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7. 石
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私は言われた通り、解毒剤、耐神経麻痺剤、耐気絶剤などと呼ばれる薬が入った瓶を数個渡され、グビグビと飲んだ。
全て透明な色だったけれど、味はそれぞれ違っていた。
爽やかな飲み心地、少し苦味のあるもの、すっきりとした味わいなど。
本当に飲んで大丈夫かしらとも思ったけれど、そんな話を聞いたあとだったから飲んだ方がいいかなと思ったの。
「お、全部飲んだか。よく頑張ったな。偉いぞ。じゃあまず、この石を握ってくれ。」
ロイス様が、飲んでいる間じっと私を見ていたので少し緊張したけれど、飲み終えたら褒めてくれたので少し安心した。
でも、石を握る?
「えと、これは?」
そう言いながら私に石をくれた。どこにでもありそうな、手のひらサイズの黒っぽい石だった。
「まぁまぁ。とりあえず、握ってくれ。それで、悪いんだけど、オスカーとその侍女の事を考えてくれ。イラついた気持ちをその石にぶつけるように考えてくれないか?さぁ、目を瞑って。」
良く分からないけれど、言われるがまま目を瞑って石を握り、先ほど言われた事を思い返した。すると、心がやっぱりムカムカとしてくる。
その時だった。なんとなく石を握っている側の手がじんわり温かくなってきたなーと思ったら、いきなり熱湯が入ったカップを持っているように熱くなった。
「熱っ!!」
目を開いて、慌てて手を広げた。
石を見ると、煙が出ていて、色が赤黒くなっていた。
「やばっ!大丈夫か?ほれ、ばあちゃん…じゃなかった!アグネス、すごいだろ?使えそうだろ。」
「まぁ!これほど…まずは制御出来るようになった方がいいわね。火傷しちゃうといけないわ。」
そう、ロイス様とアイリス様に言われた。
周りの、机に向かっていた女性達も先ほどからこちらをチラチラと見てきていた。
「じゃあ説明するわね。まず、今日からあなたこの棟で生活しなさい。四階は個人の部屋となっているからね、それはあとで案内するとして。まぁ、通いで来ている人もいるから部屋数は多くないけれどね。まず、名前は?」
「は、はい。私はステイシーと言います。ステイシー=ビッテンフェルト。」
「あら、ビッテンフェルトって…辺境伯の?」
「はい。今は父が領主です。私には妹がいるのですがゆくゆくは、妹のお婿さんが家督を継いでくれるといっています。」
「なるほどね。今あなたは無事で何も無くて良かったわ。お父様に恨まれる所だったわね。」
「いいえ、そんな…何も知らなかった私にお薬を下さって、助かっております。」
「そう?じゃあもし何か言われたら、お父様やお母様にそう言ってね?お願いね?」
ん?何だろう…お父様とお母様って、アグネス様とお知り合いなのかしら?それとも、うちの両親、そんなにも怖がられているのかしら…?
あ、机に向かっている黒い髪の女性も、なぜか首をコクコクと何度も頷いているわ。
「それから、あなたが今握ってくれた石は、魔力石ね!ステイシー、あなたの当面の仕事は、ここにある石に魔力を注ぎ込む事。あとは、魔力について学ぶ事。学ぶのは、隣の部屋で講義が毎日午前中にやっているからそこで学んでね。今日は金曜だから、来週の月曜から金曜まで午前中は隣の初級クラスで学んでちょうだい。一週間で卒業出来る内容だから。その次は中級、上級とあるからそこまでは学んでちょうだい。」
そう言って、アグネス様は石の山を指差した。女性達が机に向かってやっていたのは、石に魔力を注ぎ込んでいたのか。
けれど…。
「あの!魔力って?私、魔力があるのですか?今まで何も、そんな…。」
「ふふふ。今まで兆候は無かったのね?そんな人でも、何かの拍子に魔力が芽生える事もあるのよ。例えば、大きな事故にあったり、軽く転んだだけでも。あとは、ものすごく心が揺さぶられる事があった人とかね。」
「はぁ…。」
「ステイシー、君の場合、オスカーにクビだと言われ、ムカムカしたんじゃないか?それで、心が揺さぶられ悔しくて泣いたから、その時に魔力が引き出されたのかもしれない。俺、魔力が見えるんだ。さっき、木の上で休んでいたら魔力を感じてね。なんかこう、ビリっとするんだけど。それで、下を見たら君がいて。真っ赤なオーラと、暗い悲しげなオーラが出ていたんだ。しかもね、怒りって、そうとうな原動力になるんだ。だから、すぐに石が熱くなっただろう?」
そうなの…?自分では全く気づかなかったけれど、私、魔力保持者になっちゃったの!?
全て透明な色だったけれど、味はそれぞれ違っていた。
爽やかな飲み心地、少し苦味のあるもの、すっきりとした味わいなど。
本当に飲んで大丈夫かしらとも思ったけれど、そんな話を聞いたあとだったから飲んだ方がいいかなと思ったの。
「お、全部飲んだか。よく頑張ったな。偉いぞ。じゃあまず、この石を握ってくれ。」
ロイス様が、飲んでいる間じっと私を見ていたので少し緊張したけれど、飲み終えたら褒めてくれたので少し安心した。
でも、石を握る?
「えと、これは?」
そう言いながら私に石をくれた。どこにでもありそうな、手のひらサイズの黒っぽい石だった。
「まぁまぁ。とりあえず、握ってくれ。それで、悪いんだけど、オスカーとその侍女の事を考えてくれ。イラついた気持ちをその石にぶつけるように考えてくれないか?さぁ、目を瞑って。」
良く分からないけれど、言われるがまま目を瞑って石を握り、先ほど言われた事を思い返した。すると、心がやっぱりムカムカとしてくる。
その時だった。なんとなく石を握っている側の手がじんわり温かくなってきたなーと思ったら、いきなり熱湯が入ったカップを持っているように熱くなった。
「熱っ!!」
目を開いて、慌てて手を広げた。
石を見ると、煙が出ていて、色が赤黒くなっていた。
「やばっ!大丈夫か?ほれ、ばあちゃん…じゃなかった!アグネス、すごいだろ?使えそうだろ。」
「まぁ!これほど…まずは制御出来るようになった方がいいわね。火傷しちゃうといけないわ。」
そう、ロイス様とアイリス様に言われた。
周りの、机に向かっていた女性達も先ほどからこちらをチラチラと見てきていた。
「じゃあ説明するわね。まず、今日からあなたこの棟で生活しなさい。四階は個人の部屋となっているからね、それはあとで案内するとして。まぁ、通いで来ている人もいるから部屋数は多くないけれどね。まず、名前は?」
「は、はい。私はステイシーと言います。ステイシー=ビッテンフェルト。」
「あら、ビッテンフェルトって…辺境伯の?」
「はい。今は父が領主です。私には妹がいるのですがゆくゆくは、妹のお婿さんが家督を継いでくれるといっています。」
「なるほどね。今あなたは無事で何も無くて良かったわ。お父様に恨まれる所だったわね。」
「いいえ、そんな…何も知らなかった私にお薬を下さって、助かっております。」
「そう?じゃあもし何か言われたら、お父様やお母様にそう言ってね?お願いね?」
ん?何だろう…お父様とお母様って、アグネス様とお知り合いなのかしら?それとも、うちの両親、そんなにも怖がられているのかしら…?
あ、机に向かっている黒い髪の女性も、なぜか首をコクコクと何度も頷いているわ。
「それから、あなたが今握ってくれた石は、魔力石ね!ステイシー、あなたの当面の仕事は、ここにある石に魔力を注ぎ込む事。あとは、魔力について学ぶ事。学ぶのは、隣の部屋で講義が毎日午前中にやっているからそこで学んでね。今日は金曜だから、来週の月曜から金曜まで午前中は隣の初級クラスで学んでちょうだい。一週間で卒業出来る内容だから。その次は中級、上級とあるからそこまでは学んでちょうだい。」
そう言って、アグネス様は石の山を指差した。女性達が机に向かってやっていたのは、石に魔力を注ぎ込んでいたのか。
けれど…。
「あの!魔力って?私、魔力があるのですか?今まで何も、そんな…。」
「ふふふ。今まで兆候は無かったのね?そんな人でも、何かの拍子に魔力が芽生える事もあるのよ。例えば、大きな事故にあったり、軽く転んだだけでも。あとは、ものすごく心が揺さぶられる事があった人とかね。」
「はぁ…。」
「ステイシー、君の場合、オスカーにクビだと言われ、ムカムカしたんじゃないか?それで、心が揺さぶられ悔しくて泣いたから、その時に魔力が引き出されたのかもしれない。俺、魔力が見えるんだ。さっき、木の上で休んでいたら魔力を感じてね。なんかこう、ビリっとするんだけど。それで、下を見たら君がいて。真っ赤なオーラと、暗い悲しげなオーラが出ていたんだ。しかもね、怒りって、そうとうな原動力になるんだ。だから、すぐに石が熱くなっただろう?」
そうなの…?自分では全く気づかなかったけれど、私、魔力保持者になっちゃったの!?
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