13 / 33
13. そのキノコ
しおりを挟む
「そう…なるほどね…。」
あの後、部屋にいたアグネス様に見てきた事を話すと、腰に手を当ててしばらく考えていた。
でもすぐに昼食となり食堂で食べているといつの間にかロイス様が私の隣に座って言った。
「それが終わったら、来て欲しい。」
三週間弱会わなかったけれど、やはり格好いいわ、そう思いながら少し早めに食事を終わらせた。
今日は三階の階段を上った右側の一番奥の部屋に案内された。
アグネス様もいて、少し緊張された面持ちだった。
「困った事になったわ。」
アグネス様は開口一番に、渋い顔でそう言ってため息をついた。
「使用人達が食べる食事に、盛られたの。」
「え!?」
「それでも、めまいや寒気や震えなどの神経系の毒だったらしいけれどね。食べた時に舌にピリッとくるみたいで、気になって食べなかった人もいるみたいだけれど、普通に完食した人もいて。その人達は幻覚や幻聴、異常な興奮を覚えている人もいて…。鎮静作用のあるお茶を飲んでとりあえず今は落ち着いているらしいわ。」
「…!」
「でも、どうしてそうなったのかはまだ調査中。関連が有るのかは分からないけれど、ステイシーが先ほど見たキノコ、どんなものか一緒に見に行って欲しいのだけれどいいかしら?」
「はい。」
なんだか、背中がひんやりとした。
「この辺りに生えていました。ノラも、探すのに苦労していた様子でした。」
「そう…じゃああまり生えていないのかもしれないわね。」
「あ、これかな?」
ロイス様が、足元の木の根元にあった膨らんだようなところを指差した。
「あ!似てます。それかも。」
「これ?…ちょっと念のために取ってみましょう。」
アグネス様は、念のためにと言って手袋を二重にしてスコップでコンコンとキノコの軸を叩きながら持ってきたバケツに入れた。
「ちょっと詳しい人に見てもらうわ。一緒に来てちょうだい。」
そうアグネス様に言われ、ロイス様と一緒について行った。
そこは、王宮の中にある薬草省の部屋だった。
私は、侍女見習いの頃に部屋や廊下の通り方は覚えたけれど、その部屋が何をやっているかまでは覚える必要が無かった為今まで知らなかった。
薬草省は、薬草を元に薬を作る機関だ。
「薬草に詳しいでしょう?キノコはどう?」
「専門外でして…ん?これは…!」
薬草省の統括大臣はそのキノコをしばらく見て口を開いた。
「もしかしたら、〝陶酔のキノコ〟かもしれませんな。」
「「陶酔のキノコ?」」
なんでしょうそれは?
「陶酔のキノコとは、文字通り陶酔させたい相手に食べさせるもの。そうすると、食べたものは料理を作ってくれた人を陶酔し、気に入ったり愛するようになるのだと。一説には〝媚薬のキノコ〟とも言われます。なんでも、キノコを触った事によってその人の想いがキノコに伝わり増幅し、食べた時にその想いが愛おしい人だと思わせるのだとか。まぁ、じきに効き目が切れるから、悪巧みしなければ問題ないキノコですな。」
「そんなものが…。」
だからノラは私に触らないでと言ったのね。
「で、神経系の毒性は?」
「んー、その陶酔させた事が神経に及んだと言えばあるいは…いや、ないですな。まずないはずですよ。」
「そうですか…。」
「!」
えと…じゃあノラは誰かを陶酔させたくてあのキノコを取った?
たまたま、食事に毒が盛られたのは重なっただけ?関係ないの?
「これだと思ったのだけれど。」
「犯人は別にいるって事だな。」
「そのようですな。」
じゃあ一体、誰が、何の為に?
あの後、部屋にいたアグネス様に見てきた事を話すと、腰に手を当ててしばらく考えていた。
でもすぐに昼食となり食堂で食べているといつの間にかロイス様が私の隣に座って言った。
「それが終わったら、来て欲しい。」
三週間弱会わなかったけれど、やはり格好いいわ、そう思いながら少し早めに食事を終わらせた。
今日は三階の階段を上った右側の一番奥の部屋に案内された。
アグネス様もいて、少し緊張された面持ちだった。
「困った事になったわ。」
アグネス様は開口一番に、渋い顔でそう言ってため息をついた。
「使用人達が食べる食事に、盛られたの。」
「え!?」
「それでも、めまいや寒気や震えなどの神経系の毒だったらしいけれどね。食べた時に舌にピリッとくるみたいで、気になって食べなかった人もいるみたいだけれど、普通に完食した人もいて。その人達は幻覚や幻聴、異常な興奮を覚えている人もいて…。鎮静作用のあるお茶を飲んでとりあえず今は落ち着いているらしいわ。」
「…!」
「でも、どうしてそうなったのかはまだ調査中。関連が有るのかは分からないけれど、ステイシーが先ほど見たキノコ、どんなものか一緒に見に行って欲しいのだけれどいいかしら?」
「はい。」
なんだか、背中がひんやりとした。
「この辺りに生えていました。ノラも、探すのに苦労していた様子でした。」
「そう…じゃああまり生えていないのかもしれないわね。」
「あ、これかな?」
ロイス様が、足元の木の根元にあった膨らんだようなところを指差した。
「あ!似てます。それかも。」
「これ?…ちょっと念のために取ってみましょう。」
アグネス様は、念のためにと言って手袋を二重にしてスコップでコンコンとキノコの軸を叩きながら持ってきたバケツに入れた。
「ちょっと詳しい人に見てもらうわ。一緒に来てちょうだい。」
そうアグネス様に言われ、ロイス様と一緒について行った。
そこは、王宮の中にある薬草省の部屋だった。
私は、侍女見習いの頃に部屋や廊下の通り方は覚えたけれど、その部屋が何をやっているかまでは覚える必要が無かった為今まで知らなかった。
薬草省は、薬草を元に薬を作る機関だ。
「薬草に詳しいでしょう?キノコはどう?」
「専門外でして…ん?これは…!」
薬草省の統括大臣はそのキノコをしばらく見て口を開いた。
「もしかしたら、〝陶酔のキノコ〟かもしれませんな。」
「「陶酔のキノコ?」」
なんでしょうそれは?
「陶酔のキノコとは、文字通り陶酔させたい相手に食べさせるもの。そうすると、食べたものは料理を作ってくれた人を陶酔し、気に入ったり愛するようになるのだと。一説には〝媚薬のキノコ〟とも言われます。なんでも、キノコを触った事によってその人の想いがキノコに伝わり増幅し、食べた時にその想いが愛おしい人だと思わせるのだとか。まぁ、じきに効き目が切れるから、悪巧みしなければ問題ないキノコですな。」
「そんなものが…。」
だからノラは私に触らないでと言ったのね。
「で、神経系の毒性は?」
「んー、その陶酔させた事が神経に及んだと言えばあるいは…いや、ないですな。まずないはずですよ。」
「そうですか…。」
「!」
えと…じゃあノラは誰かを陶酔させたくてあのキノコを取った?
たまたま、食事に毒が盛られたのは重なっただけ?関係ないの?
「これだと思ったのだけれど。」
「犯人は別にいるって事だな。」
「そのようですな。」
じゃあ一体、誰が、何の為に?
93
お気に入りに追加
2,281
あなたにおすすめの小説
《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!
皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜
秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』
◆◆◆
*『お姉様って、本当に醜いわ』
幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。
◆◆◆
侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。
こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。
そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。
それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!
れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。
父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。
メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。
復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*)
*なろうにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる