8 / 10
8. 願い
しおりを挟む
「願い…?」
「そうだ。見て分からぬか。この社、綺麗にされてはおるがいかんせん参拝客がさっぱりじゃ。無論、この土地に昔から住む年配のやつらは気が向いた時に来てはくれるが、それだけじゃ淋しい。だから、もっとここに人が来るようになって欲しい。それが我の願いじゃ、それから、牛乳をたまに、供物として奉納してくれると尚よしじゃ。」
「牛乳、体に悪くはなかったです?気に入ってくれたんですか?」
「あれは旨い!酒もいいが、酒は年配のやつらがいつも持ってきてくれる。それだけじゃ物足りんのじゃ。牛乳は旨い!格別じゃ!」
ふふふ。猫の氏神様だからかしら?牛乳を気に入ってくれたのね。
「ふぅむ…楓は、迷っとるんか。仕事を続けるか、帰ってくるか。」
私が笑っていると、氏神様は顎に手を当てて何やら言い出した。
「…分かるんですか?」
「我は氏神よ。氏子の事が分からんでどうする。楓の好きなようにするといいぞ。…む、なるほどな。結婚したいとあらば…そうじゃの、役所に勤める、猫石なんて言ったか…あ、樹!あいつはどうだ?同級生だったな。やつは、楓を好いておるぞ。楓もまんざらでもなければ、やつと結婚すればいい。」
「な…な…!」
私が中学の頃、好きになった唯一の人の名前…!なぜ氏神様が!?そこまでも分かっちゃうの??
それに、なぜ今更…結局、中学時代に話を良くしたけれど、告白も出来なかったのに。
まぁ、小学生の時から同級生もほとんど変わらなかったし、お互いに親戚みたいなものだったのよね。
何故好きになったかというのも、樹が話し掛けてきて、ちょうど私の好きなアイドルの話で盛り上がったのがきっかけで仲良くなって。それからちょくちょく話して、でも、私にはそれ以上の関係になる勇気もなく、告白が出来なかった。
「樹はな、女々しい男よ。未だに楓を想うておる。ま、一途ともいうわな。ええ男になっとるぞ。どうだ?」
どうだと言われても…。
「楓の好きにせいとは言っても、楓が帰ってくると我は嬉しい。我には牛乳がかかっておるからの。ま、すぐじゃなく、楓がいいと思うまでやってきたらええて。この土地で、この社に人を増やしてくれたら我は、今まで楓に格別の加護を付けてきたがこれからも付けてやるぞ。」
え!?加護?
もしかして、大学でもそれなりに単位を落とさずに卒業出来、有名な企業に就職出来たのは、氏神様のおかげ!?
「我に牛乳やおやつをくれたからの。おかげで、我は一時丸々と太ってしまったわ。あの時は幸せじゃったよ。だから、この土地に住んでいる氏子には皆加護を付けるが、楓には格別なものをちょいとな。もちろん、楓の実力がなきゃ、出世なんぞ出来るもんじゃない。大学とやらも受からん。我の加護は、零を百にする事は出来ん。その辺りは楓の実力じゃ。」
「氏神様…ありがとうございます。」
私、そんなすごい人におやつや牛乳をほいほいあげていたのね…。よかったわ、逆鱗に触れなくて。
「よいよい。む?誰か来たな。いいな、我の言葉、ゆめゆめ忘れるでないぞ。」
そう言うと、氏神様はまた元の猫に戻った。
「そうだ。見て分からぬか。この社、綺麗にされてはおるがいかんせん参拝客がさっぱりじゃ。無論、この土地に昔から住む年配のやつらは気が向いた時に来てはくれるが、それだけじゃ淋しい。だから、もっとここに人が来るようになって欲しい。それが我の願いじゃ、それから、牛乳をたまに、供物として奉納してくれると尚よしじゃ。」
「牛乳、体に悪くはなかったです?気に入ってくれたんですか?」
「あれは旨い!酒もいいが、酒は年配のやつらがいつも持ってきてくれる。それだけじゃ物足りんのじゃ。牛乳は旨い!格別じゃ!」
ふふふ。猫の氏神様だからかしら?牛乳を気に入ってくれたのね。
「ふぅむ…楓は、迷っとるんか。仕事を続けるか、帰ってくるか。」
私が笑っていると、氏神様は顎に手を当てて何やら言い出した。
「…分かるんですか?」
「我は氏神よ。氏子の事が分からんでどうする。楓の好きなようにするといいぞ。…む、なるほどな。結婚したいとあらば…そうじゃの、役所に勤める、猫石なんて言ったか…あ、樹!あいつはどうだ?同級生だったな。やつは、楓を好いておるぞ。楓もまんざらでもなければ、やつと結婚すればいい。」
「な…な…!」
私が中学の頃、好きになった唯一の人の名前…!なぜ氏神様が!?そこまでも分かっちゃうの??
それに、なぜ今更…結局、中学時代に話を良くしたけれど、告白も出来なかったのに。
まぁ、小学生の時から同級生もほとんど変わらなかったし、お互いに親戚みたいなものだったのよね。
何故好きになったかというのも、樹が話し掛けてきて、ちょうど私の好きなアイドルの話で盛り上がったのがきっかけで仲良くなって。それからちょくちょく話して、でも、私にはそれ以上の関係になる勇気もなく、告白が出来なかった。
「樹はな、女々しい男よ。未だに楓を想うておる。ま、一途ともいうわな。ええ男になっとるぞ。どうだ?」
どうだと言われても…。
「楓の好きにせいとは言っても、楓が帰ってくると我は嬉しい。我には牛乳がかかっておるからの。ま、すぐじゃなく、楓がいいと思うまでやってきたらええて。この土地で、この社に人を増やしてくれたら我は、今まで楓に格別の加護を付けてきたがこれからも付けてやるぞ。」
え!?加護?
もしかして、大学でもそれなりに単位を落とさずに卒業出来、有名な企業に就職出来たのは、氏神様のおかげ!?
「我に牛乳やおやつをくれたからの。おかげで、我は一時丸々と太ってしまったわ。あの時は幸せじゃったよ。だから、この土地に住んでいる氏子には皆加護を付けるが、楓には格別なものをちょいとな。もちろん、楓の実力がなきゃ、出世なんぞ出来るもんじゃない。大学とやらも受からん。我の加護は、零を百にする事は出来ん。その辺りは楓の実力じゃ。」
「氏神様…ありがとうございます。」
私、そんなすごい人におやつや牛乳をほいほいあげていたのね…。よかったわ、逆鱗に触れなくて。
「よいよい。む?誰か来たな。いいな、我の言葉、ゆめゆめ忘れるでないぞ。」
そう言うと、氏神様はまた元の猫に戻った。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
天狐の上司と訳あって夜のボランティア活動を始めます!※但し、自主的ではなく強制的に。
当麻月菜
キャラ文芸
ド田舎からキラキラ女子になるべく都会(と言っても三番目の都市)に出て来た派遣社員が、訳あって天狐の上司と共に夜のボランティア活動を強制的にさせられるお話。
ちなみに夜のボランティア活動と言っても、その内容は至って健全。……安全ではないけれど。
※文中に神様や偉人が登場しますが、私(作者)の解釈ですので不快に思われたら申し訳ありませんm(_ _"m)
※12/31タイトル変更しました。
他のサイトにも重複投稿しています。
神様の学校 八百万ご指南いたします
浅井 ことは
キャラ文芸
☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:
八百万《かみさま》の学校。
ひょんなことから神様の依頼を受けてしまった翔平《しょうへい》。
1代おきに神様の御用を聞いている家系と知らされるも、子どもの姿の神様にこき使われ、学校の先生になれと言われしまう。
来る生徒はどんな生徒か知らされていない翔平の授業が始まる。
☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:
※表紙の無断使用は固くお断りしていただいております。
憑拠ユウレイ
音音てすぃ
キャラ文芸
ーーー憑拠ユウレイーーー
「音希田君、あなたが最後の一人なんですよ!」
その一言から僕は新聞部(オカルト研)に入ることになった。
部員に振り回されながらも不思議な体験をする主人公、音希田 廻(おときた まわる)の一年間の物語。
ーーー 涼味エイプリル ーーー
まだ涼しい四月。奇妙な噂と奇抜な手紙。
この物語が僕の高校生活の全ての基盤となる。
ちょっと短い物語。
ーーー 殺人チェーンソー ーーー
僕も高校生になり、五月になりました。
涼しい四月はどこへ行ったのだろう。
葛城が連れてきたある人物により、僕は事件に巻き込まれる。
ちょっと残念な友情の物語。
ーーー 体育リバース ーーー
六月となり体育大会がはじまる。
そんな中、葛城から語られる不思議な話。
忘れられた人達のちょっと悲しい物語。
ーーー 爪痕アクター ーーー
初めての長期休暇、夏休みが始まった。
七月末まで僕はパシリ。
現代が引き起こす脅威とは。
ちょっと血なまぐさい物語。
ーーー 花火コンテニュー ーーー
ある日、巡に誘われた花火大会。
僕が忘れていた中学の後輩と過ごす奇妙な時間。
ちょっと綺麗な物語。
ーーー 秋空メモリー ーーー
高校生活初めての文化祭。
しなければいけないことと、したいことが多すぎて、困ってしまう。
そんな中で起こる 不思議なこととは。
ちょっと寂しい物語。
ーーー忘却ゴーストーーー
十一月になり誕生日を祝ってもらえず、いじけて外に散歩に出かけた廻君。
そこで出会う足を失った少女。
ちょっとやるせない物語。
ーーー憑拠リスタートーーー
十二月、まだ雪は降らない。
僕以外の家族は揃ってお出かけ。
そんな中起こる黒幕との最終戦。
ちょっと死ぬ物語。
ーーー自分コメントーーー
初めての小説です。楽しんで書いています。
タイトルに「ユウレイ」とありますが、ホラー要素は四割ほどです。
日常を少しオカルト風にアレンジしたような作品にしようと頑張っています!
少し暴力シーンがあります。そこらへん気を付けてください。
注意!転生もしません。異世界もあんまりありません。
各章終わり方がスッキリしないと思いますが、それもこのお話の特徴だと思っていただきたいです。
物語は、全てを通してフィクション?です。
ブラックベリーの霊能学
猫宮乾
キャラ文芸
新南津市には、古くから名門とされる霊能力者の一族がいる。それが、玲瓏院一族で、その次男である大学生の僕(紬)は、「さすがは名だたる天才だ。除霊も完璧」と言われている、というお話。※周囲には天才霊能力者と誤解されている大学生の日常。
三度目の創世 〜樹木生誕〜
湖霧どどめ
キャラ文芸
国単位で起こる超常現象『革命』。全てを無に帰し、新たなる文明を作り直す為の…神による手段。
日本で『革命』が起こり暫く。『新』日本は、『旧』日本が遺した僅かな手掛かりを元に再生を開始していた。
ある者は取り戻す為。ある者は生かす為。ある者は進む為。
--そして三度目の創世を望む者が現れる。
近未来日本をベースにしたちょっとしたバトルファンタジー。以前某投稿サイトで投稿していましたが、こちらにて加筆修正込みで再スタートです。
お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!
無事完結いたしました。本当に、ありがとうございます。
俺がママになるんだよ!!~母親のJK時代にタイムリープした少年の話~
美作美琴
キャラ文芸
高校生の早乙女有紀(さおとめゆき)は名前にコンプレックスのある高校生男子だ。
母親の真紀はシングルマザーで有紀を育て、彼は父親を知らないまま成長する。
しかし真紀は急逝し、葬儀が終わった晩に眠ってしまった有紀は目覚めるとそこは授業中の教室、しかも姿は真紀になり彼女の高校時代に来てしまった。
「あなたの父さんを探しなさい」という真紀の遺言を実行するため、有紀は母の親友の美沙と共に自分の父親捜しを始めるのだった。
果たして有紀は無事父親を探し出し元の身体に戻ることが出来るのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる