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〈9. 仕事案内所で、探す事にする〉
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「じゃあそのまま行こう。ラッセ!仕事案内所へ行ってくる!」
「分かりました。くれぐれもお気をつけ下さい。」
ラッセはまだ教会の入り口で話をしていて、こちらを向いたラッセは右手を挙げて返事をする。エステルもペコリとお辞儀をしてから、歩み始めた。
エステルが持っている荷物を、レーヴィは手をそちらへと向けて持つと言ってくれたので一度断った。
しかし、レーヴィがはにかみながら手が繋げないからと言って荷物をゆっくりと取る。そして、レーヴィはエステルの手を繋ぎ、歩みに合わせるようにゆっくりと進み出す。
犯罪も横行しているようで、慣れない人の荷物なんてすぐに引ったくられてしまうからねとレーヴィが言った。
「実はそんな怖い所だったの!?王都って。」
「いえ…以前はそうでは無かったんだけどね。……半年ほど前、時のガブリエル王が崩御されたのは知ってる?」
「え?ええ。何となくは…。カブソンルンドは国の端に位置してるから、情報は遅いかもしれないけれど、お父様から聞いているわ。」
聞いた所で、エステルの生活に変化は特に無い為、国王が亡くなったのは残念な事であれあまりにも遠くの人であるから実感が湧かなかった。
エステルが貴族の娘として社交をしていればまた嘆き方も違ったかもしれないが、エステルの父は領地から出ない為、エステルが王宮へと訪れる事も無かったから、実感が湧かないのも無理は無かった。
「そうですか。それで、それから新しくアードルフ王に代わったのですが、それに反発している人や、まぁいろいろとあって、犯罪があったりもするので、気をつけるに越したことはないのですよ。
…ごめんなさい、怖がらせるつもりではないのですが、一応…。あ、でも普通に歩いている人には特に何もしてこないですよ!観光目的っぽく大荷物を持っている人が狙われるみたいですから。」
「いいえ!教えてくれて良かったわ。レーヴィ、ありがとう。あなたには助けてもらってばかりだわ。」
エステルは、カブソンルンドという領地で、いかに閉鎖的な世界で生活していたのだろうと、この王都へ来るまでの旅路で身をもって知った。
「そんな…!あ、ほら、着きましたよ。こちらです。」
仕事案内所は、王都の中心部から少し外れにあった。レーヴィは繋いでいた手を離し、流れるような仕草で奥へと案内した。
ぬくもりが無くなった事で少し寂しくもあったが、ここから独り立ちするのだとエステルは拳を握り力を込めた。
「こんにちは。今、王都で仕事を探しに来た子がいるんだけど、安全な仕事ってある?」
並列に並ぶ幾つもあるカウンターを通り過ぎ一番奥の人にレーヴィは声を掛ける。カウンターの中の人は、四十代位の女性だった。
「おお!レーヴィか!そうだねぇ…じゃあ、あの右側の看板を見ておくれ。」
「ありがとう。」
そう言ったレーヴィは、壁際へと行く。エステルもそれに続いた。
壁一面には、紙が重なり合って貼り付けられている。あり過ぎて、下の紙のものは上に重ねられていてめくらないと分からない。
その紙には、募集要項が書かれていた。上から順に見ていくと、実に様々な職種があった。
《料理人募集。年齢は問わない。男性のみ。住み込み可。詳細番号10-11-3》
《売り子募集。年齢は十五~三十歳。男女。住み込み可。詳細番号10-5-7》
《家庭教師募集。年齢は問わない。女性のみ。通いのみ。詳細番号8-4-19》
…………
……
「お給金とかは分からないのね。」
「あぁ、気になるものは、先ほどのカウンターへ言って、詳細番号を言うと詳しく教えてくれるよ。けど…今は多分、給金はどれもそこまで変わらない。ほとんどが、一月で銀貨二十~三十くらいだと思います。」
「そうなんだ。住み込み可、なら家をを探さなくても済むから、そういうのから探そうかしら。」
「…通いのみ、って書かれていても、労働アパートメントがあるから、結婚していない人は、労働アパートメントを借りて住む事が出来るよ。部屋は狭いですが、一人であれば充分だと思う。無料だし。」
「え?む、無料!?凄いのね、その労働アパートメントって。」
「労働者が、労働しやすくという新しい制度です。…確かに、すごいよね。」
エステルは、そう説明してくれるレーヴィが唇を噛み、悔しそうに話すのがなぜか気になった。
「分かりました。くれぐれもお気をつけ下さい。」
ラッセはまだ教会の入り口で話をしていて、こちらを向いたラッセは右手を挙げて返事をする。エステルもペコリとお辞儀をしてから、歩み始めた。
エステルが持っている荷物を、レーヴィは手をそちらへと向けて持つと言ってくれたので一度断った。
しかし、レーヴィがはにかみながら手が繋げないからと言って荷物をゆっくりと取る。そして、レーヴィはエステルの手を繋ぎ、歩みに合わせるようにゆっくりと進み出す。
犯罪も横行しているようで、慣れない人の荷物なんてすぐに引ったくられてしまうからねとレーヴィが言った。
「実はそんな怖い所だったの!?王都って。」
「いえ…以前はそうでは無かったんだけどね。……半年ほど前、時のガブリエル王が崩御されたのは知ってる?」
「え?ええ。何となくは…。カブソンルンドは国の端に位置してるから、情報は遅いかもしれないけれど、お父様から聞いているわ。」
聞いた所で、エステルの生活に変化は特に無い為、国王が亡くなったのは残念な事であれあまりにも遠くの人であるから実感が湧かなかった。
エステルが貴族の娘として社交をしていればまた嘆き方も違ったかもしれないが、エステルの父は領地から出ない為、エステルが王宮へと訪れる事も無かったから、実感が湧かないのも無理は無かった。
「そうですか。それで、それから新しくアードルフ王に代わったのですが、それに反発している人や、まぁいろいろとあって、犯罪があったりもするので、気をつけるに越したことはないのですよ。
…ごめんなさい、怖がらせるつもりではないのですが、一応…。あ、でも普通に歩いている人には特に何もしてこないですよ!観光目的っぽく大荷物を持っている人が狙われるみたいですから。」
「いいえ!教えてくれて良かったわ。レーヴィ、ありがとう。あなたには助けてもらってばかりだわ。」
エステルは、カブソンルンドという領地で、いかに閉鎖的な世界で生活していたのだろうと、この王都へ来るまでの旅路で身をもって知った。
「そんな…!あ、ほら、着きましたよ。こちらです。」
仕事案内所は、王都の中心部から少し外れにあった。レーヴィは繋いでいた手を離し、流れるような仕草で奥へと案内した。
ぬくもりが無くなった事で少し寂しくもあったが、ここから独り立ちするのだとエステルは拳を握り力を込めた。
「こんにちは。今、王都で仕事を探しに来た子がいるんだけど、安全な仕事ってある?」
並列に並ぶ幾つもあるカウンターを通り過ぎ一番奥の人にレーヴィは声を掛ける。カウンターの中の人は、四十代位の女性だった。
「おお!レーヴィか!そうだねぇ…じゃあ、あの右側の看板を見ておくれ。」
「ありがとう。」
そう言ったレーヴィは、壁際へと行く。エステルもそれに続いた。
壁一面には、紙が重なり合って貼り付けられている。あり過ぎて、下の紙のものは上に重ねられていてめくらないと分からない。
その紙には、募集要項が書かれていた。上から順に見ていくと、実に様々な職種があった。
《料理人募集。年齢は問わない。男性のみ。住み込み可。詳細番号10-11-3》
《売り子募集。年齢は十五~三十歳。男女。住み込み可。詳細番号10-5-7》
《家庭教師募集。年齢は問わない。女性のみ。通いのみ。詳細番号8-4-19》
…………
……
「お給金とかは分からないのね。」
「あぁ、気になるものは、先ほどのカウンターへ言って、詳細番号を言うと詳しく教えてくれるよ。けど…今は多分、給金はどれもそこまで変わらない。ほとんどが、一月で銀貨二十~三十くらいだと思います。」
「そうなんだ。住み込み可、なら家をを探さなくても済むから、そういうのから探そうかしら。」
「…通いのみ、って書かれていても、労働アパートメントがあるから、結婚していない人は、労働アパートメントを借りて住む事が出来るよ。部屋は狭いですが、一人であれば充分だと思う。無料だし。」
「え?む、無料!?凄いのね、その労働アパートメントって。」
「労働者が、労働しやすくという新しい制度です。…確かに、すごいよね。」
エステルは、そう説明してくれるレーヴィが唇を噛み、悔しそうに話すのがなぜか気になった。
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