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5. ピオトル兄様のいない生活
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ピオトル兄様がいないフォルヒデン領の屋敷はとても静かです。
今まで、五歳の私にいつも近くにいて遊んでくれていたのに、それがいないのですもの。
…いえ、それまで一緒に毎日遊んでくれていたのが、本当は不思議な程でした。
ピオトル兄様は八歳でしたから、もう少しお勉強されないのかなとは、五歳の私でさえ思っていたのです。
私も少しずつ侍女のジャネタに読み書きや算術や地理や国の歴史などを教わったりしていたのです。すると、
「ナタリア、まだそんな事習わなくてもいいじゃないか。お前にはまだ早いよ。さぁ、オレと一緒に遊ぼうぜ!」
「ピオトル様、早くはありませんよ。ではピオトル様もご一緒にお教えしますからナタリア様の隣へお座り下さい。」
「え?やだよー、オレ、じゃあナタリアの為に美味しい果実でも取ってきてやるよ!」
「ピオトル兄様、私も一緒に行きたいです。けれど、ピオトル兄様と一緒にお勉強出来るともっと嬉しいです!」
「…そうか?まぁ、ナタリアにそう言われちゃあしょうがないな!よし、ジャネタ、適当にやってくれ。」
そう言ってたいてい私の隣に座ってくれます。でも…。
「…ピオトル様、ピオトル様?聞いておられますか?」
「もう!ピオトル兄様、寝ていらしたでしょう?ほら見て下さい。私、書けましたよ!」
「…ん?お!上手く書けているじゃないか!すごいすごい!ナタリアは素晴らしいなぁ!」
コンコンコン
「やぁ、ナタリア。あ、ピオトルも。ここにいたのかい?ピオトルの侍従が探していたよ。また勉強をサボったんだろう?」
「やだなぁ兄様、変な事言わないで下さいよ!オレはちゃんとナタリアと一緒に学んでいたよ。なぁ?」
「ナタリアは五歳なんだから、まだ勉強も初級だろう。ピオトルはナタリアより三歳年上なんだから、中級くらいやれるようになってくれないと。」
「そんなの、何の役にも立たないじゃないか。オレは、そんなもの必要ないんだ!イノリコになれば、イノリバで国の為を思って祈っていれば一生裕福に暮らせるんだからな!」
「ピオトル兄様、でも一生出られないのではないですか?」
「王族の次に敬う地位になれるなら、出られなくてもいいんじゃないか?仕事であれば、外へ行けるだろうし。そうなったら、会えなくなるし今のうちにどんどんオレに甘えとけー?」
「ピオトル…まず、イノリコになれるのか分からないだろう?それに、イノリコになるとしても教養くらいは覚えておかねば。」
「何言っているんだよ!前回はまだ幼かったから、上手く発揮出来なかっただけだって!大丈夫、次は上手くいくからさー!」
そんな風に、いつも賑やかでしたね。それも、もうピオトル兄様がいなくなりましたから…寂しさもありますが、実はとても静かで、なんだかやりやすいです。
ダミアン兄様は、お父様に少しずつ領地の経営を学んでいるそうで第二執務室で忙しくされているご様子。
ジャネタの教え方が上手だからでしょうか。私も、教えてくれるものは面白い!と思ってどんどん学びたくなるのよね。
他の時間は図書室で本を読んだり、庭園で遊んだり、屋敷の近くを歩いたりして過ごしています。近くの森には、小動物もいてよく見に行ったりもしているわ。
お母様は半年ほど前に亡くなってしまったからそれからはよくピオトル兄様が近くにいてくれたの。お父様もダミアン兄様も忙しそうだからかしら。
でも、今はどこへ行くにもジャネタと一緒よ。十二歳年上のジャネタは、いつも傍にいてくれて、私を励ましてくれたりもするの。姉がいたらこんな感じなのかもしれないわね。
今まで、五歳の私にいつも近くにいて遊んでくれていたのに、それがいないのですもの。
…いえ、それまで一緒に毎日遊んでくれていたのが、本当は不思議な程でした。
ピオトル兄様は八歳でしたから、もう少しお勉強されないのかなとは、五歳の私でさえ思っていたのです。
私も少しずつ侍女のジャネタに読み書きや算術や地理や国の歴史などを教わったりしていたのです。すると、
「ナタリア、まだそんな事習わなくてもいいじゃないか。お前にはまだ早いよ。さぁ、オレと一緒に遊ぼうぜ!」
「ピオトル様、早くはありませんよ。ではピオトル様もご一緒にお教えしますからナタリア様の隣へお座り下さい。」
「え?やだよー、オレ、じゃあナタリアの為に美味しい果実でも取ってきてやるよ!」
「ピオトル兄様、私も一緒に行きたいです。けれど、ピオトル兄様と一緒にお勉強出来るともっと嬉しいです!」
「…そうか?まぁ、ナタリアにそう言われちゃあしょうがないな!よし、ジャネタ、適当にやってくれ。」
そう言ってたいてい私の隣に座ってくれます。でも…。
「…ピオトル様、ピオトル様?聞いておられますか?」
「もう!ピオトル兄様、寝ていらしたでしょう?ほら見て下さい。私、書けましたよ!」
「…ん?お!上手く書けているじゃないか!すごいすごい!ナタリアは素晴らしいなぁ!」
コンコンコン
「やぁ、ナタリア。あ、ピオトルも。ここにいたのかい?ピオトルの侍従が探していたよ。また勉強をサボったんだろう?」
「やだなぁ兄様、変な事言わないで下さいよ!オレはちゃんとナタリアと一緒に学んでいたよ。なぁ?」
「ナタリアは五歳なんだから、まだ勉強も初級だろう。ピオトルはナタリアより三歳年上なんだから、中級くらいやれるようになってくれないと。」
「そんなの、何の役にも立たないじゃないか。オレは、そんなもの必要ないんだ!イノリコになれば、イノリバで国の為を思って祈っていれば一生裕福に暮らせるんだからな!」
「ピオトル兄様、でも一生出られないのではないですか?」
「王族の次に敬う地位になれるなら、出られなくてもいいんじゃないか?仕事であれば、外へ行けるだろうし。そうなったら、会えなくなるし今のうちにどんどんオレに甘えとけー?」
「ピオトル…まず、イノリコになれるのか分からないだろう?それに、イノリコになるとしても教養くらいは覚えておかねば。」
「何言っているんだよ!前回はまだ幼かったから、上手く発揮出来なかっただけだって!大丈夫、次は上手くいくからさー!」
そんな風に、いつも賑やかでしたね。それも、もうピオトル兄様がいなくなりましたから…寂しさもありますが、実はとても静かで、なんだかやりやすいです。
ダミアン兄様は、お父様に少しずつ領地の経営を学んでいるそうで第二執務室で忙しくされているご様子。
ジャネタの教え方が上手だからでしょうか。私も、教えてくれるものは面白い!と思ってどんどん学びたくなるのよね。
他の時間は図書室で本を読んだり、庭園で遊んだり、屋敷の近くを歩いたりして過ごしています。近くの森には、小動物もいてよく見に行ったりもしているわ。
お母様は半年ほど前に亡くなってしまったからそれからはよくピオトル兄様が近くにいてくれたの。お父様もダミアン兄様も忙しそうだからかしら。
でも、今はどこへ行くにもジャネタと一緒よ。十二歳年上のジャネタは、いつも傍にいてくれて、私を励ましてくれたりもするの。姉がいたらこんな感じなのかもしれないわね。
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