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19. 持ち帰り
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ノラは、自分の部屋がある使用人棟ではなく、王宮にある王族が住む棟に向かった。
「やっぱり、オスカー様の部屋に飾る…?」
私がそう言いながら歩いていると、ロイス様はだんだんと顔が険しくなりながら言った。
「これ以上は、ちょっと上と相談だな。とりあえず、あいつがどこへ行くかだけ確認しよう。」
上って?上司って事かしら?
ノラは、オスカー様の部屋へ入っていった。
「不味いな…まぁ、あれを袋から出してすぐにオスカーに何かするわけではないだろうが、本来であればここで捕縛すれば未然には防げる。しかし、何を目的としているのかが明確にわからなければ…。」
「そうですよね…あ!私入ってきましょうか?」
「何言ってるんだ!そんな危険な事はしなくていい!」
カチャ
私達が、廊下でそう話していると、オスカー様の部屋の扉が空いたのでどうしようと思っているとロイス様は隣の部屋の扉のドアを開け、私をグイッと引き寄せて扉をぎりぎりまで閉めた。
引き寄せられた時、私はロイス様の腕の中に入れられギュッと密着しそのまま腕を肩に置かれたままなので一気に緊張した。
「~~~!」
驚いて声も出ない私とは反対に、ロイス様は扉の隙間から外を覗いていたらしく呟いた。
「あいつだな…ん?手に、緑色の…先ほどのナルシサスの茎か?花だけもぎ取ったのか?ああすると野菜に見えなくもないな。」
ロイス様の呟きに、一人緊張していた私が馬鹿らしくなって体をよじり、私も扉の隙間から外を覗く。なんとなく少しはしたない気もするけれど、幼い頃領地でよくやったかくれんぼを思い出した。隠れていた隙間から鬼が来ないか覗いていたもの…あ!そうよ、衣装部屋へこっそりと入ってオスカー様とノラの会話を盗み聞くとかどうかしら?バレなければ、きっと何か掴めるかもしれないわ!
「私!良いこと思い付きました!」
「ん?なに?また危険な事じゃない?あとで聞くよ。とりあえず、後を追おう。ほら、おいで。」
そう言うと、ロイス様はまた私の手をさも当然のように繋いで部屋を出た。
私達はゆっくりこっそり、ノラに気づかれないように歩く。ノラが角を曲がったりすると急いでそこまで向かう。それを幾度か繰り返すと、厨房に辿り着いた。
急いで厨房室を廊下から覗くと、ノラが当然のように入っていって、『私達使用人用の料理はどこ?』と聞いていた。そしてその近くで調理していた人に、『これ、手に入ったの。入れてくれる?』と言っていた。
王族に出す料理と、使用人に出す料理は分けられている。王宮で働いているとはいえ身分が違いすぎるからだ。
そして、使用人用の料理の材料にはしばしば誰かが持ち込んだものも使われる。家で実っていた果物、野菜なんかはよく皆がここへ持参してくる。
侍女見習いの時に、そのような皆が持参した野菜などを置いておく保管庫を整頓した時があったからそんな感じかと思った。
「そこまでだ!」
こっそり廊下から見ていたと思ったらロイス様がいきなり、厳しい声を上げた。
皆が一斉に振り向き、驚いている。
奥から責任者なのか、白い制服に白い帽子をかぶった五十代くらいの男性が焦ったようにやって来て言った。
「こ、こんな所までどうされました?何か、不備がございましたか?」
「いや。忙しい時間に済まない。とりあえず、お前、動くな!…なんのことはない。おい、そこのお前。持ってきたものはずいぶんと美味しそうな野菜だな。今から入れるのか?どれ、まずお前が一杯食べてみてくれ。」
「え!?」
「ひっ…!」
「どうした。ほら、早くしないと皆の邪魔になる。光栄じゃないか。味見が出来るんだぞ。あ、おい、逃げるな!捕まえろ!待て!」
ノラは、いきなり私達が来たからかなり驚いていた。そして、動くなと言われたのにも関わらず裏口へと行こうとしていた。
でも、ロイス様が『そこのお前!』と、ノラを指を差して言って、味見しろと言われると顔を青くして背中を向け、逃げ出そうとした。
けれど、ロイス様が捕まえろと言ったから料理人の幾人かは裏口に立ったり、足を引っ掛けようとしたり、包丁を持って向かっていく人もいた。
「やめて、放してよ!私を誰だと思っているのよ!オスカー様に言いつけてやるんだから!ちょっと!勝手に触れないで!」
ノラは、腕を掴まれ、罵っているわ。
「さぁ、どうしようかなー。」
ロイス様…顔が怖いですわよ。
「やっぱり、オスカー様の部屋に飾る…?」
私がそう言いながら歩いていると、ロイス様はだんだんと顔が険しくなりながら言った。
「これ以上は、ちょっと上と相談だな。とりあえず、あいつがどこへ行くかだけ確認しよう。」
上って?上司って事かしら?
ノラは、オスカー様の部屋へ入っていった。
「不味いな…まぁ、あれを袋から出してすぐにオスカーに何かするわけではないだろうが、本来であればここで捕縛すれば未然には防げる。しかし、何を目的としているのかが明確にわからなければ…。」
「そうですよね…あ!私入ってきましょうか?」
「何言ってるんだ!そんな危険な事はしなくていい!」
カチャ
私達が、廊下でそう話していると、オスカー様の部屋の扉が空いたのでどうしようと思っているとロイス様は隣の部屋の扉のドアを開け、私をグイッと引き寄せて扉をぎりぎりまで閉めた。
引き寄せられた時、私はロイス様の腕の中に入れられギュッと密着しそのまま腕を肩に置かれたままなので一気に緊張した。
「~~~!」
驚いて声も出ない私とは反対に、ロイス様は扉の隙間から外を覗いていたらしく呟いた。
「あいつだな…ん?手に、緑色の…先ほどのナルシサスの茎か?花だけもぎ取ったのか?ああすると野菜に見えなくもないな。」
ロイス様の呟きに、一人緊張していた私が馬鹿らしくなって体をよじり、私も扉の隙間から外を覗く。なんとなく少しはしたない気もするけれど、幼い頃領地でよくやったかくれんぼを思い出した。隠れていた隙間から鬼が来ないか覗いていたもの…あ!そうよ、衣装部屋へこっそりと入ってオスカー様とノラの会話を盗み聞くとかどうかしら?バレなければ、きっと何か掴めるかもしれないわ!
「私!良いこと思い付きました!」
「ん?なに?また危険な事じゃない?あとで聞くよ。とりあえず、後を追おう。ほら、おいで。」
そう言うと、ロイス様はまた私の手をさも当然のように繋いで部屋を出た。
私達はゆっくりこっそり、ノラに気づかれないように歩く。ノラが角を曲がったりすると急いでそこまで向かう。それを幾度か繰り返すと、厨房に辿り着いた。
急いで厨房室を廊下から覗くと、ノラが当然のように入っていって、『私達使用人用の料理はどこ?』と聞いていた。そしてその近くで調理していた人に、『これ、手に入ったの。入れてくれる?』と言っていた。
王族に出す料理と、使用人に出す料理は分けられている。王宮で働いているとはいえ身分が違いすぎるからだ。
そして、使用人用の料理の材料にはしばしば誰かが持ち込んだものも使われる。家で実っていた果物、野菜なんかはよく皆がここへ持参してくる。
侍女見習いの時に、そのような皆が持参した野菜などを置いておく保管庫を整頓した時があったからそんな感じかと思った。
「そこまでだ!」
こっそり廊下から見ていたと思ったらロイス様がいきなり、厳しい声を上げた。
皆が一斉に振り向き、驚いている。
奥から責任者なのか、白い制服に白い帽子をかぶった五十代くらいの男性が焦ったようにやって来て言った。
「こ、こんな所までどうされました?何か、不備がございましたか?」
「いや。忙しい時間に済まない。とりあえず、お前、動くな!…なんのことはない。おい、そこのお前。持ってきたものはずいぶんと美味しそうな野菜だな。今から入れるのか?どれ、まずお前が一杯食べてみてくれ。」
「え!?」
「ひっ…!」
「どうした。ほら、早くしないと皆の邪魔になる。光栄じゃないか。味見が出来るんだぞ。あ、おい、逃げるな!捕まえろ!待て!」
ノラは、いきなり私達が来たからかなり驚いていた。そして、動くなと言われたのにも関わらず裏口へと行こうとしていた。
でも、ロイス様が『そこのお前!』と、ノラを指を差して言って、味見しろと言われると顔を青くして背中を向け、逃げ出そうとした。
けれど、ロイス様が捕まえろと言ったから料理人の幾人かは裏口に立ったり、足を引っ掛けようとしたり、包丁を持って向かっていく人もいた。
「やめて、放してよ!私を誰だと思っているのよ!オスカー様に言いつけてやるんだから!ちょっと!勝手に触れないで!」
ノラは、腕を掴まれ、罵っているわ。
「さぁ、どうしようかなー。」
ロイス様…顔が怖いですわよ。
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