴族が多いそうです。なるほど、煌びやかなドレスを身に纏っていらっしゃる方々もいます。簡易椅子が設置されている箇所もいつくもありました。
「場所取り、ありがとう。」
「お疲れさま。大変だっただろう?君達もここでゆっくりして見ていけばいいよ。」
私達がその席取りしてくれていた場所へ行くと従僕達が立ち上がったので、ウカーシュ様がそう言ってくれた。
敷物を敷いてくれていて、椅子もあり、小さな机もあった。机には、飲み物と軽食も用意してくれてある。
「せっかくだから、ピオトル兄様を一緒に見ましょう?」
そう言うと、従僕達は顔を見合わせたけれど遠慮がちに頷いてまた座った。
私はウカーシュ様とその椅子に座って少し話をしていると、どよめきと共に歓声が聞こえてきた。
「あ、来たかな?」
「ええ!」
私はワクワクとした面持ちで王宮からの街道を見つめた。
少しずつ馬車特有の、車輪のゴトゴトという音と馬の蹄の音が響いてきた。
「まぁ!素敵…!」
馬車は、箱型では無く屋根の無い背もたれの所までの物で、乗っている人物がよく見えた。
二人とも、金色のドレスとタキシードを着ていらっしゃった。
「ピオトル兄様…!」
「お!ナタリアか?大きくなったなぁ!幸せになー!」
私の呟く声が聞こえたのかは分からないが、ピオトル兄様はこちらに気づいてくれた。顔は、私が記憶していた顔とは少し違って大人になっていた。でも、手を大きく振って私に、ニカッと笑ったその顔は、昔のままのような気がしました。
ピオトル兄様、アリツィア様、どうぞお幸せに…。
そう願いを込めて神殿へと入って行く後ろ姿を見つめていました。
ドドーン!キラキラキラ…。
と、いきなり、空に虹色の煌びやかで大きな華が咲きました。幾つも、空に華が咲いては消え咲いては消えています。何で出来ているのかは分かりませんけれど。
「え!?」
「何?」
「綺麗…!」
観衆のあちらこちらから、声が聞こえてきました。
「素晴らしいわ!きっとこれも、演出なのね!空にいろんな色の華が咲いているわ!ピオトル兄様…お幸せに!」
「まさか…ナタリアじゃないのか?」
「ナタリア様…粋ですね。」
「さすが綺麗ですねぇ。」
「お?君達。従僕の目から見て、やっぱりナタリアかと思うかい?」
「あ…いや…!」
「まぁ…その…!」
そんなウカーシュ様と従僕達との囁くような会話は、ピオトル兄様とアリツィア様を想いながら私は空に彩られる華を見ていたので、耳に入らなかった。
お父様はお一人でずいぶんと朝早くから。
ダミアン兄様とウツィア様はお二人で仲睦まじく。
どうやら、ウツィア様も婚約者として、フォルヒデン領に来て二カ月ほど前から泊まりながら学んでいると言われておりました。
公爵家の令嬢ですから、それなりに勉強はされていると思いますので、こちらで何を学ばれているのでしょうか。きっと、領民と触れ合ったりされているのかもしれませんね。
それにしても、ダミアン兄様、なぜ全く教えて下さらなかったのかしら。そう言った類の話は私には恥ずかしいのかしら。
私達も、ダミアン兄様達に少し遅れて行きました。
お父様は、王立神殿の中で特別にご用意されたとされる席に座られるのだそう。
ダミアン兄様は、当初行かないつもりだったらしいのですが『何を言っていらっしゃるの?私との仲を、アリツィアに見せつけなくてどうするのです!』とウツィア様に言われたらしく、ダミアン兄様はなんと、公爵家の席に座られるのだそう。
ウツィア様はダミアン兄様に嫁いで来られるそうなのですが、〝今はまだ婚約者〟らしいので、ウツィア様のお連れ様としてダミアン兄様と一緒に公爵家の席につくのだとか。
王立神殿は広いとはいえ外国に嫁いでしまった私達が座る席はありませんから、以前もそうしようかと思っておりましたけれど外で見るしかありません。
王立神殿の外も、街道である石畳を間に挟んで長い行列が出来ていました。立ち見席、というわけです。行列の外側には騎士団もいて、何かあったときの為に備えています。
馬車から降りて、王立神殿へと向かうその行列を見ながら歩きます。
お父様から言われて前日から席取りをしてくれている従僕達の場所を探していると、どうにか見つけました。
「あ、あそこですわね。」
「なるほど。これは凄い…。」
私達のように、貴族でも王立神殿で席がない人達も外にいるし、庶民も見に来ている。とはいえ、同じように肩を並べて見るには階級が違い過ぎるからと 、王宮へと続く街道は庶民が見られるそう。
対してこちらの王立神殿側は、貴族が多いそうです。なるほど、煌びやかなドレスを身に纏っていらっしゃる方々もいます。簡易椅子が設置されている箇所もいつくもありました。
「場所取り、ありがとう。」
「お疲れさま。大変だっただろう?君達もここでゆっくりして見ていけばいいよ。」
私達がその席取りしてくれていた場所へ行くと従僕達が立ち上がったので、ウカーシュ様がそう言ってくれた。
敷物を敷いてくれていて、椅子もあり、小さな机もあった。机には、飲み物と軽食も用意してくれてある。
「せっかくだから、ピオトル兄様を一緒に見ましょう?」
そう言うと、従僕達は顔を見合わせたけれど遠慮がちに頷いてまた座った。
私はウカーシュ様とその椅子に座って少し話をしていると、どよめきと共に歓声が聞こえてきた。
「あ、来たかな?」
「ええ!」
私はワクワクとした面持ちで王宮からの街道を見つめた。
少しずつ馬車特有の、車輪のゴトゴトという音と馬の蹄の音が響いてきた。
「まぁ!素敵…!」
馬車は、箱型では無く屋根の無い背もたれの所までの物で、乗っている人物がよく見えた。
二人とも、金色のドレスとタキシードを着ていらっしゃった。
「ピオトル兄様…!」
「お!ナタリアか?大きくなったなぁ!幸せになー!」
私の呟く声が聞こえたのかは分からないが、ピオトル兄様はこちらに気づいてくれた。顔は、私が記憶していた顔とは少し違って大人になっていた。でも、手を大きく振って私に、ニカッと笑ったその顔は、昔のままのような気がしました。
ピオトル兄様、アリツィア様、どうぞお幸せに…。
そう願いを込めて神殿へと入って行く後ろ姿を見つめていました。
ドドーン!キラキラキラ…。
と、いきなり、空に虹色の煌びやかで大きな華が咲きました。幾つも、空に華が咲いては消え咲いては消えています。何で出来ているのかは分かりませんけれど。
「え!?」
「何?」
「綺麗…!」
観衆のあちらこちらから、声が聞こえてきました。
「素晴らしいわ!きっとこれも、演出なのね!空にいろんな色の華が咲いているわ!ピオトル兄様…お幸せに!」
「まさか…ナタリアじゃないのか?」
「ナタリア様…粋ですね。」
「さすが綺麗ですねぇ。」
「お?君達。従僕の目から見て、やっぱりナタリアかと思うかい?」
「あ…いや…!」
「まぁ…その…!」
そんなウカーシュ様と従僕達との囁くような会話は、ピオトル兄様とアリツィア様を想いながら私は空に彩られる華を見ていたので、耳に入らなかった。
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