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〈18. 王都の街は、明と暗に別れている〉

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 レーヴィは、エステルに今度は手を差し伸べ、エステルが照れながらも手をレーヴィへと寄せるとレーヴィがそれを掴み満面の笑みを見せる。

「良かった!断られたらどうしようかと思った!じゃあ行こう!」

(レーヴィはどうして手を繋ぐの…?)

 エステルは少し、顔を赤くしながら俯きそう思った。
 婚約者だったトゥーレの事を今更ながら思い出す。

(トゥーレ様は、こんな事して来なかったわ。)

 エステルは、何だか自分だけ意識しているようで淋しいような、なんだか変な気持ちになった。

(どうして?私…レーヴィとは弟のアルヴィみたいで話しやすいと気を許していたはずなのに、なんでドキドキしたりするの?なんだか、自分が良く分からないわ。)


「あれ?どうしたの?」

エステルがずっと俯いていたからか、レーヴィは不安になって聞いた。

「え?」

 エステルは、考え事をしていたと慌ててレーヴィへと視線を上げる。

「あぁ、何もないならいいんだ。ねぇ、ここ見て?」

 そう言われたエステルは、レーヴィが指を差した建物を見る。そこは、綺麗な建物だった。

「ここは、エステルさんみたいな出稼ぎに来た人達が住むアパートメント。ほら、向かいのあれも。あの角のもね。」

 そう言ったレーヴィはまた歩き出した。


 少し行った通りから脇に逸れた小道をレーヴィは指差し、

「ここ。このような脇に逸れた小道は入って行っては絶対にダメだからね。帰って来れるかは分からないから。」

「え!?どういう意味?」

「…そのままの意味だよ。この通りに住んでいる人達とは、住む世界が違う人達なんだ。だから、絶対に行かないで。ね?さ、次。」

 エステルはそれを聞き少し恐ろしくなった。カブソンルンド領に住んでいる時も、ある程度の貧富の差は、侍女と自分の生活の違いで知っていると思っていた。
 だが、小道の奥には、黒い塊が見えた。きっとは、人が寝ていたのだとエステルは思う。路上で生活する人なのか、ただそこで寝ている人なのか。そこで亡くなっている人だとは思いたくなかった。



 レーヴィは、一つの店に入った。
店の中には丸い机と椅子が等間隔に並んでいて、奥にカウンターがあり、食堂のようだ。
時間が中途半端だからかお客は一人もおらず、カウンターの中には人が二人いた。

「おう!レーヴィか。どうした?」

「ごめん。よ。」

「そうか。またな!」

 エステルはここで休憩でもするのかと思ったが、レーヴィはそう店の人と話すと、レーヴィはスタスタとカウンターの中へ入って行く。エステルも手を繋がれているから、ついて行くしかない。

(え!?厨房に入るの!?)

 だがレーヴィはさも当然のように厨房に入り、奥の扉から出る。店の人も咎める事もしなかった。

「こうすると、危険も無く裏に出られるからね。」

 いたずらが成功した子供のように屈託なくエステルへと笑いかけ、細い路地を少し進んだ先の扉に不規則なノックをして、入った。

「誰だ!…て、レーヴィか。ん?どうした?」

 入ったそこは、とても小さな家のようで、椅子に座っている人は先日会ったラッセだった。

「ラッセ。事を進めようと思う。」

「そうか。レーヴィよ、いや…レーヴィ様。仰せのままに。」

 ラッセはそう言葉を放った。
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