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36. 二人のおじい様
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「なんじゃ?宴会でもやっとるんか?」
「すぐアルセニエは変な事言う…な訳ないだろ。」
そう言い合いながら入って来たのは、二人のおじい様であるアルセニエ様と、ミハイ様でした。
「「ち、父上!?」」
「「「ミハイ様!?」」」
「「「アルセニエ様!?」」」
「連れて来てやったぞ。我々は言わば生き証人じゃ。」
そう言ってアルセニエ様はイヒヒと笑った。
アルセニエ様の野暮用って、おじい様を連れてくる事だったのね。でも、生き証人ってどういう事かしら?
「緑色の髪の侍女の正体ですか?」
そう、ニコラエ様は質問されたわ。
「まぁな。結局は、我々の代で行われた政策のしわ寄せが、巡り巡ってお前らの代で被害を受ける事になってしまったのだ。申し訳ないな。ま、続きは兄上、説明を、お願いします。」
「全く…。すぐそうやってわしに押し付けおって…。まぁ、知らせてくれたのには感謝する。どうなったのかソワソワとしておったからな。おい、わしらちょっと疲れたから椅子を持ってきてくれんか。ああ、廊下にあるベンチでいいから。」
そう言って、二人のおじい様方は騎士が抱えてきた背もたれのない木で出来たベンチに座った。
「ふぅ…。済まないね、この姿勢で失礼するよ。その前に、新陛下はどうなったのか教えてもらえるか?」
「はい、ヴェロニカに。」
「なんと!」
「そうかそうか!ヴェロニカ、周りの皆に助けてもらうんだぞ。」
「は、はい!ありがとうございます。微力ではありますが、精一杯努めさせていただきます。」
私は二人に向かって深々とお辞儀をした。
「ヴェロニカ、よう決めたな。まぁ…もう膿は出たのであればわしらは必要ないんじゃないのか?」
「いや、でももしかしたらヴァレリアが教会学校へ通わせるに至った黒幕がおるかもしれんじゃろ?なんせ、ヴァレリアが宮廷学院に通っておったらこんな事になってなかったのかもしれん。」
「また面倒な…。そうじゃな。では。わしの治世でな、キシデルの移民が来たのは知っておるじゃろ。あれはわしらが三十代とピチピチな年齢の時だったわ。で、キシデルから来た民をオルフェイ地区でならと住まわせた。開拓も全て自分でやらせるという条件でな。仕方あるまい。税金を無駄には出来ん。でも、それでもわしの意を汲めず、野垂れ死ぬ奴が後を絶たんと報告があがり、仕方無く救済措置として宮廷に連れて来て住み込みで働かせた。だが、それを大っぴらにするとなぜ他国の者に税金を使うと混乱がおきるかもしれんから、周りにはバレないようにしろと誓約させた。髪の色もわざわざ染めさせ、風呂も時間を分けて入るよう指示させた。当時の政治を動かしていた貴族議員と侍女長と侍従長だけが知る極秘情報だった。」
そう言うと、一息ついて、またおじい様は話の続きをしだした。
「わしは彼らを助けてやったつもりだったんだが…奴らはそうは思ってなかったんだろう。それで歪みが起き、王家へ反逆しようとしたのかもしれん。わしがこの宮廷を去る時に、一緒に奴らも去らせないといけなかったのかもしれんな。」
「一人一人なんぞ、覚えとらんだろ。」
「そうなんだが…契約書面はどこかにあるはずだ。それから、当時はそんな奴らが害を為すなんて思ってもなかったからな。でも今考えると…ヴァレリアの侍女がそうだったんだろ?刷り込みというか、思想が本来のモルドバコドル国のとは違っていたから、今回の事が起こってしまったのかもしれんな…。」
「何にせよ、これから調べ上げるんだろ。わしらの尻拭いみたいで悪いとは思うが、よろしく頼む。何かあれば何でも協力するから言ってくれ。もう二度と、こんな事が無いようにしないとな。ヴァレリアも、ある意味被害者かもしれんな…。」
「そうだな…。じゃ、そろそろ行くか。わしら年寄りの居場所はもうここには無いからの。ふぅ…久しぶりに話し過ぎたわ。おい、アルセニエ、今日はうちに泊まって行けよ。」
「ええーあそこ狭いだろ…でも確かに久しぶりだな。いいワインあるか?」
そう言いながら、嵐のように出て行った二人のおじい様。なんだかんだ言って仲が良いのね。
それにしても…ヴァレリアは被害者か…。確かにそうね。
お母様が亡くなった私達にとって、乳母や侍女が母のような存在だった。
私は、この国の思想を持った人達と接して来たのだけれど、もしそれが全部違っていたら?ヴァレリアがどんな生活を送って来たのかなんて今更分からないけれど、王家に恨みを持った人達がヴァレリアを育てていたら?モラリがそうだったとは見えなかったけれど、そう考えるとゾッとした。そして、改めてヴァレリアが生きていてくれて良かったと心から思った。
「すぐアルセニエは変な事言う…な訳ないだろ。」
そう言い合いながら入って来たのは、二人のおじい様であるアルセニエ様と、ミハイ様でした。
「「ち、父上!?」」
「「「ミハイ様!?」」」
「「「アルセニエ様!?」」」
「連れて来てやったぞ。我々は言わば生き証人じゃ。」
そう言ってアルセニエ様はイヒヒと笑った。
アルセニエ様の野暮用って、おじい様を連れてくる事だったのね。でも、生き証人ってどういう事かしら?
「緑色の髪の侍女の正体ですか?」
そう、ニコラエ様は質問されたわ。
「まぁな。結局は、我々の代で行われた政策のしわ寄せが、巡り巡ってお前らの代で被害を受ける事になってしまったのだ。申し訳ないな。ま、続きは兄上、説明を、お願いします。」
「全く…。すぐそうやってわしに押し付けおって…。まぁ、知らせてくれたのには感謝する。どうなったのかソワソワとしておったからな。おい、わしらちょっと疲れたから椅子を持ってきてくれんか。ああ、廊下にあるベンチでいいから。」
そう言って、二人のおじい様方は騎士が抱えてきた背もたれのない木で出来たベンチに座った。
「ふぅ…。済まないね、この姿勢で失礼するよ。その前に、新陛下はどうなったのか教えてもらえるか?」
「はい、ヴェロニカに。」
「なんと!」
「そうかそうか!ヴェロニカ、周りの皆に助けてもらうんだぞ。」
「は、はい!ありがとうございます。微力ではありますが、精一杯努めさせていただきます。」
私は二人に向かって深々とお辞儀をした。
「ヴェロニカ、よう決めたな。まぁ…もう膿は出たのであればわしらは必要ないんじゃないのか?」
「いや、でももしかしたらヴァレリアが教会学校へ通わせるに至った黒幕がおるかもしれんじゃろ?なんせ、ヴァレリアが宮廷学院に通っておったらこんな事になってなかったのかもしれん。」
「また面倒な…。そうじゃな。では。わしの治世でな、キシデルの移民が来たのは知っておるじゃろ。あれはわしらが三十代とピチピチな年齢の時だったわ。で、キシデルから来た民をオルフェイ地区でならと住まわせた。開拓も全て自分でやらせるという条件でな。仕方あるまい。税金を無駄には出来ん。でも、それでもわしの意を汲めず、野垂れ死ぬ奴が後を絶たんと報告があがり、仕方無く救済措置として宮廷に連れて来て住み込みで働かせた。だが、それを大っぴらにするとなぜ他国の者に税金を使うと混乱がおきるかもしれんから、周りにはバレないようにしろと誓約させた。髪の色もわざわざ染めさせ、風呂も時間を分けて入るよう指示させた。当時の政治を動かしていた貴族議員と侍女長と侍従長だけが知る極秘情報だった。」
そう言うと、一息ついて、またおじい様は話の続きをしだした。
「わしは彼らを助けてやったつもりだったんだが…奴らはそうは思ってなかったんだろう。それで歪みが起き、王家へ反逆しようとしたのかもしれん。わしがこの宮廷を去る時に、一緒に奴らも去らせないといけなかったのかもしれんな。」
「一人一人なんぞ、覚えとらんだろ。」
「そうなんだが…契約書面はどこかにあるはずだ。それから、当時はそんな奴らが害を為すなんて思ってもなかったからな。でも今考えると…ヴァレリアの侍女がそうだったんだろ?刷り込みというか、思想が本来のモルドバコドル国のとは違っていたから、今回の事が起こってしまったのかもしれんな…。」
「何にせよ、これから調べ上げるんだろ。わしらの尻拭いみたいで悪いとは思うが、よろしく頼む。何かあれば何でも協力するから言ってくれ。もう二度と、こんな事が無いようにしないとな。ヴァレリアも、ある意味被害者かもしれんな…。」
「そうだな…。じゃ、そろそろ行くか。わしら年寄りの居場所はもうここには無いからの。ふぅ…久しぶりに話し過ぎたわ。おい、アルセニエ、今日はうちに泊まって行けよ。」
「ええーあそこ狭いだろ…でも確かに久しぶりだな。いいワインあるか?」
そう言いながら、嵐のように出て行った二人のおじい様。なんだかんだ言って仲が良いのね。
それにしても…ヴァレリアは被害者か…。確かにそうね。
お母様が亡くなった私達にとって、乳母や侍女が母のような存在だった。
私は、この国の思想を持った人達と接して来たのだけれど、もしそれが全部違っていたら?ヴァレリアがどんな生活を送って来たのかなんて今更分からないけれど、王家に恨みを持った人達がヴァレリアを育てていたら?モラリがそうだったとは見えなかったけれど、そう考えるとゾッとした。そして、改めてヴァレリアが生きていてくれて良かったと心から思った。
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