【完結】双子の国の行く末〜妹ヴェロニカの見た景色〜

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
38 / 40

37. 国王の仕事

しおりを挟む
 国民が混乱しているという事で、次の日早々に新陛下誕生のお触れを出すと言われた。そして、ニコラエ様と婚約するという事も合わせて発表するのですって。今までは内々の話だったものね。ヴァレリアの事があったから、私のは一年後にと発表していなかったもの。

「私、確かに女王陛下を務めるとは言ったけれど、まだ全く勉強なんてしていないわ。」

 そう伝えると、お父様は寂しそうな顔をしてポツリと言ったの。

「国王の仕事ってな、実はそんなに無いんだよ。しっかり者の大臣達がやってくれているんだ。その代わり信頼出来る者を就けないといけないけれどね。今は私が信頼している者が就いているが、その内ヴェロニカが信頼する者に引き継ぎさせるといい。まぁ、大抵は代々貴族達が親子で引き継ぐ者が多いが、ヴェロニカが変えたければ変えればいいよ。だからと言ってアントンみたいな、好き勝手する国王にだけはなってはいけない。変える為には相応の理由を付ければ、大抵は納得するだろう。」

 そう言うと、ニコリと笑って頭を撫でてくれました。

「ヴェロニカは良い友人に巡り会えたね。素敵な夫となるべき人にも出会えたし。幸せになるんだよ。私も陰ながら応援しているからね。」

「お父様は、またどこかに住まいを移してしまわれるの?ここで一緒に住むのはいけないのですか?」

「ここは、〝宮廷〟なんだ。確かに王家が住むと言う意味もあるが、権力を持つ人達が一つの場所に集まってしまうと、争いの元になってしまうんだよ。だから、避けなければいけないんだ。ヴェロニカの治世、楽しみにしているよ。」

「はい…お父様に恥じないよう、頑張りますわ。」





ーーー
ーー


 戻って来てくれた使用人達が一斉に片付けをしてくれて、以前のような落ち着いた雰囲気の部屋にしてくれた。
ニコラエ様とは部屋は隣同士になった。でもこれはらしく、時間をかけて変えてくれるらしい。私はこれで良いのだけれど、国王となるといろいろとあるのかもしれないわ。


「成り行きで、女王陛下になってしまったわ。」

 アルセニエ様の邸でそうだったように、夕食が終わった後に話をしていた。

「そう?実はさ、どう転んでもいいように手は打っていたんだ。」

「え?どういう事?」

「ヴェロニカが女王陛下になるとか、ヴェロニカの伴侶となる人が国王になるとかね。ま、今の場合、槍玉に挙げられたのは俺だったんだけど。自分で立候補したのもあるけれどね。」

「そうだったの!?」

「そう。言っただろ?覚えてないかな?元々は、俺も王位継承権を持ってるって。」

「え…私よりよっぽどニコラエ様の方が陛下っぽい…」

「ん?何か言った?でも、俺はさ、宮廷学院で出会った時から、何事にも拙いながらも一生懸命に頑張るヴェロニカを応援したかったんだ。だから、ヴェロニカが女王陛下になるって決めて、『さすがヴェロニカ!良く言った!』って思ったね。出会った頃のヴェロニカだったら、間違いなく断っていただろ?」

「うん。」

「でも、ヴェロニカは成長してきてる。それがすごく愛おしいよ。」

「本当…?」

「もちろん!それにね、国民は二人が生まれた時から、〝女王陛下〟だと待ち望んでいたんだよ。だから、俺がなるより、ヴェロニカが国を治めた方が絶対に国民の信頼度も高いよ。」

「そんな事は…」

「安心して?ヴェロニカが辛い時、立ち止まってしまう時、俺は必ず傍に居るよ。一緒に考えよう。一緒に寄り添おう。そうすれば、答えは必ず見えてくるから。もしどうしても見えなかったら…」

「見えなかったら…?」

「こうするさ!」

「え!?」

 急に私に覆いかぶさるように、ゆっくりと抱き締めてきた。

「どう?こうすると、暖かいよね。心が冷え切るから迷うと思うんだ。だからさ、二人でどんな事も、乗り越え分かち合って行こう!」

 そう言ってニコラエ様は、いつまでも背中に手を回して抱き締めてくれていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」

ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」 美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。 夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。 さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。 政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。 「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」 果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

処理中です...