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37. 国王の仕事
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国民が混乱しているという事で、次の日早々に新陛下誕生のお触れを出すと言われた。そして、ニコラエ様と婚約するという事も合わせて発表するのですって。今までは内々の話だったものね。ヴァレリアの事があったから、私のは一年後にと発表していなかったもの。
「私、確かに女王陛下を務めるとは言ったけれど、まだ全く勉強なんてしていないわ。」
そう伝えると、お父様は寂しそうな顔をしてポツリと言ったの。
「国王の仕事ってな、実はそんなに無いんだよ。しっかり者の大臣達がやってくれているんだ。その代わり信頼出来る者を就けないといけないけれどね。今は私が信頼している者が就いているが、その内ヴェロニカが信頼する者に引き継ぎさせるといい。まぁ、大抵は代々貴族達が親子で引き継ぐ者が多いが、ヴェロニカが変えたければ変えればいいよ。だからと言ってアントンみたいな、好き勝手する国王にだけはなってはいけない。変える為には相応の理由を付ければ、大抵は納得するだろう。」
そう言うと、ニコリと笑って頭を撫でてくれました。
「ヴェロニカは良い友人に巡り会えたね。素敵な夫となるべき人にも出会えたし。幸せになるんだよ。私も陰ながら応援しているからね。」
「お父様は、またどこかに住まいを移してしまわれるの?ここで一緒に住むのはいけないのですか?」
「ここは、〝宮廷〟なんだ。確かに王家が住むと言う意味もあるが、権力を持つ人達が一つの場所に集まってしまうと、争いの元になってしまうんだよ。だから、避けなければいけないんだ。ヴェロニカの治世、楽しみにしているよ。」
「はい…お父様に恥じないよう、頑張りますわ。」
ーーー
ーー
ー
戻って来てくれた使用人達が一斉に片付けをしてくれて、以前のような落ち着いた雰囲気の部屋にしてくれた。
ニコラエ様とは部屋は隣同士になった。でもこれは仮らしく、時間をかけて変えてくれるらしい。私はこれで良いのだけれど、国王となるといろいろとあるのかもしれないわ。
「成り行きで、女王陛下になってしまったわ。」
アルセニエ様の邸でそうだったように、夕食が終わった後に話をしていた。
「そう?実はさ、どう転んでもいいように手は打っていたんだ。」
「え?どういう事?」
「ヴェロニカが女王陛下になるとか、ヴェロニカの伴侶となる人が国王になるとかね。ま、今の場合、槍玉に挙げられたのは俺だったんだけど。自分で立候補したのもあるけれどね。」
「そうだったの!?」
「そう。言っただろ?覚えてないかな?元々は、俺も王位継承権を持ってるって。」
「え…私よりよっぽどニコラエ様の方が陛下っぽい…」
「ん?何か言った?でも、俺はさ、宮廷学院で出会った時から、何事にも拙いながらも一生懸命に頑張るヴェロニカを応援したかったんだ。だから、ヴェロニカが女王陛下になるって決めて、『さすがヴェロニカ!良く言った!』って思ったね。出会った頃のヴェロニカだったら、間違いなく断っていただろ?」
「うん。」
「でも、ヴェロニカは成長してきてる。それがすごく愛おしいよ。」
「本当…?」
「もちろん!それにね、国民は二人が生まれた時から、〝女王陛下〟だと待ち望んでいたんだよ。だから、俺がなるより、ヴェロニカが国を治めた方が絶対に国民の信頼度も高いよ。」
「そんな事は…」
「安心して?ヴェロニカが辛い時、立ち止まってしまう時、俺は必ず傍に居るよ。一緒に考えよう。一緒に寄り添おう。そうすれば、答えは必ず見えてくるから。もしどうしても見えなかったら…」
「見えなかったら…?」
「こうするさ!」
「え!?」
急に私に覆いかぶさるように、ゆっくりと抱き締めてきた。
「どう?こうすると、暖かいよね。心が冷え切るから迷うと思うんだ。だからさ、二人でどんな事も、乗り越え分かち合って行こう!」
そう言ってニコラエ様は、いつまでも背中に手を回して抱き締めてくれていた。
「私、確かに女王陛下を務めるとは言ったけれど、まだ全く勉強なんてしていないわ。」
そう伝えると、お父様は寂しそうな顔をしてポツリと言ったの。
「国王の仕事ってな、実はそんなに無いんだよ。しっかり者の大臣達がやってくれているんだ。その代わり信頼出来る者を就けないといけないけれどね。今は私が信頼している者が就いているが、その内ヴェロニカが信頼する者に引き継ぎさせるといい。まぁ、大抵は代々貴族達が親子で引き継ぐ者が多いが、ヴェロニカが変えたければ変えればいいよ。だからと言ってアントンみたいな、好き勝手する国王にだけはなってはいけない。変える為には相応の理由を付ければ、大抵は納得するだろう。」
そう言うと、ニコリと笑って頭を撫でてくれました。
「ヴェロニカは良い友人に巡り会えたね。素敵な夫となるべき人にも出会えたし。幸せになるんだよ。私も陰ながら応援しているからね。」
「お父様は、またどこかに住まいを移してしまわれるの?ここで一緒に住むのはいけないのですか?」
「ここは、〝宮廷〟なんだ。確かに王家が住むと言う意味もあるが、権力を持つ人達が一つの場所に集まってしまうと、争いの元になってしまうんだよ。だから、避けなければいけないんだ。ヴェロニカの治世、楽しみにしているよ。」
「はい…お父様に恥じないよう、頑張りますわ。」
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戻って来てくれた使用人達が一斉に片付けをしてくれて、以前のような落ち着いた雰囲気の部屋にしてくれた。
ニコラエ様とは部屋は隣同士になった。でもこれは仮らしく、時間をかけて変えてくれるらしい。私はこれで良いのだけれど、国王となるといろいろとあるのかもしれないわ。
「成り行きで、女王陛下になってしまったわ。」
アルセニエ様の邸でそうだったように、夕食が終わった後に話をしていた。
「そう?実はさ、どう転んでもいいように手は打っていたんだ。」
「え?どういう事?」
「ヴェロニカが女王陛下になるとか、ヴェロニカの伴侶となる人が国王になるとかね。ま、今の場合、槍玉に挙げられたのは俺だったんだけど。自分で立候補したのもあるけれどね。」
「そうだったの!?」
「そう。言っただろ?覚えてないかな?元々は、俺も王位継承権を持ってるって。」
「え…私よりよっぽどニコラエ様の方が陛下っぽい…」
「ん?何か言った?でも、俺はさ、宮廷学院で出会った時から、何事にも拙いながらも一生懸命に頑張るヴェロニカを応援したかったんだ。だから、ヴェロニカが女王陛下になるって決めて、『さすがヴェロニカ!良く言った!』って思ったね。出会った頃のヴェロニカだったら、間違いなく断っていただろ?」
「うん。」
「でも、ヴェロニカは成長してきてる。それがすごく愛おしいよ。」
「本当…?」
「もちろん!それにね、国民は二人が生まれた時から、〝女王陛下〟だと待ち望んでいたんだよ。だから、俺がなるより、ヴェロニカが国を治めた方が絶対に国民の信頼度も高いよ。」
「そんな事は…」
「安心して?ヴェロニカが辛い時、立ち止まってしまう時、俺は必ず傍に居るよ。一緒に考えよう。一緒に寄り添おう。そうすれば、答えは必ず見えてくるから。もしどうしても見えなかったら…」
「見えなかったら…?」
「こうするさ!」
「え!?」
急に私に覆いかぶさるように、ゆっくりと抱き締めてきた。
「どう?こうすると、暖かいよね。心が冷え切るから迷うと思うんだ。だからさ、二人でどんな事も、乗り越え分かち合って行こう!」
そう言ってニコラエ様は、いつまでも背中に手を回して抱き締めてくれていた。
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