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32. 寄付

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「そうか…まぁ、頃合いかな。じゃあ念のため俺も行くよ。」

 ニコラエ様に話すとそう言ってくれました。明日行こうと言ってくれ、収穫はまだなのに?と思ったら、『実は、収穫した物は貯蔵庫に保管するんだよ。その貯蔵庫に今ある物を届けるんだ。まだまだたくさん貯蔵してあるからね。』と教えてくれた。なるほど、そうやって循環させているのね。



「ニコラエが行けるなら二人で行ってこい。ヴェロニカよ、いろいろあるとは思うが、楽しむ事が大切じゃよ。では気をつけて。」

 そう見送ってくれたおじい様。アヴェレスク公爵領の教会併設の孤児院に届けるのですって。

「孤児院、行った事あるかい?」

ニコラエ様が馬車の中でそう聞いてきました。

「ええ。おばあ様に連れられて何度か。宮廷学院が始まってしまったので、長期休みにおばあ様が行かれる時について行った位ね。最近はあまり行ってなかったわ。」

 初めて行った場所が衝撃で、少し苦手意識もあったのよね。でも、そうも言ってられないわよね。そこに住んでいる人達にとったら〝日常〟なんだもの。そろそろ私も自分からするようにしないといけないわね。

「そうかい。俺も最近はあまり行ってなかった。今日はきっともみくちゃにされるよ、覚悟しておくんだよ!」

 そう言ったニコラエ様は、とても楽しそうだわ。



「良く来て下さいました!」

「シスター、ご無沙汰してますニコラエです。」

「はい、聞き及んでおりますよ。こんなに大きくなって!あら?こちらの方は…?」

「はい、私の婚約者です。ヴェロニカです。」

「ヴェロニカと申します。今日はよろしくお願いします。」

「ヴェロニカ様ってあの…?まぁ!それはそれは!オッホン!!ヴェロニカ様、こちらこそよろしくお願いします。」

「荷物は、御者にお願いしてあるから。私達は子供達と遊ぼう。」

「はい。」

 でも、受け入れてくれるかしら…。


「おい、おまえら!おれも混ぜてくれ!」

 まぁ!今日はいろいろなニコラエ様を拝見出来るわ。シスターと話す時のニコラエ様に、子供達と話す時のニコラエ様。どちらも、私といる時とは別人みたいね。

「ん?誰-?見かけないね。」

「あ!おれ覚えてるよ、ニコラエ様じゃね?」

「そうよ、ニコラエ様だわー!」

「おにごっこしよー!」

「ハハハ!覚えててくれたのか!ありがとう。今日はこの姉ちゃんも一緒だからよろしくな!よーし、じゃあ俺とこの姉ちゃんが鬼をやるからな、早く逃げろよ。」

「きやー」
「やだー」
「逃げろー!」

「さぁ、ヴェロニカも楽しもう!子供達は、丁寧な言葉よりも庶民が使う言葉遣いの方が馴染みがあるからね。俺の遣う言葉、庶民っぽくても引かないでほしいな。」

 と苦笑されたニコラエ様。そうなのね、そうやって子供達を気遣ったのね、素晴らしいわ。
…待って!私、そういえば言葉遣いどうだった?初めて会う子や、丁寧に接した方が良いと思ったから普段通りの言葉遣いだったわ!だから子供達はあまり馴染んでくれなかったのかしら…。

「分かったわ!私も、庶民っぽく頑張る!」

「ハハハ。その調子だ!よーし、遊ぶぞー!」

「ええ!」




「はー疲れましたわ。」

「本当に。今日はよく走ったね。」

 私達は一通りおにごっこをしたけれど、息が上がってしまい少し座って休憩をしています。

「ニコラエ様、すごですね。」

「ん?なにが?」

「だって、子供達と久し振りだというのに、長く遊んでいた仲間かのように遊んでいましたわ。」

「まぁ、子供ってのはそういうもんさ!それに…ヴェロニカの言葉遣いも可愛かったよ、だから、二人の時はそうやってもっと砕けて話してくれると嬉しいな。ほら、親密になった感じだろう?」

「…ええ、そうね。じゃあニコラエ様もそうして下さいね!」

「あ、ほらー。下さいじゃなくていいからね?」

「はい!あ…うん!」

「そうそう!良いね!…ところで。ヴェロニカ。予想よりも早く宮廷に帰るかもしれない。」

「え!?一年…じゃなくなったの?」

「あぁ。ここアヴェレスク公爵領は、俺の兄や親父がきちんと取り仕切ってるから今までとそう変わりはないんだ。だけど、特に王都は酷くてね…。見かねて手助けしているけど、やはり素人が理想論だけを掲げた国づくりは無理があったんだよ。」

「素人って…でも、ヴァレリアがいるでしょう?ヴァレリアは何をしているの?」

 今はまだ婚約者だろうけれど夫となるアントンが国王陛下でも、ヴァレリアが傍にいるんだから教えたり、間違えたなら軌道修正するわよね?

「それが…アントンとヴァレリア様の仲は最悪なんだよ。」

 え!?最悪って!?だって、お父様にも議会でも認めてもらったのでしょう?


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