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39. そして
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「………という感じでしたのよ。…そうね。今日は午後から結婚式だもの。少し長くなってしまったわ。でも、どうしてもお母様に伝えておきたかったの。気にしなくていい?そうなのだけれど…。」
私は、朝日が昇る前からここにいて、随分と久し降りに来て墓石に長らく話しかけていた。
「ヴェロニカ、ここにいたんだね。」
「ニコラエ様!」
「今日からやっと夫婦になるんだから、もうニコラエ、って呼んで欲しいんだけどな。」
「…ニコラエ。ごめんなさい、遅くなったわよね。もう時間?」
来たときは暗かったのに、もう辺りはすっかり明るく日は昇り始めていた。
「うん。でも俺も、ヴェロニカのお母様にご挨拶したかったからもう少しだけ。」
そう言って、お母様の名前が彫られた長方形の石の前でしゃがみ込み、頭を下げた。
私もニコラエと同じように、先ほどまでと同じ姿勢になった。
「挨拶が遅くなってすみませんでした。私は、ニコラエです。今日貴方の娘ヴェロニカ様と夫婦になります。大切にしますので、どうか見守っていて下さい。」
「ニコラエ、ありがとう。挨拶が遅くなったのは仕方ないわ。ここは、王族専用の墓地だもの。私も、そう簡単には入れないもの。」
「まぁね。でもそれでも伝えたかったんだ。ヴェロニカも、お義母様にいろいろと話をしていたのかい?ずいぶん長いと、ラドゥが気を揉んでいたよ。」
「あら!それは後で謝っておかないと!…ええ。ヴァレリアが遠くへ行ってしまった事を話していたのよ。」
「…そうか。でも、きっと幸せに暮らしているよ。」
「そうね。あの邸で、モラリとパトリツィアとその夫の侍従長と住んでいるのよね。そうだといいわ。」
「あぁ。心穏やかに過ごしてくれる事を願うね。」
「ええ。離れていても、安らかで心穏やかに過ごしていてくれればそれでいいわ。ニコラエ、そうしてくれてありがとう。」
「俺の可愛いヴェロニカの為だからね。あ、そうだ。これからどんな国にしたいとかある?お義母様に、話していこうよ。」
「そうねぇ…。オルフェイの地区の人達が髪の色を隠さないで生活出来るようにさせたいわ。彼らも、税金を納められるよう仕事を与えれば、国民からも差別されないと思うのよ。それから、庶民でも優秀な人はきっといるもの。だから、宮廷学院も通えるようにしたいわ。それから、国民の貧しい人達が少しでも減らせるようにしたいわ。盗まないと生活出来ないなんて…。」
「なるほどね…。実現に向けていろいろと対策を練ろうか。まず宮廷学院は、運営にもお金が掛かるから、寄付を募るか、独自で資金を貯められるようにするか…いろいろと考えると面白そうだ!」
「そう言ってくれて嬉しいわ。私達のおじい様が生み出してくれた政策を、より良いものとして活かしていきたいもの!」
「そうだね。おじい様達やその代で政治を動かしてくれていた人達はきっと、今回の出来事を国民とは違う目線で見ていると思うからね。その人達に後悔させない政策をこれから進めていこうか。」
「ありがとう!またみんなでお茶をしながら語らいましょう!」
「ヴェロニカはすごいよね。議会の場をお茶をする場にしてしまったんだから。そのおかげで、議会に出ている人達が親密になり、格式ばったものばかりでなくいろんな意見が出やすいと好評だからね。さ、そろそろ行こうか。」
そう言って立ち上がったニコラエは、私の手を取って立ち上がらせてくれた。
「ニコラエが私の考えを肯定してくれたり、それとなく修正してくれるからよ。ありがとう。大好きよ!」
そう言って私はニコラエに思い切って抱きついた。『わ!』と一言言ってよろけそうになったニコラエは、それでも私をしっかりと支えてくれた。
「嬉しい事を言ってくれるね。結婚式の後、国民に披露しないで部屋に籠もりたい位だよ。これから、一緒に家族になろうね。」
「ええ!」
私は、女王陛下になる双子の姉の傍で政治を手伝おうと思っていたけれど、いろいろあって女王陛下になってしまったの。
これから大変な事もたくさんあるでしょう。けれど、私の近くにいる優秀な人達と手を取り合って国をより良い方向へ導いていきたいと思いますわ。
☆★
読んで下さいまして、ありがとうございました。しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、本当にありがとうございました。
私は、朝日が昇る前からここにいて、随分と久し降りに来て墓石に長らく話しかけていた。
「ヴェロニカ、ここにいたんだね。」
「ニコラエ様!」
「今日からやっと夫婦になるんだから、もうニコラエ、って呼んで欲しいんだけどな。」
「…ニコラエ。ごめんなさい、遅くなったわよね。もう時間?」
来たときは暗かったのに、もう辺りはすっかり明るく日は昇り始めていた。
「うん。でも俺も、ヴェロニカのお母様にご挨拶したかったからもう少しだけ。」
そう言って、お母様の名前が彫られた長方形の石の前でしゃがみ込み、頭を下げた。
私もニコラエと同じように、先ほどまでと同じ姿勢になった。
「挨拶が遅くなってすみませんでした。私は、ニコラエです。今日貴方の娘ヴェロニカ様と夫婦になります。大切にしますので、どうか見守っていて下さい。」
「ニコラエ、ありがとう。挨拶が遅くなったのは仕方ないわ。ここは、王族専用の墓地だもの。私も、そう簡単には入れないもの。」
「まぁね。でもそれでも伝えたかったんだ。ヴェロニカも、お義母様にいろいろと話をしていたのかい?ずいぶん長いと、ラドゥが気を揉んでいたよ。」
「あら!それは後で謝っておかないと!…ええ。ヴァレリアが遠くへ行ってしまった事を話していたのよ。」
「…そうか。でも、きっと幸せに暮らしているよ。」
「そうね。あの邸で、モラリとパトリツィアとその夫の侍従長と住んでいるのよね。そうだといいわ。」
「あぁ。心穏やかに過ごしてくれる事を願うね。」
「ええ。離れていても、安らかで心穏やかに過ごしていてくれればそれでいいわ。ニコラエ、そうしてくれてありがとう。」
「俺の可愛いヴェロニカの為だからね。あ、そうだ。これからどんな国にしたいとかある?お義母様に、話していこうよ。」
「そうねぇ…。オルフェイの地区の人達が髪の色を隠さないで生活出来るようにさせたいわ。彼らも、税金を納められるよう仕事を与えれば、国民からも差別されないと思うのよ。それから、庶民でも優秀な人はきっといるもの。だから、宮廷学院も通えるようにしたいわ。それから、国民の貧しい人達が少しでも減らせるようにしたいわ。盗まないと生活出来ないなんて…。」
「なるほどね…。実現に向けていろいろと対策を練ろうか。まず宮廷学院は、運営にもお金が掛かるから、寄付を募るか、独自で資金を貯められるようにするか…いろいろと考えると面白そうだ!」
「そう言ってくれて嬉しいわ。私達のおじい様が生み出してくれた政策を、より良いものとして活かしていきたいもの!」
「そうだね。おじい様達やその代で政治を動かしてくれていた人達はきっと、今回の出来事を国民とは違う目線で見ていると思うからね。その人達に後悔させない政策をこれから進めていこうか。」
「ありがとう!またみんなでお茶をしながら語らいましょう!」
「ヴェロニカはすごいよね。議会の場をお茶をする場にしてしまったんだから。そのおかげで、議会に出ている人達が親密になり、格式ばったものばかりでなくいろんな意見が出やすいと好評だからね。さ、そろそろ行こうか。」
そう言って立ち上がったニコラエは、私の手を取って立ち上がらせてくれた。
「ニコラエが私の考えを肯定してくれたり、それとなく修正してくれるからよ。ありがとう。大好きよ!」
そう言って私はニコラエに思い切って抱きついた。『わ!』と一言言ってよろけそうになったニコラエは、それでも私をしっかりと支えてくれた。
「嬉しい事を言ってくれるね。結婚式の後、国民に披露しないで部屋に籠もりたい位だよ。これから、一緒に家族になろうね。」
「ええ!」
私は、女王陛下になる双子の姉の傍で政治を手伝おうと思っていたけれど、いろいろあって女王陛下になってしまったの。
これから大変な事もたくさんあるでしょう。けれど、私の近くにいる優秀な人達と手を取り合って国をより良い方向へ導いていきたいと思いますわ。
☆★
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ありがとうございました。
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こちらこそ、読んで下さいましてありがとうございましたo(*´︶`*)o