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34. 再び宮廷へ
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「ヴェロニカも宮廷へ一緒に行くかい?そのかわり、絶対に俺の傍を離れてはいけないよ。」
そう言われたので、ヴァレリアが心配だったから私も行く事にした。
「なんでじじぃも一緒に行くんだよ!?」
「わしは野暮用じゃ!宮廷を通り越して行きたい所があるんじゃ!今はうちには馬車なんてないし、久しく乗ってないからたまにはええじゃろが!」
「狭いんだよ!」
「まーうるさくて適わん。ええか?ヴェロニカよ、今ならまだ間に合う。こんな嫉妬深い男が夫になってええんか?」
「え?嫉妬深い?」
「おい、じじぃ!変な事言うなよ!」
「そうじゃ。ニコラエは、ヴェロニカと二人で馬車に乗りたかったんじゃと。わしがおったらいちゃいちゃ出来んからって。はーやらしいわい!」
「そんな事一言も言ってないだろ!?まだ婚約者の身なんだし!それに、行くならじじぃも宮廷に行くのかと思ったんだよ!そうしたら通り越すって言うもんだから…」
「はーうるさいわ。ニコラエじゃなくて、わしに嫁いでくるか?ヴェロニカよ。」
「おい!いいから口を閉じてくれ!!」
こんな感じで、だいぶ賑やかに宮廷へと向かいました。そのおかげで、いろいろな事を考えずに済んだのはよかったわ。
だって、昨日聞いたのは、ヴァレリアが夫となる予定の人と喧嘩が絶えないって…。ヴァレリア、大丈夫かしら。それに、国民が怒って殴り込みにいきそうだと言っていたし…。
「ヴェロニカ、ここからは気を引き締めて行こう。ヴェロニカは、王女として行くんだ。大丈夫、自信を持って!さぁ!」
ニコラエ様がそう言ったので、少し顔が強ばってしまったけれど、他の使用人や騎士団の人達も宮廷に一度集まってくれるらしい。それに、お父様の時に、政治をされていた貴族の方々も来られるらしいので、私も気を強く持たなければ!
「我に会いたがっているみたいだな?」
玉座にどっしりと背もたれに身を任せて横柄な態度で座っているアントンは、ニヤニヤと笑いながら私達へ言った。
今、この部屋には玉座に座っているアントンの他に、横に立っているのは緑色の髪の男女三人、ニコラエ様と私、お父様とニコラエ様のお父様がいた。普段であれば騎士団も壁沿いに立っているけれど、門やここまで来る途中の廊下にも居なかったし、当然この部屋にも居ない。
「気が済んだか?」
お父様がそう、立ったまま聞いた。
「…なんだと?」
アントンは、眉をピクリと動かして不機嫌そうに言った。
「聞こえなんだか?子供のままごとは、楽しかったかと聞いておる。」
「はっ!嫌味か?一年後と言っただろ?長い目で見ろよ!」
「だが、国民から不満が出ておる。なんだ、気づいておらなんだか?」
「気づくわ!だが、国王って言うのは苦情処理係ではないんだぞ!国王のしたい国にして何が悪い?俺が国王だ!俺に従え!お前ら、何で立っている?床に頭を付けろよ!俺に頭を下げろ!不敬罪だ!!お前ら、全員牢屋にぶち込んでやる!おい、連れて行け!!」
そう言ったアントンは、横に立っていた緑色の髪の人達に指図した。彼らは動揺した様子で歩み出てきたがお互いを見合っている。当然よね。武器を持っている訳でもないこの人達はきっと、騎士団の代わりでも何でもない。体格がいいわけでもなく、どちらかというと痩せているもの。背も私より少し高い程度の人達が、私達四人を捕まえて牢屋に連れて行くなんて私だけならともかく、無理だわ。
「早く!おい、地下牢にぶち込めよ!!」
「控えろ!!!」
お父様が、いきなりそう言った。いつもの優しいお父様ではなく、国王としての威厳を放ち、腹の底から出したその声は肉親の私でさえとても恐ろしく感じた。
「アントン、お前はやりすぎた。いろいろと話は上がっておる。おい、そこの三人。お前らはどうする?アントンに最後まで付くか、ここで降参するか。」
彼らは再度お互いを見合って、三人共に両手を挙げ、降参の形を取った。
「おい!なんだよ、裏切るのか!?」
「アントンよ、お前の国づくりは子供のままごとだ。国民というのは、幅広い。片方だけ優遇していては不満が出る。」
「何言ってんだ!貴族ばかり優遇してんのはそっちだろ!?俺らキシデルから来た移民を冷遇しやがって!」
「戯けた事を申すな!!!なぜキシデル国の民を、モルドバコドル国の民が払った税金で助けなきゃならぬ?住む事を許可したのは私の父。その時は私はまだ十歳と学生の身であったから何を思っておったのか全ては分からぬが、これだけは分かる!〝困った人を助けたい〟その気持ちが父にはあったのだ。だから、キシデル国に一番近いあの地区に許可を出したのだろう。我の予想でしかないが、あそこで生きながらえるよう、種芋や種を無償で寄付した事は聞いておる。それなのに、恩を仇で返すような逆恨みしおって!!」
「た…種芋??」
「そうだ。あの荒れ果てた地でも、芋は育つ。なのに、食べてしまったのだろう?」
「そりゃ、今日食うもんも無きゃ、明日生きられないだろ…。」
「そうかもしれん。だが、私財を投げ、持っていた宝石や服やなんかを早々に売っていれば、それなりに食べ物がすぐ手に入れる事が出来たと思うぞ。自分達でやっていこうという心意気があったか?それもなく、国のせいにしおって。」
「……。」
「貴族ばかりがいい思いをしている訳でもないぞ。国づくりの為に日々努力してくれているんだ。だから対価として報酬が出るだけだ。勘違いするな。」
「………。」
「分かったな。これで、終わりだ。」
肩をガックリと落としたアントンは、膝から崩れ落ちた。
それを、部屋の外で待機していた騎士団長が同じく待機していた騎士団員に素早く指示をして両脇を抱え、両手を挙げたままの三人も連れて引きずるようにして部屋の外へと連れ出した。
そう言われたので、ヴァレリアが心配だったから私も行く事にした。
「なんでじじぃも一緒に行くんだよ!?」
「わしは野暮用じゃ!宮廷を通り越して行きたい所があるんじゃ!今はうちには馬車なんてないし、久しく乗ってないからたまにはええじゃろが!」
「狭いんだよ!」
「まーうるさくて適わん。ええか?ヴェロニカよ、今ならまだ間に合う。こんな嫉妬深い男が夫になってええんか?」
「え?嫉妬深い?」
「おい、じじぃ!変な事言うなよ!」
「そうじゃ。ニコラエは、ヴェロニカと二人で馬車に乗りたかったんじゃと。わしがおったらいちゃいちゃ出来んからって。はーやらしいわい!」
「そんな事一言も言ってないだろ!?まだ婚約者の身なんだし!それに、行くならじじぃも宮廷に行くのかと思ったんだよ!そうしたら通り越すって言うもんだから…」
「はーうるさいわ。ニコラエじゃなくて、わしに嫁いでくるか?ヴェロニカよ。」
「おい!いいから口を閉じてくれ!!」
こんな感じで、だいぶ賑やかに宮廷へと向かいました。そのおかげで、いろいろな事を考えずに済んだのはよかったわ。
だって、昨日聞いたのは、ヴァレリアが夫となる予定の人と喧嘩が絶えないって…。ヴァレリア、大丈夫かしら。それに、国民が怒って殴り込みにいきそうだと言っていたし…。
「ヴェロニカ、ここからは気を引き締めて行こう。ヴェロニカは、王女として行くんだ。大丈夫、自信を持って!さぁ!」
ニコラエ様がそう言ったので、少し顔が強ばってしまったけれど、他の使用人や騎士団の人達も宮廷に一度集まってくれるらしい。それに、お父様の時に、政治をされていた貴族の方々も来られるらしいので、私も気を強く持たなければ!
「我に会いたがっているみたいだな?」
玉座にどっしりと背もたれに身を任せて横柄な態度で座っているアントンは、ニヤニヤと笑いながら私達へ言った。
今、この部屋には玉座に座っているアントンの他に、横に立っているのは緑色の髪の男女三人、ニコラエ様と私、お父様とニコラエ様のお父様がいた。普段であれば騎士団も壁沿いに立っているけれど、門やここまで来る途中の廊下にも居なかったし、当然この部屋にも居ない。
「気が済んだか?」
お父様がそう、立ったまま聞いた。
「…なんだと?」
アントンは、眉をピクリと動かして不機嫌そうに言った。
「聞こえなんだか?子供のままごとは、楽しかったかと聞いておる。」
「はっ!嫌味か?一年後と言っただろ?長い目で見ろよ!」
「だが、国民から不満が出ておる。なんだ、気づいておらなんだか?」
「気づくわ!だが、国王って言うのは苦情処理係ではないんだぞ!国王のしたい国にして何が悪い?俺が国王だ!俺に従え!お前ら、何で立っている?床に頭を付けろよ!俺に頭を下げろ!不敬罪だ!!お前ら、全員牢屋にぶち込んでやる!おい、連れて行け!!」
そう言ったアントンは、横に立っていた緑色の髪の人達に指図した。彼らは動揺した様子で歩み出てきたがお互いを見合っている。当然よね。武器を持っている訳でもないこの人達はきっと、騎士団の代わりでも何でもない。体格がいいわけでもなく、どちらかというと痩せているもの。背も私より少し高い程度の人達が、私達四人を捕まえて牢屋に連れて行くなんて私だけならともかく、無理だわ。
「早く!おい、地下牢にぶち込めよ!!」
「控えろ!!!」
お父様が、いきなりそう言った。いつもの優しいお父様ではなく、国王としての威厳を放ち、腹の底から出したその声は肉親の私でさえとても恐ろしく感じた。
「アントン、お前はやりすぎた。いろいろと話は上がっておる。おい、そこの三人。お前らはどうする?アントンに最後まで付くか、ここで降参するか。」
彼らは再度お互いを見合って、三人共に両手を挙げ、降参の形を取った。
「おい!なんだよ、裏切るのか!?」
「アントンよ、お前の国づくりは子供のままごとだ。国民というのは、幅広い。片方だけ優遇していては不満が出る。」
「何言ってんだ!貴族ばかり優遇してんのはそっちだろ!?俺らキシデルから来た移民を冷遇しやがって!」
「戯けた事を申すな!!!なぜキシデル国の民を、モルドバコドル国の民が払った税金で助けなきゃならぬ?住む事を許可したのは私の父。その時は私はまだ十歳と学生の身であったから何を思っておったのか全ては分からぬが、これだけは分かる!〝困った人を助けたい〟その気持ちが父にはあったのだ。だから、キシデル国に一番近いあの地区に許可を出したのだろう。我の予想でしかないが、あそこで生きながらえるよう、種芋や種を無償で寄付した事は聞いておる。それなのに、恩を仇で返すような逆恨みしおって!!」
「た…種芋??」
「そうだ。あの荒れ果てた地でも、芋は育つ。なのに、食べてしまったのだろう?」
「そりゃ、今日食うもんも無きゃ、明日生きられないだろ…。」
「そうかもしれん。だが、私財を投げ、持っていた宝石や服やなんかを早々に売っていれば、それなりに食べ物がすぐ手に入れる事が出来たと思うぞ。自分達でやっていこうという心意気があったか?それもなく、国のせいにしおって。」
「……。」
「貴族ばかりがいい思いをしている訳でもないぞ。国づくりの為に日々努力してくれているんだ。だから対価として報酬が出るだけだ。勘違いするな。」
「………。」
「分かったな。これで、終わりだ。」
肩をガックリと落としたアントンは、膝から崩れ落ちた。
それを、部屋の外で待機していた騎士団長が同じく待機していた騎士団員に素早く指示をして両脇を抱え、両手を挙げたままの三人も連れて引きずるようにして部屋の外へと連れ出した。
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