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33. 緑の髪色の人達

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 あれから、シスターが『昼食です』と呼びに来てくれ、話は中断し、私達も一緒にご馳走になった。
寄付した物なのに一緒に食べるって、と思ったけれど、一緒に食事をするって楽しいわ!子供達は本当にパワフルね。

 ニコラエ様の子供達との触れ合いを見て、漠然と、ニコラエ様との子供が出来たらこんな感じなのかしらと思ってしまったわ。

「ヴェロニカとの子供、楽しみになっちゃったな。」

 馬車の中で不意に言ってくるものだから驚いてしまったわ。でも私も思っていたから、

「奇遇だわ。私も思っていたのよ。」

 と返すと、ニコラエ様はそっぽを向いて、手で顔を隠していた。ちゃんと聞いているのかしら?と顔を覗き込むと、

「止めろよ!今のは、不覚だ!あー早くヴェロニカと結婚したい!!」

 と叫んで今度は体を曲げ膝に顔をくっつけて隠されてしまいました。
どうしたものかと隣に座っていたラドゥを見ると、いつの間にか笑いを堪えていて、

「大丈夫ですよ、ニコラエ様はそれだけヴェロニカ様を愛して下さっているという事です。ラドゥは安心しておりますよ。」

 と言ってくれたから、悪い事ではないという事なのよねきっと。




ーーー
ーー


 夜、ニコラエ様と話していると、ふと思い出し聞いてみた。

「そういえば、昼間言っていた、ヴァレリアとアントンが仲が悪いっていうのは…」

「ああ…。本当は一年と言っていたが、半年位は持つかと思っていたが、これほどまでに早いとはね。それから、ヴァレリア様とアントンとの事は想定外だよ。アントンは独裁的に政治を行っているようでね。それをヴァレリア様が指摘すると声を荒げるようになって、最近じゃ喧嘩が絶えないそうだ。今じゃ部屋も別々だと専らの噂だ。彼は基本的に緑の髪をした奴しか傍に置いていないみたいだよ。」

「緑色の髪…。」

「どうやら、モルドバコドル国では目立つけど、キシデル国じゃ緑色の髪は一般的みたいだね。出自がキシデルと隠したい人は、髪を染めて緑色ではなくしているみたいだけど。」

「そう…だからモラリは隠していたのね。」

「モラリ?」

「あ、ヴァレリアの侍女ね。普段は焦げ茶色の髪なの。でも、昔池に入った時は緑色の髪だったのよ。」

「池に入った?それはまた面白いね。その話はまた別の機会に聞かせてもらおうかな。そうか、侍女………。」

「ニコラエ様?」

 黙って考え込んでしまったわ。どうしたのかしら。

「あ、ごめんごめん。で…あぁ、そうそう。王都の人達が新国王陛下の横暴に今にも殴り込みにいきそうらしくて。騎士団も、今は遠征という名目で、それぞれ休暇に出ているよ。今までいた門番や使用人はほとんど、緑色の髪の人達に変わったみたいだ。」

「まぁ…!今までの人達は…?」

「大丈夫。給料は前払いしてあるよ、一年分ね。だから、今頃休暇を楽しんでいるんじゃないかな?一年したら戻ってきてもらうという条件でお金を渡してあるから辞めさせられたとかじゃないから安心していいよ。それを今まで俺や他の同年の奴らが調査していたってわけ。でも、もう無理かなー。これじゃ国民が可哀想だ。いくら、食料や金を王都の人達に渡しても、貴族と商売している所からは搾り取ろうとしているんだよ。今までのうっぷんを晴らしているのかもしれないが、やり過ぎだ。」

「…そうね。なんといったら良いか…。」

「ヴェロニカのせいではこれっぽっちもないから。ただ、現状を知りたいかなと話しただけだよ。あ、それからこれ。セルゲイに会った時に、アンジェラ嬢の手紙、預かったよ。今、侯爵家で一緒に住んでいるんだって。もちろん、アンジェラ嬢は婚約者として学んでいるみたいだよ。」

「ありがとう!」

「あとで読むといい。会いたがっているみたいだ。もう少しの辛抱だからね。」

「もう少し?」

「ああ。明日にでも、新国王と元国王達で話し合おうと思う。向こうが応じさえすれば、すぐにでも宮廷に帰ろう。」

「…ええ。」

「ん?どうした?優しいヴェロニカの事だからまた何か考えているの?」

「いいえ。…もう、この生活も終わりかと思って…。」

「あぁ、その事?そうだね…。淋しい?でも、宮廷で暮らすんだよ?場所が変わるだけさ。」

「ニコラエ様は?」

「…?あ、俺との事?やべ!そっちか-!嬉しいな!俺も、一緒に宮廷で暮らすよ、お姫様!」

「もう!茶化して…!でも、本当に?」

「あぁ!もう離れたくないし、言ったろ?早く結婚したいんだから!」

 そう言われると、この生活が終わるのかと淋しく思っていたのに、一気に嬉しく感じました。



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