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3. 神殿内部へ
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「やったー!やったぜ!!」
ピオトル兄様は念願だったからか、普段の振る舞いも言葉遣いも忘れ、飛び跳ねて喜んでいるわ。…普段の言葉遣いも、こんな庶民的ではあった気もするけれど。
「あいつ…!」
「…!」
ダミアン兄様とお父様は、頭を抱えているわ。
大勢の前で、貴族であるのにあんなはしゃぎ方少しはしたないからかもしれないわね。でも、念願だったのだから大目に見てあげて欲しいわ。
他の観客からは、『凄い…!』『なんだったんだあれは。』と言う声が聞こえていた。
「では、これからの事を説明致します。ピオトル様、こちらへ。お連れ様が居られる場合は、案内致しますので近くの神官へ仰って下さい。」
「いるいる、いるぜ!オレの勇姿を見に来てくれたんだ!おーい、ナタリア-!父上-!兄上-!やったぞオレは!!早く降りて来てくれよな!やった!やったよ、母上-!」
こちらを向いて、ピオトル兄様は大きく手を、体を左右に揺らし、焦げ茶色で癖毛のある髪をさらに乱しながら言った。
最後は、空を見上げて両腕を高く上げている。きっと、天の国のお母様に向けているのかしら。
もう、なんだかピオトル兄様の独壇場ね…。お父様とダミアン兄様は『早く行こう』と言って顔を俯きながら進んで行く。
観客も、笑っている人や『良かったな!』『本当、とても嬉しそうね!』などと声を掛けて下さる人もいた。
私も大目に見られなくなってきたわと思いながら慌てて、その場を去った。
観客席を出ると、神官が壁際に等間隔で立っていた。その内の一人にお父様が声を掛けると、『こちらです。』と言って案内してくれた。
広場を横目に通り過ぎ、神殿の建物の中へと入って行く。
この神殿は初めて来た為、少し周りをキョロキョロとしてしまう。
柱は太く、白い色をした円柱で、天井までとても高く伸びている。
そしてとても清々しく、ヒンヤリとした心地よい風が私の頬を撫でるように優しく吹いている。
長く真っ直ぐ伸びた広い廊下を、コツコツと足音を響かせながら進んでいく。
「どうぞ、こちらへお入り下さい。」
案内された部屋は、とても小さな部屋だった。
木製で出来た机が置いてあり、それを挟んで簡素な木製のイスが一つずつあった。そこに、ピオトル兄様がすでに座っていた。
「やっと来た!父上!今回は、発揮出来ましたよ、どうです?オレ、頑張ったでしょう?」
「…そうだな、よくやった。」
「ピオトル兄様、すごかったですわ!眩しくて、前が見えなくなりましたもの。」
私も、ピオトル兄様をそう言って労った。
「そうだろう!オレはすごいんだぞ!何てったって、イノリコとして認定されたんだからな!王族の次に偉いんだぞ!…兄上、どうです?オレ、フォルヒデン領をこれからも繁栄するよう祈ってやりますからね!兄上はいつか領主として、頑張って下さいよ!」
「…あぁ。ピオトル、よくやった。だが、フォルヒデン伯爵の息子として、相応しい振る舞いと言葉遣いをしろよ。」
「全く…兄上、いいですか?言ったでしょう?オレはイノリコになるんですよ?王族の次に敬うべき存在なんですから、オレがどんな風でも敬われる存在なのは変わりないだろ?」
「そんなんじゃダメだろ。イノリコは一人ではない。」
「それは知っているさ!でも、見たろ?あんな眩しく輝かしい光、オレがすごい力の持ち主だって証拠じゃん?」
「…。」
「ピオトル兄様、確かに素晴らしいです!けれど、やはり素晴らしい人物というのは、振る舞いも誰から見ても素晴らしいと思うのです。言葉遣いだって、そうですわ。ピオトル兄様は、他の地方が作物があまり穫れなかったのに唯一豊作であった誇り高いフォルヒデン領の出身なのですもの。自信を持って、フォルヒデンで学んだ振る舞いを忘れないで下さいませ。お願い致します!」
「む…?うーん…ナタリアに言われると…仕方ないな。ナタリア、貴族の言葉遣いや振る舞いは面倒で煩わしいのだが、お前が言うから少し、考えてみるよ。オレは、お前の誇れる兄だからな!」
ガハハと大きく笑ったピオトル兄様に、呆れた顔のお父様とダミアン兄様はそれ以上声を掛けなかった。
ピオトル兄様は念願だったからか、普段の振る舞いも言葉遣いも忘れ、飛び跳ねて喜んでいるわ。…普段の言葉遣いも、こんな庶民的ではあった気もするけれど。
「あいつ…!」
「…!」
ダミアン兄様とお父様は、頭を抱えているわ。
大勢の前で、貴族であるのにあんなはしゃぎ方少しはしたないからかもしれないわね。でも、念願だったのだから大目に見てあげて欲しいわ。
他の観客からは、『凄い…!』『なんだったんだあれは。』と言う声が聞こえていた。
「では、これからの事を説明致します。ピオトル様、こちらへ。お連れ様が居られる場合は、案内致しますので近くの神官へ仰って下さい。」
「いるいる、いるぜ!オレの勇姿を見に来てくれたんだ!おーい、ナタリア-!父上-!兄上-!やったぞオレは!!早く降りて来てくれよな!やった!やったよ、母上-!」
こちらを向いて、ピオトル兄様は大きく手を、体を左右に揺らし、焦げ茶色で癖毛のある髪をさらに乱しながら言った。
最後は、空を見上げて両腕を高く上げている。きっと、天の国のお母様に向けているのかしら。
もう、なんだかピオトル兄様の独壇場ね…。お父様とダミアン兄様は『早く行こう』と言って顔を俯きながら進んで行く。
観客も、笑っている人や『良かったな!』『本当、とても嬉しそうね!』などと声を掛けて下さる人もいた。
私も大目に見られなくなってきたわと思いながら慌てて、その場を去った。
観客席を出ると、神官が壁際に等間隔で立っていた。その内の一人にお父様が声を掛けると、『こちらです。』と言って案内してくれた。
広場を横目に通り過ぎ、神殿の建物の中へと入って行く。
この神殿は初めて来た為、少し周りをキョロキョロとしてしまう。
柱は太く、白い色をした円柱で、天井までとても高く伸びている。
そしてとても清々しく、ヒンヤリとした心地よい風が私の頬を撫でるように優しく吹いている。
長く真っ直ぐ伸びた広い廊下を、コツコツと足音を響かせながら進んでいく。
「どうぞ、こちらへお入り下さい。」
案内された部屋は、とても小さな部屋だった。
木製で出来た机が置いてあり、それを挟んで簡素な木製のイスが一つずつあった。そこに、ピオトル兄様がすでに座っていた。
「やっと来た!父上!今回は、発揮出来ましたよ、どうです?オレ、頑張ったでしょう?」
「…そうだな、よくやった。」
「ピオトル兄様、すごかったですわ!眩しくて、前が見えなくなりましたもの。」
私も、ピオトル兄様をそう言って労った。
「そうだろう!オレはすごいんだぞ!何てったって、イノリコとして認定されたんだからな!王族の次に偉いんだぞ!…兄上、どうです?オレ、フォルヒデン領をこれからも繁栄するよう祈ってやりますからね!兄上はいつか領主として、頑張って下さいよ!」
「…あぁ。ピオトル、よくやった。だが、フォルヒデン伯爵の息子として、相応しい振る舞いと言葉遣いをしろよ。」
「全く…兄上、いいですか?言ったでしょう?オレはイノリコになるんですよ?王族の次に敬うべき存在なんですから、オレがどんな風でも敬われる存在なのは変わりないだろ?」
「そんなんじゃダメだろ。イノリコは一人ではない。」
「それは知っているさ!でも、見たろ?あんな眩しく輝かしい光、オレがすごい力の持ち主だって証拠じゃん?」
「…。」
「ピオトル兄様、確かに素晴らしいです!けれど、やはり素晴らしい人物というのは、振る舞いも誰から見ても素晴らしいと思うのです。言葉遣いだって、そうですわ。ピオトル兄様は、他の地方が作物があまり穫れなかったのに唯一豊作であった誇り高いフォルヒデン領の出身なのですもの。自信を持って、フォルヒデンで学んだ振る舞いを忘れないで下さいませ。お願い致します!」
「む…?うーん…ナタリアに言われると…仕方ないな。ナタリア、貴族の言葉遣いや振る舞いは面倒で煩わしいのだが、お前が言うから少し、考えてみるよ。オレは、お前の誇れる兄だからな!」
ガハハと大きく笑ったピオトル兄様に、呆れた顔のお父様とダミアン兄様はそれ以上声を掛けなかった。
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