【完結】私には何の力もないけれど、祈るわ。〜兄様のお力のおかけです〜

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
51 / 51

51. 空に大きな華

しおりを挟む
「とっても良かったですわね!」



 ピオトル兄様とアリツィア王女の結婚式を見てからの帰り道。

 一度、フォルヒデン領に荷物を取りに戻りその足でチェルウィンスキー領へと帰る事にしたの。

 ウカーシュ様は侯爵としての仕事をし始めてはいるが、早急に捌かなければならない書類などはまだお義父様がやってくれているから、フォルヒデン領の屋敷にもう一泊して行こうかと言ってくれた。
けれど、ウツィア様もすでに住まわれていらっしゃるし、私の帰る場所はもうチェルウィンスキー領のお屋敷だもの。早くあちらに帰りたいと思ってしまったの。

 お父様は、今日は久々にお会いした人達と食事なさってくるのだそう。

 ダミアン兄様とウツィア様も、公爵家に寄ってくるか、王都で買い物をしがてら昼ご飯を食べて来ると言っていた。


 挨拶はすでに昨日の夜に言ってある。


 だから、もう帰りましょうとウカーシュ様に伝えた。


「いいのかい?なかなか戻って来れなくなるよ。」

「いいのよ。もう、私にはウカーシュ様がいるもの!私の居場所は、チェルウィンスキー領なのだわ。」

「そう?まぁ、俺はそう言ってくれて嬉しいけれどね。そうだ!そろそろ、いいよね?」

「何がですの?」

「子供さ。ナタリアが、君の兄の結婚式に出たいと思っていると知って、我慢していたんだよ。」

「え!?」

「だってさ、遠くまで馬車で走るって、お腹に子がいたら響いて良くないだろう?」

「え、ええと…。」

「ああ、でも今度はダミアンが結婚するかぁ…でももう俺、我慢できないなぁ。」

 そう言ったウカーシュ様は、動いている馬車の中であるのに私の隣に座り直して、手を握り出した。

「どうかなぁ?ナタリアはまだ嫌かい?あ、もしどうしてもなら、良い方法があるよ。ナタリアがお腹の子に負担がかかりませんようにって祈るのさ。そうすれば、馬車で長時間移動してもきっと大丈夫じゃないかなぁ?」

「もう!私が祈っても、力が無いのですから意味ありませんわ!…でも、そうですね。私も、ウカーシュ様と…。」

「そう?最近は一緒のベッドで寝ていても触れたくて仕方なかったんだよ。その時を楽しみにしててね。あ、今日は来る時にも泊まった宿に泊まろうか。部屋も広いし、楽しみだね!」

 ダミアン兄様の結婚式はまだ先だと言っていた。でももし、行けなかったら遠く離れたチェルウィンスキー領で、幸せになりますようにと祈りましょうか。

 だって私もウカーシュ様と一緒のベッドで寝ている時、もっとくっつきたいなとも思っていたの。それに…私もウカーシュ様との赤ちゃん、欲しいかもと思ってしまったわ。






ーーー
ーー


 ダミアン兄様の結婚式は、ピオトル兄様の結婚式から四カ月後でした。
もっと早くしたいと、ウツィア様が実は随分前から言われていたそうなのですが、お父様の公爵様がそれを許さなかったそうです。『ウツィアは気が強い。だから今まで相手が居なかった。ダミアン殿が相手ならうまく行くとは思うし、早く引き取って欲しいとも思う。が、相性をもう少し見てくれ。』と懇願されたのだそう。ダミアン兄様は、『まぁ、もう一緒に暮らしているし、義父様に言われたら仕方ないさ。』と笑って言っていたそう。お父様からの手紙でそう書いてあったわ。


 そして案の定というか、何というか。私はお腹に赤ちゃんがいる。

 だから、ダミアン兄様とウツィア様の結婚式には行けないの。まだ安定期には入っていなくて、お腹に負担を掛けると良くないのですって。
公爵家の娘の結婚であるから、ピオトル兄様と同じ王立神殿で結婚式を挙げるのだそう。


 本音を言えば、私も見に行きたかった。
けれど、お腹の赤ちゃんも大切にしたいの。ウカーシュ様とのお子であるのだから。





「そろそろ、結婚式が始まった時間かしら。」

「あぁ。そうだな。その…済まないな、見に行けなくて。」

 ウカーシュ様と私は、テラスでザルーツ国の方角の空を見上げながら話しています。今日は紅茶ではなくて、チェルウィンスキー産のブドウジュースとオレンジジュースを飲んでいるの。
この領地は、私が来る前までは大雨が良くあると言っていたけれど、私が来てからはないのよ。きっとピオトル兄様のおかげなのね。
大雨がなくなったので、収穫量の見通しがつきやすいらしいわ。そして、こうやって出荷しない分は領地で分配出来るまでに収穫量が増えたみたい。
とってもおいしいもの。嬉しいわ!でも飲み過ぎないようにしないといけないけれど。


「まぁ!…こればかりは、天の定めですわ。この子が、私達の元へ来てくれたのです。大事にしませんと。」

「そうだな。ダミアンの幸せを祈ろう。」

「ええ。」


 ダミアン兄様、私は遠く離れたこの地から、お祈りしております。どうぞ、末永くお幸せに。そして、フォルヒデン領が、皆さんが、幸福でありますようにーーー。


ドーン!キラキラキラ…

「あ、ナタリア!空に華が咲いたよ!」

 私は瞑っていた目を開くと、空に、ピオトル兄様の結婚式と同じように空に虹色の大きな華が幾つも咲いた。

「本当だわ!綺麗…。また、ピオトル兄様かしらね!」

「………そうだな。ナタリアよ、俺は君をこれからも守っていくからね。あ、もちろん、お腹の子も。」

「ふふふ。ありがとう。私も、ウカーシュ様と一緒にいつまでもいたいわ。何もできないけれど、せめて祈っておりますわ。」

「ああ。ナタリアはそれでいいんだ。愛しているよ。…そろそろ、ウカーシュと呼んで欲しいけれどね。」

「…ウカーシュ、私もですわ、愛しています。」


 いつまでも空には、光輝く大きな華が咲き乱れていた。







☆★☆★

これで終わりです。長くなりましたが、読んで下さいましてありがとうございました。

しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、感想をくれた方ありがとうございました。

拙い文章ではありますが、過去の作品、また新しく書く作品も読んで下さると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

小澤りかこ
2022.02.21 小澤りかこ

最後まで一気に読みました。
幸せな世界でした。みんなが優しくて幸せな流れが好きです❤️
優しい気持ちで読み終われました🎵

まりぃべる
2022.02.24 まりぃべる

小澤りかこ様、返信遅くなりすみません。。。感想ありがとうございます!

そう言って下さいまして、とっても嬉しいです(*´︶`*)
作者冥利に尽きます(≧ヮ≦)

最後までお読み下さり、ありがとうございましたo(*´︶`*)o

解除
とまとさん
2022.02.01 とまとさん
ネタバレ含む
まりぃべる
2022.02.01 まりぃべる

とまと様、今回もありがとうございます。

いつも考察などありがとうございます(o^^o)

ひねりのない、彼女の日常な話なのですが読んでもらえたら嬉しいです!(^^)!

解除

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか

佐藤醤油
ファンタジー
 主人公を神様が転生させたが上手くいかない。  最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。 「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」  そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。  さあ、この転生は成功するのか?  注:ギャグ小説ではありません。 最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。 なんで?  坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】いわくつき氷の貴公子は妻を愛せない?

白雨 音
恋愛
婚約間近だった彼を親友に取られ、傷心していた男爵令嬢アリエルに、 新たな縁談が持ち上がった。 相手は伯爵子息のイレール。彼は妻から「白い結婚だった」と暴露され、 結婚を無効された事で、界隈で噂になっていた。 「結婚しても君を抱く事は無い」と宣言されるも、その距離感がアリエルには救いに思えた。 結婚式の日、招待されなかった自称魔女の大叔母が現れ、「この結婚は呪われるよ!」と言い放った。 時が経つ程に、アリエルはイレールとの関係を良いものにしようと思える様になるが、 肝心のイレールから拒否されてしまう。 気落ちするアリエルの元に、大叔母が現れ、取引を持ち掛けてきた___  異世界恋愛☆短編(全11話) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

クッカサーリ騒動記

結城鹿島
ファンタジー
大国の中に存在する超小国クッカサーリの若き女王ティルダ、議会のために議場へ赴くも、そこに待ち受けていたのは一枚の紙きれ。そこにはこう記されていた。――『女王自身で我々全員を見つけなければ議会には出席しない。なお期限は明日の昼まで』。 女王と侍従のなんてことのない日々の話。

【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。